張本天傑

「トムは誰かを軸にするバスケではない」

トム・ホーバス新体制となった男子日本代表は7月頭にワールドカップ予選Window3を迎える。純粋な力の差もあるが、ホーバスコーチの新しいスタイルへのフィットに時間がかかったことも少なからず影響し、ここまで4試合を終えた戦績は1勝3敗と負け越している。

ウィザーズの八村塁を常に招集することは難しい。ベストメンバーが揃わないとしても、まずはホーバスコーチのバスケへの理解度を向上させることが今後も求められる。ホーバスコーチはフルコートプレスから積極的にスティールを狙うアグレッシブなディフェンス、そしてオフェンスではこれまでのように3ポイントシュートを多投するスタイルを目指している。これを体現するには敏捷性と正確なシュート力が求められるが、ホーバスコーチは「フルコートのトラップを仕掛けるタイミングが良く、オンボールのフィジカルなディフェンスができる」という理由で、ベテランの張本天傑の名前を楽しみな選手の一人として挙げていた。

張本は「Window1以来の代表なので、トムがやりたいバスケにフィットできるように、自分ができる仕事にフォーカスしています」と、ホーバスコーチのスタイルを思い出す作業をしている。

Window3の予備登録メンバー24名の中で、張本は数少ない東京五輪出場選手だ。そのため、代表での経験が豊富な張本はメンターとしての役割も指揮官から任されているという。「チームの中では代表の経験が一番豊富なので、それを次の世代に伝えることも自分の仕事です。トムからもリーダーシップを取ってと言われたので、今までの代表での経験をしっかりと伝え、下の子たちを引っ張っていけるように頑張りたい」

先述の通り、張本は東京五輪に出場したため、前ヘッドコーチであるフリオ・ラマスのスタイルも知っており、2つの異なるスタイルを経験しているからこそ見えてくるものもある。東京五輪では八村や渡邊雄太ら海外組が中心となったが、ホーバスのバスケは「誰かを中心に攻めるスタイルではない」と張本は言い切った。

「極端に言うとスタイルはラマスと真逆で、トムは誰かを軸にするバスケではないので、そこににフィットする時間はかかったと思います。Window1とWindow2でも変化はありましたし、今回も試合をしたら変化が見えてくると思います。課題は出てきますが、前回できなかったことをクリアできるように練習しているので、少しずつ改善していけたらと思っています」

また、張本はこれまでと現在の違いをこのように説明した。「Window1の時はスペーシングが悪く単発のシュートが多かったですが、これまでにプラスアルファして、チームとして連動したバスケができています。トムのバスケは攻撃回数を増やすバスケなので、単発になるのは仕方がないです。ただ、ペイントアタックをして相手の守備を収縮させてからのキックアウトとか、シュートに行くまでの過程を練習しているので、それをWindow3の結果に繋げていきたいです」

トランジションと3ポイントシュート、ハードなディフェンスなど、ホーバスコーチの目指すスタイルは就任してから変わっていない。あとはどれだけディテールの精度を高められるかにかかっている。自らの新スタイルへのフィットに加え、若手の手本となるなど、張本の負担は大きい。それでも、彼がこうしたタスクをスムーズにこなせることができれば、これまでと違った男子日本代表の姿が垣間見れるかもしれない。