在籍4年目で再建のタイムラインから外れ、移籍に前進
長いシーズンには浮き沈みがあり、下位に沈んでいるチームも時として歯車が噛み合い、眠っていたポテンシャルが輝く。このところトレイルブレイザーズ、ラプターズ、ホーネッツ、ペリカンズが問題を抱えながらもそれぞれの形で奮起し、勝ち星を重ねている。
その流れに乗れず、6勝38敗と唯一1桁勝利しか挙げられずにぶっちぎりの最下位となっているのがウィザーズだ。現地1月25日のサンズ戦では残り2分で1ポゼッション差と健闘するも、109-119で敗れた。
これで13連敗。2年目のビラル・クリバリー、ルーキーのアレックス・サー、カールトン・キャリントン、キーショーン・ジョージといった若手を育てるのが優先の再建チームとしては、負けていること自体は問題ではない。しかし、そこでプレーする選手の気持ちは、時として割り切れないものになる。
大敗ばかりの中で久々に接戦を演じたサンズ戦を終えて、カイル・クーズマは「今この瞬間のためにプレーした」と語り、その意味を問われると「ここでやろうとしている方針に合わせるのではなく、もっとアグレッシブに、ボールを要求して自己主張し、パスを回すだけじゃなく自分らしくプレーしたということさ」と続けた。
若手に良い経験を積ませるには、ただプレータイムを与えれば良いわけではなく、役割も大事だ。しかし、ボールをコントロールする役割、シュートを打つ役割、相手のキープレーヤーを抑えるといった役割をメインで担う選手は限られる。今シーズンになってクーズマの役割は限定された。フィールドゴール試投数は18.8から13.7へと激減。それに伴って得点もキャリアハイだった昨シーズンの22.2から14.6へと大きく落ち込んでいる。
ボールを持って自分の判断でプレーする機会も減った。その役割を主に担うのはジョーダン・プールで、続いてクリバリーやキャリントンといった若手。クーズマはチームのために走り、身体を張っているが、それで勝てないのでは楽しくないのも無理はない。
そして今回、クーズマは他の選手にプレーを託すことをやめ、自分でボールを持って24本のフィールドゴールを放った。試合開始からケビン・デュラントを相手に1対1を仕掛けてタフショットでも打ち切って決めるなど、アグレッシブな姿勢を前面に押し出した。特に差が出たのはファストブレイクから9得点を挙げたこと。リバウンドを取って他の選手にボールを預ける今までのプレーであれば、この数字は出せない。
自分でアグレッシブにプレーすることと、若手が良い経験を積むためにサポートするプレーは相反する。「これまでなら僕はそちらをやっていただろうけど、今はアグレッシブなプレーだ」とクーズマは言い切った。個人として30得点を挙げただけでなく、サンズ相手に良い戦いに持ち込めたことに大きな手応えを感じたからこその発言だ。
しかし、これはウィザーズにとって受け入れがたい状況となる。今のチームにとって目先の1勝は必要ではなく、勝てなくても若手に多くのプレータイムと役割を与え、そこから突き抜けてくる存在は誰なのかを見極め、将来のチームの礎にしたい。クーズマのアグレッシブさは、その方針に反する。
25歳でウィザーズにやって来たクーズマは29歳になった。チームの再建がこの4年で成功していれば、キャリア全盛期のこの時期に彼はチームの中心になっていただろうが、再建はいまだ初期段階を抜け出せず、少なくともあと2年はかかる。再建が遅々として進まない中で、クーズマはそのタイムラインから外れたのだ。
昨年のトレードデッドラインでマーベリックスが彼の獲得に動いた時、ウィザーズのフロントはクーズマにそれを伝え、彼自身が残留を選んだためにトレードは実現しなかった。今の状況はそれとは異なる。ウィザーズからすればチームの再建に同意できない選手であり、他のチームからすればボールを託せば30得点できるオールラウンダーだ。クーズマが新天地へと移る時期が、いよいよやって来たと言えるだろう。