琉球ゴールデンキングスは、2021-22シーズンの開幕戦でホームの沖縄アリーナにアルバルク東京を迎え撃つ。琉球が先出し開幕の舞台に立つのは、Bリーグ初年度以来でその時の相手もA東京だった。あれから5シーズンを経て当時のメンバーで今も琉球に在籍しているのは田代直希と岸本隆一のみとなる。キャプテンとなり名実ともに琉球を支える大きな柱となった田代に今シーズンの意気込みを聞いた。
「環境が整った分、今まで以上に練習しなくてはいけない」
──開幕を間近に控えて今の心境を教えてください。
チームとしては、開幕戦に選んでいただいたのでしっかりとした試合、ファンの方々に喜んでもらえるような試合にしたいです。ただ、個人としてはいかにレギュラーシーズンの60試合を積み上げていくかが最も重要だと考えています。開幕戦をできる事はとてもありがたいですが、自分たちのベストの状態で開幕を迎えることは事実としてできない。そこの部分のちょっとしたギャップについては少し複雑ですが、今できる自分たちのベストは尽くします。
──3回連続でセミファイナル進出、特に過去2回は第3戦で敗退と、ファイナルにあと一歩まで迫っています。それだけに、今シーズンは最初からファイナルだけを見据えていくのか、それとも足下をしっかり見つけていきたい。どんなイメージですか。
もちろん優勝は目標ですが、今はやらないといけないことや積み重ねていかないといけないことが山積みです。何より昨シーズンはレギュラーシーズンで上手くいきすぎていた部分があり、だからこそ上手くいかなかった時の対応に課題が残ったと感じました。正直、レギュラーシーズンは苦しんでいい、悪いところをどんどん出していき、それを一つずつ解決していくことにしっかり時間を割いた方がいいと思います。時には立ち止まってもいいし、それくらいの考えでシーズンを歩んでいく方が僕たちにとって未来はあるのかなと思います。
──開幕戦の相手は優勝候補筆頭とも言われるA東京ですが、5年前を含めて感じることはありますか?
5年前の代々木第一体育館の試合は僕にとってプロデビュー戦でした。あの時はちょっとしかプレーできなくてほとんどベンチで過ごしていましたが、あれから5年が経って今はキャプテンをやらせてもらっています。プレータイムもある程度は確保できるようになってきたのでだいぶ自分の中で心境の変化というのはあります。5年前に比べて、自分自身でも成長は感じられますね。
──それこそ5年前というと、まだ練習場所は宜野湾市の冷暖房もない公共施設で、一般の人たちと同じ条件で利用していました。環境の変化についてはどのような思いですか。
環境は大きく変わりましたが、球団として一気にバンって良くなったわけではないです。一歩一歩自分たちができることをやり、環境の整備をして今に繋がっているので、少しずつ球団としても成長してきたと感じます。
ただ、それこそ宜野湾で練習をやっていた時期は、環境さえ整えば絶対に強くなると思い込んでいました。でも、いざ素晴らしい環境を手にすると、自分たちがどう使うかの方がよっぽど重要だと実感しました。環境が整った分、今まで以上に練習しなくてはいけないですし、本質的なところで選手として上手くなりたいのであれば練習を重ねていくべきで、そういう気持ちの部分での自立した感じはチームとして伺えます。みんな早い時間にコートに来てシューティングやトレーニングをして、身体のケアをしたりと、うまく利用できていると思います。
「スポーツ選手にとっては、休むことも大事なんだとすごく実感しました」
──今オフ、チームの補強についてはどのように感じましたか。
すごい大きな補強したと思います。何よりビッグマンが増えたので、インサイド陣の組み合わせで全く違ったチームになるのは面白いですし、僕たちがうまく使いこなせれば相当強い武器になります。ドウェイン(エバンス)を3番起用するビッグラインナップなど、いろいろな顔があるのが僕たちの強みになる。ただ、布陣によってバスケットの共通理解はまた変わってくるので、ラインナップによってどういうオフェンスをすれば有効なのか、そういった戦術の理解度がまだまだ浅いので深めていかなければいけません。そこはかなり時間がかかる作業なのでゆっくりいけたらと思います。
──昨シーズンの最後、セミファイナル第3戦が終わった後の会見では、できるだけ多くの選手が残る形で来シーズンを戦いたいと言っていました。その願いは叶いましたか。
僕的にチャンピオンシップでプレーすることは何よりも一番大事な経験で、それを経験したメンバーと来年も戦うことができれば見え方が変わると思っていました。そういった意味では大きくメンバーが変わったというわけではなく、何よりコー(フリッピン)の加入で優勝経験が加わり、選手層の厚みも増したように思います。
──編成についての言及は、後で言いすぎてしまったと感じたりはしませんでしたか。
思い切ったことを言っちゃったなとは思いましたけど、僕が選手編成に何かを言える立場では全くないです。いち個人の感想を述べてしまったのは反省でしたけど、気持ち的には、なるべく多くのメンバーと一緒に残ってプレーしたい。Bリーグが始まってからキングスは今まで大きく選手を入れ替えることが続いてきたので、あれは僕の感想であり、一つの願いでした。
──そもそも木村(達郎)社長、安永(淳一)取締役らチームのトップと、編成について話しをしたことはありますか。
全くないです。ファンの皆さんと同じタイミングで、SNSで「え? コー来るんだ」とか「渡邉飛勇来るの?」と知りました。
──昨シーズンは膝にたまった水を何度も抜くなど、満身創痍なコンディションの中で戦い抜きました。今回のオフシーズンはどのように過ごしていましたか?
トレーニングだけでなく、運動すら全くしなかったです。1回もバスケットボールをしなかったです。昔は休みの日もガツガツ練習を続け、その結果としてケガを繰り返してきたキャリアでした。休むことに対してすごく抵抗がありましたが、それを1回ぶっ壊して休んだらどうなるのか、それは自分にとって一つの挑戦でもありました。信頼する方から疲労は蓄積なので1日、2日休んだところで全部取れるわけではない。しっかり休める時に休むことも大事だよ、と聞きこれはと思って1カ月ちょっと全く運動しなかったです。
でも、それが自分の中でしっくりきました。ちょっと断食っぽいことをやって腸も休ませました。それで体調がすごく良くて、本当に身体、胃腸を休めることは健康的で良いという発見がありました。トレーニング再開から1週間くらいである程度はコンディションが戻ってきたので、スポーツ選手にとってはしっかり休むことも大事なんだとすごく実感しました。今後もオフシーズンは休むことを継続していきたいなと思います。
「僕も与える側の人間になりたい」
──生え抜きで在籍年数も長く、キャプテンも今シーズンが3年目と名実ともにキングスの顔としてなっています。そういった自分の置かれている立場について意識するところはありますか。
キャプテンをやらせてもらい、もちろん頑張りたい気持ちを持っています。ただ、僕1人の力でここまでやってきたとは最近より思えなくなっています。木村社長だったり、球団の方々やいろいろな人たち、過去に一緒にプレーした選手たちが良い物を授けてくれたおかげで今の僕があります。僕1人の力だけでなく、彼らに生かされての6年目です。今後もそれは変わらないですし、より一層、人に感謝してバスケットをしていかなきゃいけない。逆に僕も与える側の人間になりたい。今後は一緒にプレーした選手に良いものを一つでも授けられるような選手になりたいという思いで今はいっぱいです。
──個人として、今シーズンどのようなテーマを持って臨みますか?
今シーズンは特にスマートにバスケットをしたい。バスケットそのもの、戦術への理解度も深めてどうやったら再現性の高いプレーができるのかをどんどん勉強する。それをコートで表現するのが自分のテーマかなと思っています。そういった面では桶谷(大)ヘッドコーチとコミュニケーションを取る中で、僕がこういう風に取り組みたいというのを分かってくれていて、すごく恵まれた環境でプレーをさせてもらえていると感じます。
──これまでの歩みがあり、ファイナル、チャンピオンへの距離は近いと感じますか。
遠い気はしていますね、それこそバスケットの哲学を桶谷さんと話したり、勉強するとやっぱり奥が深くて、今まで表面的な部分でしかバスケットをしていなかったと痛感します。それをより学ぶようになってから、優勝はすごく遠くに感じるようになってきました。確実にチームは強くなっていますが、強くなっているのは僕たちだけじゃありません。リーグを見渡したらどんどん補強して強くなっているチームはたくさんあるので、一歩一歩やっていくしかないです。
──ファンにメッセージをお願いします。
今、世の中の情勢がすごく不安定で難しい状況ではありますが、これからレギュラーシーズン60試合が始まります。本当に皆さんの声援が必要になりますし、皆さんの存在が僕たちにとって大きな武器になるので、応援していただきたいです。僕たちもプレーで皆さんに勇気や感動を届けられるように全力を尽くして頑張るので、お互いにこの難しい状況を乗り越えて頑張っていきましょう、応援よろしくお願いします。