デボンテ・グラハム

23点差から巻き返し、残り0.2秒で逆転シュートを決める

スパーズは今シーズン40試合目のホームゲームで、西カンファレンス王者のナゲッツと48分間に渡る見応えある攻防を演じ、残り0.2秒で逆転する痛快な勝利を得た。ゲームウィナーを決めたデボンテ・グラハムは、チームメートに囲まれた中でヒーローインタビューを受け、「最高の気分だ。全員のエネルギーで勝ち取ったものだ」と喜びを語った。

グラハムはスタンドのファンに感謝を伝え、ファンも拍手でそれに応える。ほとんど勝てないシーズンであっても気持ちを切らさずフロスト・バンク・センターに通い続けたファンに向けて、チーム最年長のグラハムがスパーズを代表して贈った『ご褒美』のような勝利だった。

ナゲッツは2日前にティンバーウルブズとの首位攻防戦を制し、単独首位に立っていた。残る2試合の相手はプレーオフ進出の可能性がないスパーズとグリズリーズで、このまま2つ勝って2年連続の第1シードを取るものだと思われた。ところが、第3クォーター途中で最大23点リードを奪う余裕の展開のはずが、そこから思わぬ苦戦を強いられ、最後には逆転負けを食らった。指揮官マイケル・マローンは言う。「気を抜いたつもりはなかったが、ウルブズ戦と同じアプローチでこの試合に臨めたかと言えば、そうではなかった」

ビクター・ウェンバニャマとサンドロ・マムケラシュビリの2ビッグがナゲッツの勢いを止め、攻めに転じれば積極的に放つ3ポイントシュートを決め、それが外れても全員でオフェンスリバウンドに飛び込んで次の攻めへと繋いだ。1点差に迫ったラスト30秒でナゲッツにチャンスを作らせない。ウェンバニャマの高さを警戒するナゲッツはシュートを打つ積極性を出せず、最後を託されたヨキッチがフローターを放つも決まらず。彼の得意な形ではあったが、本来の位置よりやや後ろから打たざるを得なかったことでリムに嫌われた。

その時点で残り9秒。トレ・ジョーンズが苦しい体勢ながらリバウンドを奪うと、すでに走り出していたグラハムにパスを送る。その前にもアーロン・ゴードンをスピードで振り切って貴重なレイアップを決めていたグラハムは、唯一守備に戻っていたジャマール・マレーをユーロステップでかわして逆転のシュートを決めた。

グラハムはゲームウィナーをこう振り返る。「僕以外は全員リバウンドに行っていたから、僕はもう走り出していた。とにかく走れ、って感じさ。最初は3ポイントシュートを考えていたんだけど、リムにアタックして最低でもファウルを引き出そうと思った」

グラハムは昨シーズン途中にペリカンズから加入したが、スパーズでは活躍していたとは言い難い。NBAキャリア6年目、29歳の彼はダグ・マクダーモットの退団に伴いチーム最年長になったが、選手起用が若手優先となるスパーズでは全く試合に出ない時期もあり、今シーズンは21試合にしか出場していない。

「簡単ではなかったけど、どんな時でもプロフェッショナルであろうとしてきた。僕はそう育てられたし、それがNBAでプレーするためのアプローチなんだ。上手くいかない日があっても常に前向きで、自信を失わず、準備を怠らない。その姿勢は誰かが見ているものさ」

その姿を見ていたのはスパーズの若いチームメートだった。だからこそコート上でインタビューを受ける彼を遠巻きに眺めるのではなく、肩を組み、背中を叩いて喜んだのだろう。

「ウチはみんな兄弟みたいなもので、一番年上の僕が兄貴だ。僕はずっと弟たちに自信を植え付けようとしてきた。ベンチから見て気付いたことを伝え、ゲームプランを確認し、それぞれに何ができるかを話してきた」

そしてグラハムは、自分の逆転シュートが決まった後の残り0.2秒、そこでのディフェンスを称えた。「一番素晴らしかったのは、最後のディフェンスだと思う。完璧なコミュニケーションでボールを出させず、5秒バイオレーションを取った。あれはシーズン序盤にはできなかった。だからこそ喜びが大きい、みんなには自信を持ってほしい」