勝部璃子&竹内みや

インターハイ優勝25回、ウインターカップ優勝24回という絶対的な実績を誇る『女王』桜花学園は、今年の岡山インターハイで26回目の優勝を勝ち取った。それでもU18日清食品トップリーグで3位に終わったことで、チームには良い意味での危機感がある。インターハイで一躍注目を浴びた2年生エースの2人、勝部璃子と竹内みやにも浮かれた様子は一切ない。ウインターカップに向けて強烈に追い込む練習を終えた後の2人に、現在の心境を語ってもらった。

「苦手と思っているうちは変われない」

──インターハイで桜花学園は4年ぶりの優勝を果たしました。あれから5カ月、2人はそれぞれどんな目標を掲げて、それに対してどんな努力をしてきましたか。

竹内 私はインターハイで個人としてシュートの精度とゲームコントロールがまだまだできていないと感じたので、ウインターカップに向けて3ポイントも含めたシュートの精度を上げて、いろんな試合を見てバスケIQを高めようと思っていました。最近ケガをしちゃって、このところは練習も試合も参加できていませんが、トップリーグの精華女子戦で3ポイントシュートを3本決めたのは、練習の成果だと感じられました。

勝部 私はインターハイで庵原有紗さんや三輪美良々さんとのポストの争いでフィジカル負けすることが結構多くて、そこがずっと自分の課題になっています。トップリーグの日本航空北海道との試合では、インターハイの分まで庵原さんにやり返したかったんですけど、やはり気迫みたいなところで負けてしまいました。それで「コンタクトするのが苦手」と思っているうちは変われないと気付いて、最近の練習では自分から当たりにいくことを意識しています。

竹内 今までは抜いた後にそのままレイアップに行くことが多かったのに、抜ききらずに自らコンタクトに行ってのジャンパーみたいな工夫をすごくやっていて、最近の練習を見ているとそれが分かります。言い方がちょっと上から目線みたいになっちゃいますけど、どんどんレベルが上がっていてチームメートとして頼もしいです。

──竹内選手はそう言ってくれていますが、自分では実感がありますか。

勝部 少しずつ変わってきた手応えがあります。ウインターカップでまた対戦する機会があると思うので、その時に「強くなった」と相手に感じさせるようなプレーをしたいです。

──勝部選手から見た竹内選手の取り組み方はいかがですか。

勝部 ケガをするまでの試合では、竹内がゲームコントロールをしていると安心して任せられていました。本人は悩んでるとか、もっと良いセットを選択できるようにしないと、といつも言ってくるんですけど、結構いろんなことをちゃんと考えているのは分かっています。1年生の頃は自信がなかったかもしれませんが、最近はガードとしての声掛けの部分でもゲームコントロールの部分でも、しっかりチームを引っ張ってくれています。

竹内 自分に対してどう思っているか聞く機会ってあまりないので、チームメートから褒められるのはなんか照れるんですけど、うれしいです(笑)。

「良い雰囲気を自分たちで作っていきたい」

──インターハイの会場でも、ケガするまでのトップリーグを見ていても、竹内選手の人気はすごいことになっています。

竹内 応援してくださる方がいるのは率直にうれしいです。「見てくださっている人のために頑張ろう」という気持ちは、すごく試合で頑張る力になります。私のことを応援してくれる人って小さい子もすごく多くて、そういう子たちに希望を与えるというか、バスケって楽しいと感じてもらえるプレーができるように頑張りたいです。

勝部 竹内人気は本当にすごいです。なんかアイドルみたいな、というかスポーツ選手っぽくない黄色い歓声(笑)。でも浮かれるところは全然なく、頑張っています。

竹内 照れる。ありがとう(笑)。

──インターハイでは優勝しましたが、U18日清食品トップリーグでは京都精華学園と岐阜女子に敗れて3位に終わりました。夏からここまでチームはどんな取り組みをしてきましたか。

竹内 まずインターハイに勝てたことは、慢心ではなくすごく良い自信になっていると思います。でもトップリーグでは京都精華学園との試合でたくさん課題が出て、あそこで「このままじゃウインターカップでは勝てない」と全員が感じました。そこからチームに火が付いた感じはあります。今の2、3年生は去年のウインターカップでの悔しい負けを経験しているので、「絶対に去年みたいな負け方はしたくない」という思いを持って、今は本当にすごく勝ちにこだわっています。それも一部の選手だけじゃなくチーム全体がまとまって成長できていると感じています。

勝部 インターハイで厳しい試合でも勝てるという自信を持てましたが、トップリーグでは2敗して、その2試合で何がダメだったかと振り返ると、コミュニケーションとかアイコンタクトが自分たちには足りていないと思いました。このチームは竹内もそうだしディバさん(イシボ・ディバイン)も、盛り上がるスイッチが一度入ったらすごいけど、あの2試合ではそのスイッチが入らなくて、それで勝てないみたいな。スイッチが入るのをただ待つんじゃなく、自分たちでコートの中で気持ちを上げていく力が必要だと思うようになりました。

──自分たちで気持ちを上げていく力は、具体的にどんなものになりますか。

勝部 インターハイで「桜花のバスケ、楽しかった」と言ってくださる方が結構多くて、それはすごくうれしいんですけど、その2試合はそういう姿を見せられず、上手くいかなかったらみんな沈んでいく、みたいな。ウインターカップでもキツい試合は出てくるはずなので、そういう時こそみんなで目を合わせて、良い雰囲気を自分たちで作っていってバスケができたらいいなと思っています。

「良いプレーが1本出るとブチ上がって、突っ走る」

──「盛り上がるスイッチ」という言葉が出ましたが、それは悪いことではなくて、勢いに乗ったら止められない力は武器になります。竹内選手は自分がそういうタイプだと思いますか。

竹内 自分だけじゃなく仲間が良いプレーをしたらテンションが上がるし、接戦の場面で良いプレーが1本出るとブチ上がって、そのまま突っ走るみたいな感じです。良いプレーが出て吠えるとテンションが上がって、そこからさらにプレーが良くなる自覚は結構あります。でも無理にスイッチを入れることはできないので、その流れが来るまではコツコツと良いプレーを積み上げて、その溜めたものをドーンと出したいです。

勝部 私はコツコツやるタイプですね。

竹内 でも本当にたまに、クラッチタイムにシュートを決めたりすると吠えるよね(笑)。

──ウインターカップで桜花学園のこんな部分を見てほしい、というのはありますか。

竹内 プレーで見てほしいものもたくさんあるんですけど、やっぱり桜花学園には他のチームにはない雰囲気があると思っていて、ベンチに入っているとか入っていないとか関係なく、本当に全員がチーム一丸となって試合に挑んでいる姿を見てほしいです。

勝部 私も同じなんですけど、インターハイで一番覚えているのが精華女子戦でタイムアウトを取った時のことです。これはもう桜花一丸を超えているんですけど、ベンチ裏の応援席にいる選手や保護者が桜花学園の応援歌を歌う時に、一般の観客まで力になってくれた一体感がありました。

竹内 あれはすごかった。会場全体が桜花学園の味方をしてくれてる感じがしました。

勝部 タイムアウトでコーチの指示より応援の声がすごすぎて何を言ってるか全然聞こえなくて(笑)。でも私たちが負けているのに、後押ししてくれる力をすごく感じました。

「それぞれが自分のできることを最大限に表現する」

──そのシーンはすごく覚えています。留学生にボールを集める精華女子のバスケに大苦戦していた場面ですね。それでも、桜花学園が観客の心をつかむような何かを発信していなければ、会場があんな雰囲気にはなっていないと思います。だとしたら、桜花学園のどんな部分が観客の心をつかんだと思いますか。

勝部 やっぱり桜花学園はコートに出ている5人の誰かが点を取り続けるんじゃなくて、常に全員が主役で、それぞれが自分のできることを最大限にコートで表現するチームなので、そういうところを見ている方々に評価してもらえたんじゃないかと思います。

竹内 うーん何だろう……。ここ何年かは優勝できていないのもあって、「今年は桜花学園に頑張ってほしい」と思ってくれている方がたくさんいたんじゃないかと思います。それは私たちが何かを発信しているのとは違う話なんですけど、今まで『絶対女王』みたいに言われていたのが最近崩れていて、そこから息を吹き返す気配があって、会場に来ている人たちが「桜花学園が復活する瞬間をこの目で見たい」と思って、応援してくれたのかもしれないです。

勝部 プレー面で言えば桜花学園はディフェンスのチームで、自分たちが流れに乗れるのはディフェンスが上手くいっている時です。精華女子の留学生に対して私たち全員が全力を出して何とか止めようとするディフェンスの必死さが、周りに伝わったのかもしれません。

──ウインターカップでもチームとしてはディフェンスに注目ですね。ではそれぞれ自分の「ここに注目してほしい」というプレーが何かを教えてください。

勝部 私はチームが得点を必要としている時にシュートを決めきれるように頑張るので、その部分に注目してください。

竹内 私が一番得意としているドライブです。全チームがドライブを警戒してくるのは分かっていますが、それでもドライブから得点を決めたり、相手を見てパスをさばいてアシストするプレーを見てほしいです。