ペイサーズ

特定のエースがいない代わりに誰もが点を取れるチーム

タイリース・ハリバートンを中心にした若きペイサーズは、得点、レーティングともにリーグトップに立つオフェンスのチームとして6勝3敗と好スタートを切りました。チームトップのハリバートンでも23.6得点と目立ったスコアラーがいるわけではありませんが、リーグトップの30.7アシストから7人が2桁得点を記録。誰もが積極的に点を取りに行きつつ、チームプレーも忘れない良い流れができています。

徹底したスペーシングから空いたゴール下へのアタック、カバーが来ればパスを受けた選手が3ポイントシュートを打つか、さらにゴール下へアタックしてパス──。何度も繰り返されていくドライブ&キックアウトは、特定のエースがいない代わりに誰もが点を取れるチームらしいスタイルで、そこにハリバートンのパス能力が最良のアクセントとなっています。

ただ、現代バスケにおいてスペーシングからドライブとキックアウト、3ポイントシュートでオフェンスを構築するのは珍しくありません。ペイサーズの特徴はスペーシングを徹底しつつ、全員が絶えず動き回ってポジションチェンジを繰り返すことで、トランジションが多いのはもちろん、ハーフコートでも速い展開が続くため、1回のオフェンスで何度もアタックしていく手数の多さがリーグ最高のオフェンスに繋がっています。

昨シーズンも同じように速い展開をしていましたが、今シーズンになって大きく変わったのはインサイドでのフィニッシュの精度向上とターンオーバーの減少です。チーム全体のスピードが上がると精度が犠牲になりがちですが、継続的なチーム作りを進めてきたことで選手の戦術理解度が上がり、ターンオーバーはリーグで5番目に少ないなど、堅実性も身に着け始めました。

この戦術を採るにはスピードがあってシュート力もあるオールラウンドな選手を集める必要があり、しかも層の厚さがなければスタミナ切れを起こしてしまいます。バディ・ヒールド、アーロン・ネスミス、ジェイレン・スミスとベンチプレイヤーが3人も2桁得点を記録しており、頻繁に選手交代をしながらも戦術を乱す選手がいないことが好調の要因になっています。

この勢いをどこまで保てるのか、ケガ人が出たり疲労が溜まっても走り続けることができるのか。この戦い方が長いシーズンで有効なのかは分かりません。それでもスーパースターを集めてオフェンス力の向上を狙うチームが多い中で、ビッグネームのいないペイサーズが若さあふれる高速バスケでリーグ最高のオフェンス力を誇っているのは、誰もが点を取りにも起点役にもなるチームケミストリーの重要さを物語っています。