桶谷大

「いい加減にしないとダメだと正直、思っています」

12月21日、琉球ゴールデンキングスはアウェーでファイティングイーグルス名古屋と対戦した。FE名古屋のディフェンスの圧力に負けた琉球はイージーミスが続き、立ち上がりから2-12のランを許す。その後、故障から12月8日以来の復帰を果たした岸本隆一の3ポイントシュートで盛り返すも、ここから互いにディフェンスを切り崩せないロースコアの展開で推移した。

第3クォーター残り数秒の場面で、琉球は緩慢なディフェンスを突かれて佐土原遼のレイアップを許し、さらに第4クォーターの立ち上がりにもミスからの失点が続き、残り8分半で10点のビハインドを背負う。ここから守備で踏ん張り、残り1分にはヴィック・ローの4点プレーで1点差まで詰め寄るも、これが精一杯。逆転には至らず58-62で敗れた。

琉球はバックコート陣の要である岸本が待望の復帰を果たしたが、18日の水曜ゲームで伊藤達哉が脳震盪を負って離脱。シーズン開幕から続くポイントガード不足は継続しており、司令塔の不在がオフェンスの停滞を招いた。

だが、琉球の桶谷大ヘッドコーチはケガ人を言い訳にせず、シンプルにこの試合のパフォーマンスの質の低さに厳しい評価を下す。「試合の出だしで戦う準備のできていない選手がいました。日本人選手はディフェンスで頑張っていましたが。オフェンスは(相手が)スイッチしたところを狙いすぎて、ターンオーバーが増える。成長できていないところはすごく感じています」

この試合、琉球はインサイドで生まれたサイズのアドバンテージを生かそうという意識が強すぎて、強引にゴール下にパスを入れて何度も失敗。それでもゴール下に固執し、オフェンスの流動性が出せなかった。指揮官は「ボールムーブメントがなくなって1対1、ドリブルが増える。フィジカルにやられたからとフィジカルでやり返そうとする、もったいない試合を続けています。いい加減にしないとダメだと正直、思っています」と険しい表情だった。

岸本隆一

岸本「アグレッシブに取り組むにはどうしたらいいか」

3年連続でファイナルに進出したこれまでと同じく、琉球は今シーズンもリーグ屈指のサイズとパワーを備えたインサイド陣を有している。彼らに気分良くプレーされたらゴール下を制圧されるからこそ、相手はフィジカルなプレーで少しでもイラつかせようとする。故障に繋がるようなハードファウルは論外だが、今日のFE名古屋のような身体を張った激しいプレーは、ルールの範囲内で行われているものだ。

この想定される相手の策にはまっている現状に、桶谷ヘッドコーチは「何回、同じ過ちを繰り返したら分かるのかという散々なゲームでした。フィジカルではなくレイジー(怠慢)なプレーが出てしまっており、この問題を解決したいです」と語気を強める。

その琉球にとって、明るい話題だったのは岸本の復帰だ。「まだ50%から60%くらいです」と本人がコンディションについて語る中、21分48秒の出場で16得点と存在感を見せた。

「スコアのところはできましたが、自分が出ている以上、オフェンスをもっとチームとして流動的に展開させないといけないです。手応えも50%から60%でした」

このように岸本の自己評価は厳しいが、チームの現状についても指揮官と同じように厳しい認識を持ちつつも、「僕としてはそんな上手くいくわけはないという思いで最初からシーズンに入っているので、この状況に悲観はしていません」と冷静だ。

「みんながよりアグレッシブに、前向きに取り組めるにはどうしたらいいかなと考えることが個人的にはより大事です。特に外国籍選手は身体を張って頑張ってくれていて、そこで『もっと頑張れ!!』というのは酷です。それこそ連続してスコアしたら乗れる選手がたくさんいるので、そういった部分をもっと引き出してチームのエナジーに変えていくことをすごく意識しています」

そして岸本も、「自分たちの成長を追い求めていくには、もっと要求されることを遂行していかないといけないです」と、厳しい意見を持っている。

故障者続出というマイナス要因があるにせよ、今の琉球のプレー内容は良くない。ただ、そもそも今シーズンはオフに複数の主力が去り、これまでに出番の少なかった選手、ルーキーの脇真大に多くのプレータイムを与えている変革期だ。それを考えると岸本が語るように、西地区首位にいる今は悲観的な状況ではない。

しかし、さらなる躍進を求めるには、ここで手綱をしっかりと締め直すことも必要だ。だからこそ桶谷ヘッドコーチの叱咤、岸本のポシティブな姿勢ともに今のチームに欠かせない視点となる。まずは明日の第2戦、今日の反省を生かし勝利をつかむことで、悪い流れを払拭できるかどうか。琉球にとって大きな踏ん張りところとなる。