
「僕らは全員がそのメンタリティを持っている」
昨シーズンの王者サンダーは開幕5連勝と素晴らしいスタートを切った。開幕から8日間で5試合を戦う過密日程で、最初の2試合はダブルオーバータイムにもつれ、ジェイレン・ウィリアムズを始めケガ人を抱えながらも勝ち続けている。
ウィリアムズ不在でもシェイ・ギルジャス・アレクサンダーが平均40.0得点とMVP級のパフォーマンスを発揮していることが、この好調の最大の要因だ。故障者の影響でローテーションが苦しくなっても、若手がディフェンスでハッスルし流れを呼び込む戦い方はブレていない。
今シーズンになって大きなステップアップを見せているのが2年目のガード、アジャイ・ミッチェルだ。昨年の2巡目指名選手であるミッチェルは、昨シーズンは分厚いロスターで安定したプレータイムを得ることができず、36試合の出場に留まり、プレーオフではほとんど出番がなかった。それでも今シーズンはシックスマンとして活躍の場を得て、評価を高めている。
そのきっかけは開幕2戦目、ファイナルの再戦となるペイサーズ戦だ。2試合連続のダブルオーバータイムとなり、さすがのサンダーも攻守の強度を保つのが難しい状況で、ミッチェルはベンチから38分の出場で26得点4アシストを記録。彼が苦しい時間帯を繋ぐことでチームは接戦を競り勝った。ここからチャンスが増え、昨シーズンは16.6分だった出場時間が今シーズンは27.0分に、得点は6.5から18.7へと大きく伸びている。
「誰もがプレーする準備をしておくべきで、いつ名前が呼ばれても準備万端でいなければならない。誰かが欠けたら、別の誰かがその分だけ頑張るんだ。僕らは全員がそのメンタリティを持っている」とミッチェルは言う。
「チームメートもコーチ陣も『自信を持って思い切り良くプレーしろ』と励ましてくれる。実際、コートに出て意識すべきはアグレッシブになることだと分かっている。無理なプレーは禁物だけど、僕がガードとして良いプレーを生み出すにはアグレッシブであることが必要だ。みんなが僕に自信を与えてくれるおかげで、コートではアグレッシブでいられるし、プレーを楽しむことができる」
ベンチから出るガードとしてはケイソン・ウォレスとアーロン・ウィギンズがいて、病気で出遅れているニコラ・トピッチもいずれ戻って来る。ミッチェルが活躍しているのに加えて、2ウェイ契約でデビューしたばかりのクリス・ヤングブラッドも短い出場時間の中で爪痕を残している。
NBAデビューを果たしたばかりのヤングブラッドは、チームに加わって肌で感じたサンダーの強さをこう説明する。「このチームには努力する文化があり、助け合いの精神がある。チームに加わったばかりの僕に、シェイやアレックス(カルーソ)が『何でも聞いてくれ。どれだけ聞いても質問しすぎということはない』と言ってくれる。彼らのようなスター選手が毎日ハードワークしているから、一生懸命やるのが当たり前になる」
若い戦力が豊富に揃うサンダーは、多少のケガ人が出てもミッチェルのような選手がその穴を埋めてくれる。シーズンを通して全員を満足させるプレー機会を与えるのは難しいが、彼らが望めばスタメンで、あるいは重要なローテーションで獲得したがるチームはいくらでも出てくるだろう。それはサンダーにとって『新たな資産』が増えることを意味する。
NBAでは長らく常勝チームが出てきていない。若いチームは何らかのきっかけをつかんで強くなるが、最盛期はそれほど長く続かずにサイクルは終わりへと向かっていく。しかしサンダーは、そのサイクルを力強く回しながら『拡大再生産』を実現する可能性を秘めている。