3人制バスケ『3×3』の日本代表として東京オリンピックに参加した富永啓生は、その類まれなシュート力と勝負度胸で大会3位となる1試合平均6.9得点を記録し、チームの決勝トーナメント進出に貢献した。その彼は今秋からNCAA1部のネブラスカ大に編入する。全米屈指の強豪カンファレンスである『BIG TEN』でプレーすることは、彼にとっては大きな挑戦だ。ネブラスカ大はバスケの名門というわけではないが、現在は元NBA選手でありブルズでヘッドコーチを務めたフレッド・ホイバーグが指揮を執り、良い選手を集めてステップアップが期待されるチーム。オリンピックを終えてアメリカへと戻る富永に、その抱負を聞いた。
「3ポイントシュートの確率で40%を超えて、50%に近づけたい」
──ネブラスカ大への編入が決まりました。短大で結果を出したことで複数のオファーがあったと思いますが、どういう基準でネブラスカ大を選んだのかを教えてください。
NCAAの『BIG TEN』で、それこそ相手チームのレベルがすごく高いことが一番です。良い環境、レベルの高い環境でバスケットをすることを求めていたので、決まった時は素直にうれしかったですね。
それに加えて指導者も昔にNBAのシューターだった人で、そういうコーチに教えてもらいたいという気持ちもありました。コーチ陣からはシューターとして、シュートの部分に期待をしてもらっています。その部分でチームを助けられたらと思っています。2年生扱いでスタートになります。
──レンジャー短大で1試合平均16.8得点、フィールドゴール成功率55%と素晴らしい結果を残しました。ですが今回は全米屈指のカンファレンスでプレーすることになります。ステージが上がることに不安はありませんか?
不安を先に言ってしまったらアレなので自信はありますね。もちろん得点もそうですけど、プラス確率も意識して、シュートのところで活躍できたらなと思っています。具体的には3ポイントシュートの確率で40%を超えて、50%に近づけたいです。得点を伸ばすにはチームメートに信頼してもらってパスを出してもらうのが大事なので、そこは練習からやっていく必要があります。ちゃんと確率を残して、決めてくれると信じてもらうのが大事です。もちろん、プレータイムが約束されているわけではないので、それはこれから勝ち取っていきます。
──20歳にして3ポイントシュートでは日本人でもトップの力を持っていると思いますが、上手くなる秘訣はありますか?
簡単に説明するのは難しいんですけど、まずはもちろん数を多く打つことで、それにプラスして自分のシュートを見付けることだと思います。自分のシュートを見付けて数多く打つことがシュート力アップの秘訣だと思います。
「もちろん、ワールドカップもパリオリンピックも意識しています」
──オリンピックではアウトサイドのシュートだけでなく、ドライブで中に切り込んでのシュートもたくさん決めました。これまでよりプレースタイルの幅は広がっていると思います。ネブラスカ大ではドライブで切り込んだり、あるいはハンドラーの役割もこなすつもりはありますか?
そこは臨機応変なんですけど、今のところはシューターということで話をしているので、チームに求められる役割をまずはやるつもりです。でも実際、シュートの精度だけでなくドライブを使ってインサイドで勝負できるようになりました。そこはこの2年間の成長だと感じているので、伸ばしていきたいとは思っています。
──アメリカに行く前に取材をした時には、「バスケの面では不安はありませんが、英語を含めた勉強とか生活面がちょっと不安です」と話していました。ネブラスカ大でも単位取得は必須ですが、その点の不安はまだありますか?
あまりないですね。最初に行った時の3カ月は特に大変だったんですけど、向こうにいる時期が長くなるにつれて良くなってきています。最初はちゃんと勉強ができるのか不安でしたが、大変ですけど頑張ればやれることは分かったので、そういう意味での不安は減りました。生活面でも特別に何かをやっているわけではないですが、普通にチームメートとコミュニケーションを取って楽しくやれたので、大丈夫だと思います。ホームシックになることもなかったし、向いているのかもしれません(笑)。
──オリンピックでは5人制の日本代表も見ていましたか?
はい、見ていました。1勝を挙げることはできなかったんですけど、本当に全チームのレベルが高い中で、昔では考えられないぐらい良い試合をしていたとで、すごいと思って見ていました。
──試合を見ていて、「自分がここにいたら、こういうプレーをする」と思うことは?
たまにはありますね。そんなに多くをイメージすることはないですけど、たまに「ここは自分だったら打てたな」とか。
──アメリカを拠点にプレーするので、日本代表に参加するのはそう簡単ではないと思いますが、2023年にはワールドカップがありますし、次のオリンピックは4年後ではなく3年後にあります。この先は5人制の日本代表も視野に入ってくると思いますが、そこへの思いを聞かせてください。
もちろん、ワールドカップもパリオリンピックも意識しています。特にパリオリンピックを目標にして、自分の少し欠点であるディフェンスのところ、フィジカルの部分を成長させて、日本代表に加わりたいと思っています。
──NCAA1部でプレーする以上、次のステージとしてはNBAを意識することになります。
そうですね。NBAの選手になるのが小さい頃からの夢なので、ネブラスカ大で良いステップを踏んで、そこで活躍してNBA選手になれるように頑張りたいと思います。まだまだ成長しないといけないところがたくさんありますし、次のレベルでどれだけ結果を残せるかがNBAへのステップになると思っています。実現できるように頑張っていきたいです。