パリの観客に乗せられ「楽しくプレーできたよ」
NBAパリゲームではスパーズとペイサーズが2度対戦した。初戦は観客の期待に応えるビクター・ウェンバニャマの大活躍でスパーズが圧勝したが、2試合目はまるでプレーオフのようにペイサーズがアジャスト。初戦の課題を改善し、スパーズの強みをことごとく潰して136-98の完勝を収めた。
初戦のウェンバニャマに代わって主役を演じたのはタイリース・ハリバートンだった。ペイサーズが主導権を握りながらも追い上げられる展開で迎えた第3クォーター残り3分半、81-80とペイサーズにリードをもたらすプルアップ・ジャンパーを決めると、そこから約3分間で3本連続の3ポイントシュートにステップバックからのジャンプシュート、そして4本目の3ポイントシュートも決めて、彼だけの得点で16-3のランで一気にリードを広げ、あとはペイサーズが余裕十分でリードを広げて勝利した。
28分の出場で3ポイントシュート6本成功を含む28得点を挙げたハリバートンは、「最初のシュートがエアボールだったけど、それも僕の一部だ」と笑ってこう続けた。「2本連続で決まったら『来てる』と感じて、いつもより自信を持って3本目を打てる。それが決まったら外すまで打ち続けるんだ。第3クォーターは外さないまま終われたよ」
このベルシー・アレナはパリオリンピックのバスケットボール会場で、この時にハリバートンは経験済み。今回は「時差ボケがひどくて参ったよ。1週間ずっとちゃんと眠れていない」と言いながらも「ここに来ることができて本当に良かった」と話す。
パリのファンはウェンバニャマを一番に応援していたが、いつもの試合のようにホームとアウェーがはっきりと分かれているわけではなく、観客は贔屓のチームの勝利ではなく、ただ質の高いバスケを楽しもうとしていた。ハリバートンはその雰囲気が大好きだと話す。
「ベンチのすぐ後ろに僕らの家族がいて、あとはすべて中立の立場の人たち。本当の意味で中立ってわけじゃないにしても、僕らが普段やっている雰囲気とは明らかに異なる。みんなただバスケの試合を楽しみ、良いプレーがあれば歓声をあげる。ラスベガスのインシーズン・トーナメントもそうだった。どちらのチームであれ、良いプレーがあれば驚き、喜ぶ。そういう雰囲気を感じると、僕はもっともっと観客を喜ばせたくなる。楽しくプレーできたよ」
もっとも、ペイサーズの勝利はハリバートンだけによってもたらされたものではない。スパーズのハードワークとウェンバニャマの高さに圧倒された第1戦から修正し、ペイサーズは自分たちのハイテンポなバスケでスパーズを後手に回らせた。前回はウェンバニャマに好き放題にやられたマイルズ・ターナーが粘り強くその持ち味を消し、自分たちのスタイルを貫くことで主導権を握った。
もっとも、ターナーだけでウェンバニャマは止められない。特に前回の試合で猛威を振るった彼のブロックショットを避けるため、ウェンバニャマをペリメーターまで引っ張り出して戻す隙を与えず、そのブロックショットを1本だけに抑えてペイントで62得点を挙げたのは、そのゲームプランが完璧にハマった結果だ。またスパーズから24のターンオーバーを引き出し、そこから36得点を挙げた。
指揮官リック・カーライルは「パリのファンはみんな、ウェンビーの話題でもちきりだろうが、誰の頭の中にもタイリースのラン、我々のバスケが刻まれたはずだ」と満足気に語る。「ここに来られて楽しかったが、この街を良い形で去ることができて本当に良かったよ」