テーブス海

「一つのプレーで落ち込む余裕はない」

今年の天皇杯は川崎ブレイブサンダースの優勝で幕を閉じた。Bリーグ初年度の優勝以来、タイトルから遠ざかっている宇都宮ブレックスにとっては悔しい結果となった。それでも、強みであるインサイドでアドバンテージが取れない中、終盤まで接戦を演じたことでリーグ後半戦に繋がる敗戦になったとも言える。

特に最終クォーターにコートに送り出され、2本連続で3ポイントシュートを成功させて望みを繋いだテーブス海はインパクトを残した。安齋竜三ヘッドコーチも「前半のディフェンスで、やられたくないところが彼のところで少しあったので、後半は使っていなかったですけど、しっかり気持ちを切り替えていた。こういうゲームで委縮したりミスをする選手もいるけど、3ポイントシュートも決めたし、ディフェンスもしっかりできていて、今後のリーグ戦に繋がるプレーだった」と評価した。

テーブスは第2クォーター残り1分にアンスポーツマンライクファウルをコールされた。安齋ヘッドコーチが「気持ちを切り替えていた」と語ったのは、この不可抗力なファウルからのカムバックも含まれていた。

テーブスは言う。「イージーなバスケットを許すところだったのでブロックしようとしたらアンスポになってしまった。相手に余計に流れがいってしまうことになって、チームには本当に申し訳なかったですけど、次に出番があった時はチームに勢いをつけるためにアグレッシブにプレーしたいと思って、ベンチで応援していました。決勝は一つのプレーで落ち込む余裕はないです。次のプレーのことしか考えないようにしていたので、そのおかげで最後に出た時は積極的にやれたんじゃないかなと思います」

バスケにおける2桁得点差は勝敗を分ける一つの目安となる。特に残り時間が少なければ少ないほど、10点前後のビハインドは重くのしかかってくる。だが、レギュラーシーズンの宇都宮は劣勢に追い込まれても逆転まで持っていく、逆境の強さを有している。誤算だったのは川崎の集中力が最後まで切れなかったことだとテーブスは語った。

「10点差以上になってくるとちょっとした焦りもたまに出ます。そこで焦ったとしても、チーム一丸となって戦い続けることがレギュラーシーズンはできていたので、今日もそういう展開になるんじゃないかなと思っていました。でも川崎さんもそれを分かっていたので、10点差以上になっても全然油断せず、同点かのように思い切ったプレーをしていたので、そこが自分たちに流れが来なかった理由だと思います」

テーブス海

「このチームは優勝してもおかしくないと思っています」

テーブスは以前から、チームを勝たせることがポイントガードの仕事という考えを貫いている。そのため、「まだ5分くらいあったので、6点差にしたあの3ポイントシュートは大きかったと思いますけど、負けてしまったのであまり良いと思うプレーはないです」と、自身のプレーについて語った。

テーブスと同じような考えを持つ選手は少なからずいる。それでも、ここまで勝利にこだわり、自身のパフォーマンスに執着しないのは宇都宮というチームの特性によるものが大きい。「このチームは優勝してもおかしくない。こんなに良い選手が揃っている中で、一人の活躍とかスタッツにこだわっていても何の意味もないです。このチームのみんなは自分が0点でも勝てば良いと思っていて、僕もそういう選手です。ブレックスに入ってさらに勝ちへのこだわりが強くなったので、勝たないと何も良いことは生まれないと思っています」

昨年の1月10日に特別指定選手として宇都宮に加入したテーブスにとって初めての 天皇杯となった。「これぐらい熱く、インテンシティの高い試合を大きい会場でしたのは初めてです」とさいたまスーパーアリーナでのプレーも初めてと明かした。普段と異なる大きな会場でのプレーはシュートの感覚を狂わせることもあり、アジャストするのに時間がかかる選手もいる。その中でいつも通りのパフォーマンスができたのは「一度だけ2万5000人ぐらい入るノースカロライナ大で満員の中でプレーしたことがあります」というアメリカでの経験が役立ったのだろう。

天皇杯制覇にはあと一歩届かなかったが、大舞台で激闘を繰り広げた経験はどの選手にもプラスになったはず。「自分は本当に熱くなればなるほど楽しいと思う選手なので、第4クォーターで競っていた時は本当に楽しかったです。こうやってたくさんのファンの皆さんの前で熱い戦いができて、良い経験にもなったし感謝ですね」と語るテーブスにとってはなおさらだ。