八村塁

『逆ファウルゲーム』に備え次のポゼッションに温存?

サンダーとレイカーズの第4戦は、終盤にレイカーズが追い上げて接戦となりました。迎えた残り12.2秒、3点ビハインドのシチュエーションでレイカーズは八村塁をベンチに座らせる選択をしました。このプレーオフになってから高確率で3ポイントシュートを決め続け、この試合でも直前の4点プレーを含めて4本を沈めている八村をベンチに下げるのは悪手としか思えませんが、この理由について推測してみましょう。

最も大きな理由となるのは、最近のNBAではこのシチュエーションで3点リードしているチームがあえてファウルしてフリースロー2本を与え、同点にされるリスクを下げる『逆ファウルゲーム』が増えていることです。昨シーズンのプレーオフでもサンダーは逆ファウルゲームを好んで使い、レイカーズがタイムアウトを残していなかったこともあり、このシーンで仕掛けられる可能性は頭にあったはずです。

レイカーズの対応としては1本目のフリースローを決め、2本目のフリースローを外してオフェンスリバウンド勝負か、2本とも決めてファウルゲームを仕掛けることです。シーズン中の八村はフリースロー成功率が70%を下回っており、それ以上に勝負どころで打つ機会そのものが少なかったため、逆ファウルゲームを想定すると起用しにくかったはずです。

また、3ポイントシュートしかないシチュエーションでは、相手も当然それを防ごうとしてきます。八村は確率が良いとはいえ、基本的にパスアウトを受けてのオープンショットを決めているわけで、相手が警戒する中でのステップバックやフェイダウェイのタフショットを得意とするわけではありません。言うまでもなくレブロン・ジェームズは勝負どころでフェイダウェイを駆使し、数々のタフショットを決めてきた選手であり、ここで頼るのは当然でした。

レイカーズが選んだプレーにおいて、レブロンは逆サイドからスロワーのサイドのコーナーへスクリーナーを使わずに走ってきました。これはオースティン・リーブスにパスが入らなかった場合のセカンドオプションで、パスが来ればタフな1on1シチュエーションで決めきることが求められます。これはレブロンにしかできない役割でした。

サンダーのディフェンスを惑わせる役割はルーク・ケナードが担当し、スクリーナーを使ってスロワーの逆サイドへ大きく膨らむ動きをしました。ただし、途中でスクリーナーのマキシ・クレーバーは方向を変えてリーブスへのスクリーンをかけており、ケナードは囮の役割でした。この役割を八村に担当させても良かったはずですが、大きなオフボールムーブからシュートを決めるのはケナードが得意とするプレーです。

気になるのは八村ではなく、クレーバーを選んだ点です。単なるスクリーナーであればディアンドレ・エイトンやジャクソン・ヘイズでもよく、サンダー守備陣を迷わせるために3ポイントシュートもあるスクリーナーを選ぶのであれば八村が適役でした。それでもJJ・レディックは、それまで出場機会のなかったクレーバーを選びました。そこにはシーズン中のプレーが頭の中にあったからかもしれません。

現地2月26日のサンズ戦、残り0.9秒で3点ビハインドというシチュエーションが訪れました。ここでレディックが選んだプレーはスロワー側のコーナーにルカ・ドンチッチが走り、リーブスが逆サイドへと大きく動くプレー。その逆サイドではスクリーナーのレブロンとクレーバーがディフェンダーを抑えており、マーカス・スマートから出された山なりのパスはリーブスの動きにピッタリとタイミングが合い、3ポイントシュートが放たれたのです。このシュートは決まらなかったものの、残り0.9秒で3ポイントシュートしかない場面における最高のセットプレーを遂行できていました。

この時のクレーバーはこの1プレーだけ出場しています。つまり、レディックの頭の中には成功の記憶があり、加えてクレーバーのスクリーナーとしての能力を高く評価していたのではないでしょうか。

また、現地12月4日のラプターズ戦では同点のシチュエーションでクレーバーを起用せず、レブロンのキックアウトパスから八村の3ポイントシュートで劇的な勝利を挙げています。3ポイントシュートにこだわらないシチュエーションであれば、コーナーに確率の高い八村を置くのが効果的なのは間違いありません。3点ビハインドだったからこそ、レディックは八村をベンチに置いた。そう考えるのが自然かもしれません。

決まっていればレギュラーシーズンから積み重ねた成果が勝負どころで決まる会心のセットプレーでしたが、リーブスのシュートはリムに弾かれ、リバウンドはシェイ・ギルジャス・アレクサンダーをボックスアウトしていたクレーバーとは別の方向に落ち、アレックス・カルーソの手に収まりました。かくしてレイカーズは敗れ、シーズンは終わりを告げました。