「相手に打つことをあきらめさせられたらベストだ」
トレイルブレイザーズはホームでブルズに勝利した後、ヒート、マジック、ホーネッツ相手の遠征に全勝し、今シーズン最長となる4連勝を記録した。
ヘッドコーチのチャウンシー・ビラップスは「素晴らしい遠征になった。選手たちの頑張りを誇らしく思うよ」と語る。「ケガ人がいて疲労もあったが、誰を起用しても全員しっかりと準備をしていて、激しいディフェンスをし、オフェンスではボールをシェアして上手く攻めることができた。試合を重ねるごとにチームは良くなっている」
ホーネッツ戦ではディアンドレ・エイトンとロバート・ウィリアムズ三世がケガで欠場。それでもルーキーのドノバン・クリンガンが左足首の捻挫による5試合の欠場から復帰して、4得点13リバウンド4アシスト4ブロックを記録。ケガ明けでわずか18分の出場ではあったが、ゴール下で抜群の存在感を発揮した。
指揮官ビラップスは「ディフェンスに才能を持つ選手で、彼がいるだけで相手にはプレッシャーがかかる」とクリンガンの才能を評価する。
そのクリンガンは「ちょっと疲れたけど、気分良くプレーすることができた。これからもっと調子を上げていくつもりだ」と復帰戦を振り返り、自分の持ち味についてこう語る。「僕はディフェンスが大好きで、ペイント内で存在感を示したい。相手のシュートをブロックし、コースを変えさせる、相手に打つことをあきらめさせられたらベストだ」
1巡目7位指名でブレイザーズに加入したクリンガンは、ここまで31試合に出場して5.6得点、6.5リバウンド、1.5ブロックを記録している。ただ、先発はこのホーネッツ戦が8試合目で、プレータイムは16.7分とまだまだ少ない。
ここにブレイザーズの迷走ぶりが表れている。将来の最優秀守備選手という評価に違わぬパフォーマンスを見せる彼が、このチームでは3番手のセンターで、エイトンとウィリアムズ三世より序列が下。センターを2枚同時起用するには3人とも器用さが足りないし、絶対的な存在であるジェレミー・グラントをパワーフォワードから外すわけにもいかない。
ビラップスは「3人それぞれプレースタイルの異なるセンターがいることが我々の強み」と語るが、それは空虚な言葉に聞こえる。再建のタイムラインに合わないベテランがポジションを埋めてしまっているのが現状だ。ウィリアムズ三世はトレードデッドラインまでに放出されるとの噂があるが、エイトンとグラントは契約が大きすぎて欲しがるチームがない。4連勝してもなお、チームが抱える問題が浮き彫りになってしまうのが今のブレイザーズの難しさだ。
来シーズンに3600万ドル(約54億円)の契約最終年を残すエイトンは完全なる不良債権で、グラントは30歳になった今も高いレベルを維持しているが、5年1億6000万円(約240億円)の大型契約の1年目。優れたオールラウンダーではあるが、優勝を目指すチームには彼を受け入れるサラリーキャップの余裕がなく、その余裕のあるチームはグラントのようなベテランを必要としていない。
ブレイザーズがグラントにこれだけの高給を保証したのは2023年オフにデイミアン・リラードを引き留めるため、競争力のあるチームであることを彼に示す必要があったからだ。しかしリラードはバックスに新天地を求め、グラントにしても好条件の契約を勝ち取ったものの、今のブレイザーズでモチベーションを保つのは簡単ではないはずだ。
クリンガンが思い切りの良いプレーを見せて勝利を勝ち取るのはいいが、エイトンが戻って来ればまた控えに戻るのだろうか。リラードが去ってから2年目、ブレイザーズはいまだ『将来あるべき姿』を見いだせないままだ。