千葉ジェッツvsアルバルク東京、両チーム合わせ11人の退場劇、『事件』はなぜ起こったか

2016/10/30
Bリーグ&国内
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文=鈴木栄一 写真=Getty Images、鈴木栄一

菊池とアームストロングが衝突、前代未聞の退場劇

10月30日、アルバルク東京が敵地に乗り込み千葉ジェッツに相手に82-70と、前日に続き勝利を収めた。3ポイントシュート6本を含む35得点と爆発したディアンテ・ギャレットの活躍は光ったものの、この試合における一番のハイライトは第1クォーター途中にA東京が5人、千葉が6人の退場者を出した乱闘騒ぎであったことは間違いない。これまでの日本のトップリーグを振り返ってみても前代未聞と言える大量退場劇は何故に起きてしまったのだろうか。

この残念な一大事件は、第1クォーター残り約3分半に起こる。千葉のヒルトン・アームストロング、A東京の菊地祥平が衝突してもつれた後、冷静さを失ったアームストロングが菊地をフロアに投げ倒してしまったのだ。

試合後に行われたゲームオフィシャルの発表によると、アームストロングはこの暴力行為、さらにこれに反応したA東京のトロイ・ギレンウォーターがアームストロングに暴力行為を働いたことで、それぞれディスクォリファイリングファウルでの退場となった。

そして暴力行為が起こった場合、もしくは起こりそうな場合、ベンチにいる選手たちはコートに入っていけない。コートに入った場合は退場になるというファイティングルールがある。ビデオ判定の結果、A東京の二ノ宮康平、松井啓十郎、アンドリュー・ネイミック、田村大輔。千葉の西村文男、荒尾岳、原修太、タイラー・ストーン、伊藤俊亮。以上の選手がコートに入ったことが確認されたため、このルールが適用されて退場となってしまった。

その結果、試合残り30分以上にわたり、A東京は7人、千葉は6人で戦うことに。残りのメンバーたちはハードにプレーし、会場を盛り上げてくれたが、両チームとも想定外のアクシデントによって本来なら見せられるクォリティのプレーを披露できたとは言いがたい。A東京の伊藤拓摩ヘッドコーチが、「3305人の会場に来ていただいた方、映像を見ていただいた方々に申し訳ない気持ちです」と会見の冒頭で述べたように、あってはいけないことが起きてしまったことは確かだ。

この『騒動』を、レフェリングについて検討する契機にすべき

では何故、今回の一件が起きてしまったのか。まずアームストロングと菊地のもつれ合いは、ボールのあるサイドと逆側で発生し、周りに2人以外は誰もいなかったことが大きいだろう。このような衝突によって一触即発の事態になることは起こり得るもので、こういう場合はすぐに審判や近くの選手が熱くなった当事者たちの間に割って入ることで事態を収めるもの。しかし、今回は審判、他のプレーしている選手がともにコートの反対側にいたことで、対応が後手になった面はある。

そして、この光景を見たベンチの選手たちが反応してしまうのも不可抗力だろう。「ベンチメンバーは、味方を助けようと出ていったと思います。誰が悪いという訳ではなくて仕方がなかったです」と言うのはA東京の田中大貴。千葉の富樫勇樹もこう語る。「フィジカルコンタクトの多い競技ですし、気持ちが入ってああいう状況が起きてしまうのは仕方ない面もあると思います。また、あの状況ではじっとしている方が難しいです。ルールはルールなので仕方ないですが、出て行った選手たちを責められないです」

現場にいた筆者も2選手のコメントに同感で、両チームのベンチメンバーとも乱闘に参加しようというのではなく、鎮めようという意思で思わずベンチから飛び出してしまったように見えた。ただ、どのような理由があるにせよ、ファイティングルールに抵触したことは事実であり、残念ながらベンチから飛び出したと審判が判断した以上、退場は避けられない。

しかし、一方でこの出来事は、突発的なものなのか。アームストロングが菊地と衝突する前、判定にイライラを募らせていなかったのかなど、伏線がなかったかは考えるべきだ。それというのも、リーグ開幕からファウルの判定についてコーチ、選手が苛立ちを見せ、審判がうまく試合をコントロールしているとは言い難い光景を見ることは少なくない印象だからだ。

特に今年から日本でプレーする外国籍選手には、その傾向が強いのではないか。アームストロングもNBAでのプレー経験が長く、今季が日本で初めてのシーズンとなる。国も違えれば審判の笛の基準も変わるもので、それに適応してこそプロフェッショナルなのかもしれない。ただ、選手のフラストレーションを減らせるように、日本人だけでなく外国籍選手ともコミュニケーションを取れているのかは確認すべきかもしれない。

ちなみにアメリカ出身の帰化選手で、bjリーグで6年、NBLで3年と日本でもプレー経験も豊富な千葉なマイケル・パーカーは、今回の試合についての意見ではないという前提の上で、全体として「判定の基準が安定してくれていれば不満はない」と言う。

また、試合後「ビデオを見ていますと、傾向としてコーチ、選手とイライラしているところがある。こういうことが起こるのではと思っていた矢先に起きてしまった」(A東京・伊藤HC)、「ゲームはコーチ、レフリーのものでもなく、あくまで選手、お客さんのものだと思います」(千葉・大野HC)と、それぞれ指揮官は述べている。

Bリーグとなり、これまでにない多くの観客が試合会場に訪れ、メディアへの露出も大幅に増えており、今、着実にプロバスケの認知度は上がっている。それだけに、この良い流れに水をさす今回のような乱闘は二度と起こしてはならない。そして、Bリーグといえば子供も多く観戦に来てくれているのが大きな特徴である中、選手たちが判定に思わず過剰に反応するシーンが多い、荒れたゲームが増えることが望ましいことではないのは明らかだ。両ヘッドコーチの言葉を真摯に受け止め、コーチ、選手と審判の意思の疎通をより図れるようにするなど、リーグ全体としてレフェリングについて何らかのテコ入れを行うべきではないだろうか。