デニ・アブディヤ

『何でもできる』という強みがブレイザーズで生きる

シーズン開幕前にトレイルブレイザーズへトレードされたデニ・アブディヤは、これまでの4年間とは大きく異なる活躍をみせてくれています。この活躍は個人の成長というだけでなく、チーム内での役割の違いが生み出したものでもあります。

2020年のNBAドラフト1巡目9位で指名されたアブディヤは、ルーキーシーズンからディフェンス面で非凡な才能を見せ、フィジカルな対応でマンマークをこなすだけでなく、相手のプレーを読んでのスティールや、巧みなヘルプポジション、そしてリバウンドに特徴がありました。

オフェンス面ではハンドリングスキルやパス能力を備えたオールラウンダーなウイングとして多彩なスキルを持ち合わせる一方で精度に難があり、アウトサイドのシュート、個人技による突破やゴール下のフィニッシュなどで様々な課題を持っていました。『何でもできる』という強みは、裏を返せば特筆すべき長所がないことを意味し、アブディヤは期待の若手ではあっても、チームで明確な役割を与えられていませんでした。

現代バスケのオフェンスでは、ハンドラーがビッグマンとの連携で切り崩していき、ウイングはハンドラーからの展開を受けて3ポイントシュートやドライブで効率的に得点を奪っていくのが主な役割となります。その点でアブディヤはポテンシャルは高くても、ハンドラー主体のチームのウイングとしては物足りない選手でした。

しかし、ブレイザーズに加入してからはプレーメークに絡むハンドラーとしての役割が増え、それによりオールラウンダーとしてのポテンシャルを発揮しやすくなりました。シューティング能力の高いアンフィニー・サイモンズとのコンビは互いの弱点を補い合い、またボールを持った時の選択肢が多いことでディフェンダーとの駆け引きからドライブアタックも効果的になっています。いわゆる『ポイントフォワード』こそがアブディヤが生きる道でした。

チーム戦術にフィットして活躍の場を広げたアブディヤは、弱点だったフィニッシュ能力についても、オールスター以降は3ポイントシュート成功率46%、ゴール下の成功率68%と大きな改善が見られます。いまやブレイザーズはアブディヤ中心に回っているといっても過言ではなく、攻守のキーマンになっています。

ただし、そこにはブレイザーズならではの悩みもあります。大きな期待をもってドラフト指名したスクート・ヘンダーソンがプレーメイクを任せられずにポイントガードとして独り立ちできず、ビッグマンにケガが多いことでリバウンド面でもアブディヤに頼らざる得ない状況です。オールラウンダーとしてのアブディヤが目立つのは専門家が機能しない結果でもあり、それはそれで由々しき問題です。

ブレイザーズはアブディヤ以外もディフェンス力のあるウイングを多く揃えており、ガードとセンターを減らした戦い方をしても面白そうです。そうなればアブディヤの価値はさらに高まるはず。一般的なウイングとしてではなく、ハンドラーもウイングもビッグの役割すらもこなせるオールラウンダーとして輝いている今シーズンだからこそ、次の飛躍の道を見いだしたいシーズン終盤戦を迎えています。