デズモンド・ベイン

サッグスにベイン、主力の勝ちたい気持ちが空回り

NBAカップのセミファイナル、マジックとニックスの顔合わせは、わずか週間前にハードなプレーが続く中でいらだったデズモンド・ベインがOG・アヌノビーにフルスイングでボールをぶつけ、罰金を食らった因縁のある対戦でした。その流れが続いたかのように、マジックが感情的になって自滅したという印象の強い展開となりました。

ハイスコアになった前半は71-64でニックスがリードします。マジックはジェイレン・サッグスが前半だけで25得点を奪ったものの、サッグスの本来の役割はディフェンスでジェイレン・ブランソンを止めることだったはずが、簡単にスイッチしてしまったりピックアップミスも多く発生し、それをオフェンスで取り返すような形が繰り返されました。

そんな中で強引にスピードアップしてトランジションアタックを決めた際に足を痛めたサッグスは、後半になると動きが悪くなり、最後は走れなくなってコートを去ることになりました。大事な試合でステップアップするマインドは重要ですが、自身の役割を適切にこなせず、取り返しに行ったことがゲームプランを崩壊させました。

後半にブランソンを止める役割を引き継いだアンソニー・ブラックは、駆け引きを交えたディフェンスで奮闘し、さらにカウンターアタックからダンクへ行きます。空中にいるブラックをブランソンが後ろから押すファウルがありましたが、これに激高したベインがレフェリーに猛抗議し、テクニカルファウルを受けました。

頭に血が上ったベインは、続くフリースロー時に不必要にオフェンスリバウンドに飛び込みます。これでトランジションディフェンスの人数が足りなくなり、カウンターアタックでOG・アヌノビーにダンクを許します。続くオフェンスではディフェンスを崩せていないのに、無理やり突っ込んだベインがレイアップを外して倒れ込み、再びニックスがカウンターアタックを決めました。ブラックのディフェンスでの奮闘を帳消しにするような感情論のプレーで、マジックは2桁のビハインドを負います。

それでも気持ちが乗ったプレーで追い付いたマジックですが、今度は安堵したのか、パオロ・バンケロとベインの両エースをベンチに下げ、オフェンスの核となる選手が誰もコートに出ていない状況にしてしまいます。明らかに苦しいユニット構成になったことで、第3クォーター残り3分から2点しか取れず、点差は再び2桁に広がってしまいました。

結局このリードを有効に使ったニックスが反撃のチャンスを作らせず、132-120でファイナル進出を決めました。

1試合ですべてが決まる重要な試合でしたが、マジックは感情に左右される不安定さばかりが目立ちました。相手を飲み込むような気持ちの強さは重要ですが、それはしっかりとゲームプランを遂行した上でのこと。ここまで勝ち進む戦力の充実ぶりはありながらも、フィジカルな戦いが増えていくプレーオフも見据えるとマジックが乗り越えなければならない壁が明確にと見えた一戦でした。