大脇晴

「一言でいうと安心したところはあります」

全日本大学バスケットボール選手権(インカレ)の女子決勝は7年連続で東京医療保健大と白鷗大の対決となり、序盤から続く一進一退の激闘を東京医療保健大が76-73で勝利。3年ぶり7度目の日本一に輝いた。

初優勝の2017年からインカレ6連覇を飾っていた東京医療保健大だが、過去2年間は白鷗大に敗戦。特に昨年は第3クォーター終了時点での17点リードを守りきれず、4度のオーバータイムの末の惜敗だった。

昨年も中心選手としてコートに立っていた4年生エースの大脇晴は、リベンジ達成への思いをこう語る。「自分たちは日本一を取るためにやってきました。率直にいうと安心したところはあります。昨年の大会は、これまで生きてきた中で一番悔しい思いをしました。そこから一人ひとりが自分の役割にしっかりと向き合って努力を日々、積み重ねてきたからこその今日の結果が出たと思います」

この試合、大脇は持ち味の力強いドライブでディフェンスを切り崩し、オフバランスでのシュートを沈めるスキルの高さを存分に発揮。守備でもチームを支え、40分フル出場で33得点9リバウンド4アシスト、さらにターンオーバーはわずか1と完璧なプレーだった。

また、チームの流れが悪い時にこそ積極的なアタックを仕掛ける姿勢が際立っていた。エースとして、苦しい時にこそ得点を取ってチームを救うことは何よりも意識したと大脇は明かす。

「チームを勝利に導く選手として、自分が得点を取らないと勝てないという思いでプレーしていました。そして自分の気持ちをみんなわかってくれ、自分にパスをくれて託してくれました。あとは自分に任せて、という気持ちでプレーしていました」

東京医療保健大の恩塚亨コーチは、大脇の存在を「大きかったです」と語り、彼女の成長ぶりを称える。「この1年間でも大きくステップアップしました。得点能力を高めるだけでなく、チームのモチベーションを高めてくれます。相手の心が動くような言葉を届けることでもチームを支えてくれています。だから今日はできる限りコートに立ってもらおうと思っていました」

リーダーシップについて大脇は、「入学前は本当に話すことが苦手で、『緊張する』とかしか言えなかったです」と明かすが、そこから率先して声をかける今の自分に成長できた理由に、これまでの感謝があると続ける。「自分はこれまで仲間に声をかけてもらって成長してこられました。その恩返しの気持ちが強いです。自分は声をかけてもらえた時、すごくうれしかったです。その気持ちを仲間にも分け合いたいと練習からやってきました。練習から常にやってきたことで当たり前になったと思います」

大脇晴

「本当に勝たないと面白くないです」

王座奪還を果たした東京医療保健大だが、彼女たちの戦いはこれで終わりではない。チームは新チーム始動時から皇后杯(全日本バスケットボール選手権)の優勝も目標として掲げて取り組んできた。15日から始まるファイナルラウンド1回戦で滋賀銀行に勝つと、2回戦でWリーグのトップチームであるデンソー アイリスと激突する。

もちろんチームの地力でいえばデンソーのほうが明らかに格上だ。しかし、何が起こるかわからない一発勝負において、東京医療保健大は歴史に残るアップセットを起こしてもおかしくない可能性を秘めている。大脇は次のように新たなチャレンジへの意気込みを語る。

「インカレの優勝だけでなく、皇后杯に向けての思いもすごくあります。トップリーグの選手の方たちはフィジカル、シュート力ともに高いですし、自分たちも負けないように日々、努力しています。一人ひとり、自分たちも戦える自信を持っていると思います。今日できなかったことを修正し、大会までまだまだレベルアップできるところはあります」

高校時代の大脇は、ウインターカップで51得点32リバウンドという大暴れを見せたこともあったが、そこまで脚光を浴びることはなかった。しかし、今の彼女は世代屈指のフォワードとして誰もが実力を認める選手となった。この進化を支えたのは日々の努力と、「恩塚さんに言われたところに対してわからなかった時はその場で聞いて解決することを意識していました」と語る、新たな知識を貪欲に吸収する姿勢があってこそ。そして何よりも「本当に勝たないと面白くないです。勝ちにこだわるからこそ、能力を上げないといけない」と、勝利への貪欲さが成長の源となっている。

この『勝たないと面白くない』の気持ちは、格上であるWリーグのチームと戦う時も変わらない。生粋の負けず嫌いである大脇は、皇后杯でも闘志抜き出しの強気のプレーでチームメートを鼓舞し、会場を沸かせてくれるはずだ。