
第3クォーター後半からの猛攻で一気に突き放す
『第77回全日本大学バスケットボール選手権大会(以下、インカレ)』の女子準決勝第1試合が行われ、東京医療保健大が98-65で早稲田大に勝利。10年連続のファイナル進出を決めた。
最終的には大差がついた試合となったが、前半は早稲田大の精度の高いシュートによって、東京医療保健大は守備からリズムを作る自分たちの流れに持ち込めず、43-44と互角の展開で終えた。第3クォーターも最初は後手に回る苦しい展開となるが、激しいプレッシャーをかけ続けて早稲田大のシュート確率を落とすと、ロー ジョバ、大脇晴の力強いインサイドアタックと、ストロングポイントを生かして着実に得点を重ねて逆転に成功。最後はタイムシェアを行うことでプレー強度を落とさなかった東京医療保健大が、固定メンバーでガス欠となった早稲田大に攻守で圧倒した。
この試合、東京医療保健大はジョバが34得点14リバウンド、大脇が21得点11リバウンドとゴール下を支配したことが大きな勝因となった。そして、絈野夏海は、このアドバンテージを的確に生かすゲームメークで、7得点4リバウンド4アシストの数字以上の貢献をみせた。
絈野はこのように試合を振り返る。「前半は劣勢の状況が続いて苦しい時間帯が長かったです。その中でも自分たちの強みで攻め切る、自分たちでモチベーションを上げていくことにフォーカスしました。そして後半になって良い流れをつかめたことが良かったです」
今シーズン、ここまで東京医療保健大は春の『関東大学女子バスケットボール選手権大会』、夏の『新人インカレ』、秋の『関東大学女子バスケットボールリーグ戦』をそれぞれ制し、優勝候補の大本命としてこの大会を迎えている。その中で後半途中でリードを許す劣勢は、負けたら終わりの一発勝負のトーナメントにあって大きなプレッシャーを感じてもおかしくない。
しかし、絈野は「自分たちは困難な状況を面白がることを意識しています。リードされている時も『今が困難な状況だから、ここでやるぞ』という気持ちで立ち向かえていたと思います。特に焦りはなく、いつも通りプレーしようと声がけをしていました」と、動揺はなかったと語る。

「クリエイティブなプレーに関しても頑張っているところ」
絈野といえば岐阜女子時代は世代随一のシューターとして、ウインターカップの大舞台でも次々と3ポイントシュートを沈めていたのが記憶に新しい。東京医療保健大では外角のシュート力に加え、ハンドラーとしても着実に成長を見せておりプレーの幅を大きく広げている。
自身の役割について絈野はこう捉えている。「得点力は一つの大きな武器と思いますが、今は自分が相手を引きつけて味方を生かす。クリエイティブなプレーに関しても頑張っているところです。特に今年のチームはゴール下でジョバや晴さんが強みになっていて、そこで攻めていける時は自分が積極的に行くというより、2人にシュートを打ってもらうことを意識しています」
東京医療保健大の恩塚亨コーチは、「一瞬の隙を見つけてドライブしてチャンスを作り出したのは素晴らしかったです。試合の流れを変えてくれました。ディフェンスも相手の隙を狙ってボールを奪う感覚は特別なモノがあります。彼女には日本代表でポイントガードをやってほしいと思っています」と絈野への期待を語る。
明日の決勝の相手は、7年連続となる白鷗大。東京医療保健大にとっては過去2年連続で敗れ、特に昨年は4度のオーバータイムと歴史に残る激闘の末に敗れる悔しさを味わった。その試合途中で無念の負傷退場となった絈野は「去年は最後までコートに立てなかったことが一番未熟だったと思います。今年は最後までコートに立ってチームを勝利に導くため、自分のできることを最大限に出して勝ち切りたいです」とリベンジへの思いを語る。
シューターから、圧倒的なシュート力を備えたハンドラーへと進化を遂げている絈野が、王座奪還の切り札となるのか、明日の決勝がより楽しみとなる今日のプレーだった。