比江島慎

後半の逆襲「アジャストできたのは本当に成長しているところ」

8月29日、バスケットボール男子日本代表がワールドカップのグループリーグ最終戦でオーストラリア代表と対戦した。後半は真っ向から打ち合い54-52で上回ったが、前半に背負った22点のビハインドが響き89-109で敗れた。

フィンランド戦で17得点を挙げ、歴史的1勝に大きく貢献した比江島慎はこの試合で先発を務めた。オフェンスではいつもと同じように得点に直結するプレーを心掛けたが、厳しいマークを打開できなかった。約9分半の出場で2得点、3ターンオーバーに終わり、「手も長いですし、フィジカルもある。1対1の能力も高いですし、一人ひとりの個人能力が高かったです。スイッチしてくる時に、どうしても攻めあぐねてしまうところがありました」と比江島は振り返る。

オーストラリアは東京五輪で銅メダルを獲得し、今大会でもメダル候補に挙がる強豪だ。そんな百戦錬磨の相手の圧力は想像以上で、それが出だしの停滞に繋がったという。「本当に一瞬でも気を抜いてしまうと攻めてきます。プレッシャーを強くかけてこられて、最初になかなかリズムに乗れなかったです。ドイツもプレッシャーをかけてきましたが、どちらもレベルが高かったと思います」

比江島は「僕らがスイッチをして、後半にリズムを狂わせる事はできました」と続けた。追いかける展開が続く中、トラップディフェンスを成功させ、目標としているターンオーバー奪取から得点する場面も確かにあった。ただ、一方でそのギャンブル気味なディフェンスの結果、イージーシュートを何本も決められてしまった。高火力なオフェンスで食らいついたが、100失点を超えれば勝利するのは難しい。比江島は言う。

「ノーマークを作られて、3ポイントシュートを打たれて、オフェンスリバウンドを取られてしまう状況が続きました。100点以上取られてしまうと、どうしても僕らのバスケは厳しいと思う。もっと集中していかないといけないです」

世界との差を痛感する結果になったが、もちろん収穫もあった。最後まで戦う姿勢を示した日本はドイツ戦と同様に後半のスコアを54-52で上回った。比江島も「(気持ちを)切らさずと言いますか。アジャストできたのは本当に成長しているところだと思います」と、後半の粘りに胸を張った。

グループリーグ突破とはならなかったが、パリ五輪への道が断たれたわけではない。むしろ、多くのアジア勢が苦戦している中、フィンランド戦の金星によって、アドバンテージを持って順位決定戦に進むことができた。

「まだ終わったわけじゃないですし、僕らは目標として五輪の出場があります。これからも続けていきます」。ネガティブなコメントが多く出たが、比江島に悲愴感は漂っていない。