ロケッツ

今オフにジェームズ・ハーデンを呼び戻す?

ロケッツは2020年まで8シーズン連続でプレーオフに進出し、ジェームズ・ハーデンとともに築いた時代は常に西カンファレンスのトップチームとしてウォリアーズに挑んでいた。しかし、2020-21シーズン開幕直後にハーデンがトレードを要求して退団したのを機にドアマットチームに転落し、2年連続で17勝しか挙げられず西カンファレンス最下位に。今シーズンもここまで16勝52敗で最下位に沈んでいる。

それでも過去2年間と違うのは、若手中心の再建チームが力を蓄え、新たな飛躍の準備ができたという雰囲気があることだ。現地3月13日には、東カンファレンスで上位争いを演じるセルティックスを111-109で下している。ほとんどの時間帯でリードを保ち、ジェイレン・ブラウンに43得点を奪われながらも点の取り合いで競り勝った。

セルティックスには油断があり、ブラウンは「ウチはディフェンスで良いリズムを作りさえすれば、攻めにもリズムが出てくる。どの試合でもリムを守るために戦い続けなければ」とディフェンス面で本来の集中を欠いたことを敗因に挙げた。

それでも今のロケッツには、優勝候補のチームでも多少隙を見せれば撃破するだけの爆発力がある。

ジェイレン・グリーンは2年目を迎えたロケッツの新たなエースとして21.8得点を記録。調子の波が激しいのが難で、フィールドゴール率41.0%、3ポイントシュート成功率33.5%、フリースロー成功率78.9%は『50-40-90』には遠く及ばず、周囲が期待した成長曲線を描いているとは言えないが、小さく丸くなる『成熟』はまだ今は必要ない。成功率に課題がありながら平均20得点を奪えるのはリムに仕掛ける積極性と力強さがあるからで、爆発力を削ぐことなく正しいプレーを身に着けていけばオールスターへと成長できる。

全体3位指名のルーキー、ジャバリ・スミスJr.は12.4得点、7.1リバウンドと攻守に奮闘しているが、ガード相手のディフェンスに苦労し、オフェンスでも3ポイントシュート成功率31.1%は前評判からすると物足りない数字。それでも直近の3試合で20得点10リバウンド超えを達成した、NBAで最も若い選手となっている。

そのスミスJr.とフロントコートで組むアルペラン・シェングンは14.7得点、8.7リバウンド、3.8アシストを記録。センターではあるがクリエイトもできるプレーの幅広さを持つ。今のロケッツのエースはグリーンだが、ベストプレーヤーはシェングンであり。再建中で安定しないロケッツの戦い方に軸が通り、彼のプレーがそこでより重用されるようになれば、今より何倍も目立った活躍ができるはずだ。

タリ・イーソンも2年目で主力に定着した選手。9.1得点、5.8リバウンドとスタッツは前述の3人ほどではないが、激しいディフェンスからリズムを作っており、3ポイントシュート成功率36.8%と効率の良さが光る。スタメンで起用されたのは4試合しかないが、スタートの選手以上にチームに信頼されているフォワードだ。

ロケッツでは他にもケビン・ポーターJr.やジェイショーン・テイト、ケニオン・マーティンJr.といった選手が伸びているが、来シーズンから勝負に打って出ると決めた場合には彼らでさえも居場所を失う可能性がある。ロケッツは今シーズンはこのままボトム3に沈む。ロッタリーでNBAドラフトの上位指名権を引き当てれば、全世界の注目を集めるビクター・ウェンバニャマ、あるいはスクート・ヘンダーソンを指名できる。この2年間で引き当てた以上の『逸材』を獲得するチャンスだ。

それと同時に、大物フリーエージェントも狙える。エリック・ゴードンをトレードし、ジョン・ウォールとダニー・グリーンの契約をバイアウトして、ベテランはいなくなった。来シーズンに保証された契約は6000万ドル前後で、大物フリーエージェントを2人獲得してもサラリーキャップにはまだ余裕がある。

噂になっているのはジェームズ・ハーデンの復帰だ。33歳のハーデンはネッツを経てセブンティシクサーズでプレーしているが、契約最終年を破棄すれば今夏にフリーエージェントとなる。彼とヒューストンの繋がりはいまだに強く、現在のNBA優勝を目指す挑戦を終えた後、若いチームを引っ張るベテランとしてロケッツに戻る可能性は十分にある。ハーデンの獲得が決まれば、ロケッツがドアマットチームからプレーオフチームにステップアップするのは確実で、そうなれば他の大物も獲得しやすい。ロケッツファンにとっては長く悔しい3年だったかもしれないが、サイクルを終えたチームが3年で再建できれば早いものだ。

そう簡単に目論見には事が運ばないのがNBAだが、ロケッツには少なくともこの数年間にはなかった『未来への展望』がある。今ロケッツでプレーする若手にとって、この船に乗り続けるのは非常に大事なこと。今シーズン残る14試合は、彼ら個々が自らの未来を切り開くための挑戦となる。