河村勇輝

文=鈴木健一郎 写真=鈴木栄一

「自分たちはどこよりもキツい練習をしてきた」

圧倒的な強さでウインターカップ優勝を決めた福岡第一。その強さは、初戦から東山、飛龍、東海大附属諏訪、桜丘と勝ち進んできた決勝までの道のりが示しているし、常に大差で勝ち続けたスコアが示してもいる。今日のファイナルも、中部大学第一を85-42と圧倒した。

2年生ポイントガードの河村勇輝は16得点7アシストと活躍。我慢の展開を強いられた前半にきっちりと我慢し、後半に勝機を見いだすとトランジションで一気に突き放した。福岡第一の武器はディフェンスとトランジション。それでも、最大の強みは我慢すべき時にチーム一丸で我慢できることだ。「自分たちはどこよりもキツい練習をしてきて、精神的にも肉体的にもどこのチームよりも強いと思っています」と、河村は自分たちの強みを語る。

「そういうところで逆に集中が切れてきたようなプレーが出ると、みんなで集まって声を掛け合って。一回一回、大事な場面は円陣を組んで、チーム一丸にならないと勝てないと思うので、みんなが言いたいことを言える関係になったのが良かったと思います」

その河村の意識はすでに来年に切り替わっている。「自分はまだ2年生ですし、まだあと1年間あります。来年のウインターカップで優勝することをもう一回狙っていきたいです」

「ミニバスで小6の時に日本一を経験しているんですけど、日本一の実感もありませんでした。今回は高校バスケットボールでレベルの高い中で日本一を取れてうれしいですけど、ここで終わりじゃないので。すぐに切り替えて来年、大学、プロと目指していけたらと思います」

河村勇輝

悔しさを糧に練習するライバルに負けないために

振り返れば1年前、昨年のウインターカップ準決勝で福岡大学附属大濠に敗れた悔しさが「絶対にやってやるぞ」というモチベーションになり、練習にも熱が入った。

チームとして取り組んだ課題の一つがシュート練習。大濠との差としてシュートの確率が課題となり、朝に45分、練習後に夕食を取って体育館に戻って1時間のシューティング。河村自身が日々努力したのはもちろん、リバウンドを取ってくれる仲間の協力もあった。彼自身の課題は3ポイントシュート。大濠との準決勝では10本打って成功ゼロ、「チームを負けさせてしまった」と事あるごとに悔やむ結果だ。それが今日の決勝では2本の3ポイントシュートを決めている。自信を持って打ち切ることで結果を引き寄せた。

悔しい気持ちが成長の糧になる。だが、それは『河村の代』となる新チームには味方してくれない。今はライバルが『打倒、福岡第一』を掲げて練習に取り組んでいる。今日、強豪校のいくつかは首都圏で借りた体育館に集まり練習試合を行っている。またあるチームは敗れた直後にホテルを引き払って地元に戻り、学校の体育館で新チームを始動させている。

優勝はもう過去のこと。1年生で悔しさを、2年生で日本一の喜びを知った河村は、すでに連覇に意識を向けている。「正月も帰省せずに第一の体育館でバスケをします。3年生に助けられてこの優勝がありました。3年生が抜けることで自分たちは優勝に値するチームじゃなくなるので、正月もしっかりバスケをやって、バスケに携わらない日が一日もないようにやっていきたい」

福岡第一は明日に福岡に戻る。正式な新チーム始動とは別に、河村はすぐに体育館に向かい、自分の課題に取り組むのだろう。新チームの仲間たちはその背中についていく。今日、ウインターカップを制したチームは福岡第一の歴代最強チームの一つ。河村はそこから上に行くことを考えている。