飯田遼

ミスマッチを打ち消す好守でチーム最多のプラス19

川崎ブレイブサンダースは1月5日の仙台89ERS戦(第2戦)に77-71で勝利し、2025年初勝利を飾った。

新年一発目の試合となった4日の第1戦は61-82で大敗。翌日の第2戦も出だしからネイサン・ブース、クリスティアーノ・フェリシオら強力な外国籍を擁する仙台に0-8のランを許し、前半終了時に18点ビハインドを負った。

しかし第3クォーターで48-57(22-13)と1桁差にまで迫り、第4クォーター残り2分、ロスコ・アレンのアシストからマシュー・ライトが3ポイントシュートを沈めてついに逆転。攻守にわたるアグレッシブなバスケットで連敗を回避した。

飯田遼はこの試合で30分近くコートに立ち、ディフェンスで存在感を示した。マッチアップした202cm101kgのスタントン・キッドを185cm88kgの体格で粘り強く守り、第1戦で21得点を挙げたキッドの得点を13得点に押さえ、このミスマッチを起点にオフェンスを展開しようとしていた仙台のリズムを崩すことに貢献。第4クォーターの追い上げの主役となった篠山竜青、ライトと共に勝利の立役者となった。

「ミスマッチが起きてもローテーションに入って、 全員で足を動かして守ろうという意識が全員にあったと思うので、僕だけが頑張ったわけではないです。竜青さんの寄りもすごい早かったですし、それに合わせて周りもうまく動いていたと思うので」

このように話した飯田の個人スタッツは、約28分の出場で8得点(うち3ポイントシュート2/4本)と突出したものではない。しかし、勝負どころで3ポイントシュートを沈め、自身がコートに立った時間で生み出したプラス19点はチーム最多だった。

それを伝えると、飯田は意外そうな顔で「あぁ、そうなんですね」と言った。

飯田はもともと個人スタッツというものにあまり頓着がない。プライオリティは「スタッツや攻守に関係なく『良いプレー』をする」というところにある。「ディフレクションで相手のリズムを崩すとか、今日みたいにミスマッチで頑張ってファイトしてシュートを止めるっていうプレーはスタッツに出ないですが、そういう部分のほうが意識しています」

飯田遼

下剋上V、二軍から主将「努力をやめたらそこまで」

現在中地区最下位の川崎は苦しい戦いを強いられている。年末にはBリーグ創設以来初となる10連敗も経験した。特に昨シーズン以前からチームに所属する選手たちは、それまでとの大きなギャップを感じることもままあるだろう。

ただ筆者は、在籍2シーズン目の飯田はこのような状況であっても、これまでのキャリア――拓殖大でBチームからAチームのキャプテンに上り詰めたこと、香川ファイブアローズ時代にB3降格を経験したこと、B2からB1へとステップアップを果たしたことなど――を基に、上手に気持ちをコントロールできているのではないかという仮説を持っていた。そのようにぶつけてみると、飯田は言った。

「高校では県で圧倒的に強い東海大三(現在の東海大諏訪)以外のチームでウインターカップを狙いたいと思って佐久長聖に進学し、3年でそれを達成しました。大学でもコツコツやっていた結果Aチームに上がれて、キャプテンになって、インカレ3位という結果を出せました。チームの状況が良い時も悪い時も、自分がやるべきことを徹底してやること。『負けちゃったし、今日全然試合出てないし、もう明日やればいいや』とは考えず、少しずつ、あせらず、今やるべきことが何か考えてやることが何よりも大事なことだなと思っています。去年ベンチ外になった時期もそうでしたし、チームが今こういう状況であることももちろん悔しいです。でもそこで努力をやめたらそこまでの選手。一生懸命ひたむきにやることはすごく大事にしています」

そういったマインドで「今やるべきこと」として取り組んでいることとして、飯田はチームディフェンスをより深化させるコミュニケーションを挙げた。

「結局1人じゃ何もできないじゃないですか。なので試合をより鮮明にイメージして、『コーチが言ってること以外にもこうしたほうがいいよね』というコミュニケーションを促していますし、もっともっとできると思っています。相手の特徴を練習の中で深く突き詰めて、本気でイメージしてやらないと練習は意図したものになりません。『この選手にこのプレーだけはやらせないようにしよう』『せめて3ポイントじゃなく2ポイントを打たせよう』というような具体的な意識をチーム全体で持てたらいいなと思って自分からそういうことを言うようにしていますし、最近は年齢関係なくいろんな選手からも挙がるようになってきました」

ちなみにこの試合、飯田が「キャリアで初めてです」と振り返るプレーがあった。第4クォーター中盤、キッドの速攻を止めようとして犯したアンスポーツマンライクファウルだ。飯田は「あれは間違いなく反省すべき点。ファールは冷静にしなければいけないものですし、普通にボールに守りに行けばアンスポにはならなかったので」と悔いたが、「でも」と言葉を続けた。

「なんて言うんですかね。OKではないですけど、気持ちが出ているプレーではあったというか。仙台さんも勝ちたい。僕らも勝ちたい。そういう戦いの中で(流れが変わりそうな)あそこで『意地でも止めてやる』ってプレーが出た。それが今年のチームはできていないことが多かったので。アンスポになったことは反省していますが、ファウルをするという選択自体は間違ってなかったのかなと思います」

飯田は大変に気立ての良い青年で、時としてプロアスリートに必要とされる狡猾さや、したたかさ、なりふり構わぬハングリーさといったものをあまり感じさせない。そんな飯田が珍しく発露した強い気持ちに、彼、そしてチームがどれだけ勝ち星に飢えているかを思い知った。