
山田桜来はディフェンスでチームを引っ張る『汗かき役』だが、今年に入ってオフェンスでも結果を出すようになった。桜花学園で得点を取るのが勝部璃子や竹内みやの仕事なのは変わらないが、要所で山田のシュートが決まり始めたのだ。岐阜女子を破る逆転のディープスリーを沈めた6月の東海ブロック大会決勝を皮切りに、いざという場面で彼女の手から放たれたボールは次々とリングを射抜くようになった。『シンデレラガール』となった山田に、高校バスケの集大成となるウインターカップへの意気込みを聞いた。
「打ってもいい、と自分で思えるぐらいまで練習した」
──U17女子ワールドカップで活躍した昨年からさらに注目度が増している山田選手ですが、まずは自己紹介からお願いします。
私はディフェンスを一番の武器にしていて、チームの流れが悪い時にディフェンスで勢い付けることをいつも意識しています。相手のガードをマークすることが多いので、そこで簡単にボール運びをさせないように、自由にプレーさせないようにディフェンスを頑張っています。オフェンスでは3ポイントシュートの練習を増やしていて、最近は少しずつ入るようになってきました。
ディフェンスはミニバス時代からすごく鍛えられました。ミニバスも中学もディフェンスを頑張るチームで、そこでディフェンスが自分の武器だと思えるぐらいに鍛えたので、桜花学園に来ても「まず自分がチームの力になれるのはディフェンスだ」と感じました。
──北海道出身の山田選手が桜花学園に入るきっかけは、どんなものでしたか。
桜花学園の卒業生の岡本美優さん(トヨタ自動車アンテロープス)が東月寒中の先輩で、練習に参加させてもらえるようにお願いしました。そこで井上眞一先生に見ていただいて入学が決まりました。全国区の強いチームでやりたい気持ちが強くて、まず道外のチームでやりたかったし、そこで桜花学園の練習に参加させてもらったことで「ここでプレーしたい」という気持ちになりました。
──初めてこの体育館に来た時は圧倒されたのかワクワクか、どんな感情でしたか。
緊張しすぎてまともに動けないぐらい(笑)。すごい選手ばかりで圧倒されたんですけど、「こんなチャンスは二度とない」と思って、自分にできる最大限のプレーを見てもらおうと思いました。
──ずっとディフェンスが持ち味でやってきた山田選手が、ここに来てすさまじいクラッチ力を発揮しています。今年になってシュートが上手くなったのか、もともとのポテンシャルが何かのきっかけで表に出たのか、自分の成長をどう受け止めていますか。
1、2年生の頃はまず試合にあまり絡めていなかったし、外のシュートが得意だという自信もなかったから、どうしても外よりドライブを意識しがちでした。今年に入ってから「チャンスがあったら打ってもいい」と自分で思えるぐらいまで練習を重ねて、そうするうちに練習でもシュートが入り始めて、試合で打てる自信ができたと思います。

「私以外の点を取る選手がプレーしやすくなる動きを」
──東海ブロック大会のゲームウィナーで、自信という点では大きく変わったのでは?
ただ投げて入ったマグレのシュートかもしれないけど、あそこで決められたことが自信になったのは間違いないです。自分が逆転のシュートを決めたというより、負けている状況からチーム全員が頑張って押し返して、最後に逆転して勝てたのが自分にとってはすごくうれしかったし、自信にもなりました。
その自信がプラスになったのか、インターハイでもディフェンスが自分の思っている以上に上手くできて、今までの試合よりも足が動く感覚があって、それも自分が良い方向に成長できているという自信になりました。
──金澤杏選手が春に膝をケガして長期離脱になりました。今年の桜花学園は得点の面で金澤選手に期待するところが大きかったはずで、彼女のケガは山田選手が点を取りに行くきっかけになりましたか。
金澤が試合に出られないと得点が伸びないというか、オフェンスのバランスが悪くなるのは確かにありますが、それでも竹内とか勝部、ディバ(イシボ・ディバイン)のように点の取れるメンバーはいます。だから自分が点を取らなきゃいけないというより、2年生の2人がドライブで点を取ってくれる時に、自分が良いポジションを取って合わせたり、ディフェンスを引き付けてドライブを助けたり、私以外の点を取る選手がプレーしやすくなるような動きを意識するようになりました。
自分がやらなきゃという部分は、やっぱりディフェンスです。今まで以上に自分が先頭を切って前からプレッシャーを掛けて、自分たちに流れを持ってくる。ディフェンスで自分が一番攻め気を出していこうと思っていました。
──竹内選手と勝部選手にも話を聞きましたが、2人の山田選手への信頼は大きいと感じました。シュートが決まるようになって、2人から出てくるパスは増えましたか。
勝部と竹内が得点源になっているのは他のチームも当然知っているので、そこにディフェンスが寄る分、私がノーマークになることが多いです。そうやって「自分が空いてる」と思った瞬間にパスを出してくれて、フリーで気持ち良く打てる場面が多いとは感じます。信頼されているのかどうかはちょっと分からないですけど(笑)、でも空いたらパスを出してくれるのはうれしいし、周りが打てる場面をちゃんと作ってくれているから私のシュートも入っているんだと思います。
──U18日清食品トップリーグでも、日本航空北海道や精華女子との試合で勝負を決めるようなビッグショットを決めています。東海大会のシュートは無我夢中だったと思いますが、自信を持って打つシュートが決まるのは、また違う味わいなのでは?
確かに日本航空北海道との試合では自信を持ってシュートを打てていたし、その自信が他のプレーにも影響して、相手のフォワードがマークマンになったら自分のドライブがすごく効くと思って自信を持って攻めることができました。

「楽しんでやれている部分が大きくなってきた」
──インターハイ優勝からの5カ月で、チームにはどんな成長がありましたか。
ディフェンスは練習から強度を上げること、オフェンスではシュートのパーセンテージを上げることを取り組んできて、ディフェンスは少しずつ良くなっていると思います。オフェンスはまだ雑なシュートがあったり、判断が悪い部分があるので、練習しながらもっともっと改善していきたいです。
あとはコミュニケーションの部分です。トップリーグの京都精華学園との試合で、流れが良くない時にみんな自分の世界に入って下を向いてしまっていました。トップリーグが終わってから、もっとコミュニケーションを増やそうと意識していて、少しずつだけど声が増えてきたと思います。
スタートで試合に出ている選手と、次に出る選手、まだ試合に出ていない選手の間に力の差はまだあります。チームとしての底上げはすごく大事だし、3年生が全体の雰囲気を引き締めて、練習の強度をもっと上げていきたいです。
──ウインターカップの目標はもちろん優勝だと思いますが、勝ち負けとは別に山田選手としてはどんなパフォーマンスを見せたいですか。
自分の武器はディフェンスで、そこは絶対にブレないように。ここまで岐阜女子の小松美羽選手だったり、本当のトップレベルの選手とのマッチアップで自分のディフェンスができなかったり、ファウルが多かったりしたので、誰が相手でも同じ強度でディフェンスをするのがまず一番です。オフェンスでも他人任せにならないこと。自分のシュートチャンスがあったらしっかり打ちきりたいです。やっぱり3年生として、気持ちの部分で相手に負けないようにしたいです。
──桜花学園は全国制覇を期待されているチームで、3年生となればプレッシャーも大きいと思います。プレーを楽しむ余裕を持つのは簡単ではないかもしれませんが、山田選手が「楽しい!」と感じるのはどんなプレーをした時ですか。
全員でディフェンスしてオフェンスに繋げて、ディバや竹内がドライブでバスカンを取ったりした時は、チームの雰囲気も上がります。そこでみんなとハイタッチしたり、ガッツポーズをして喜んでいる時がすごく楽しいです。
正直、今までは自分の世界に入りすぎてしまって、いっぱいいっぱいになっていることが多かったのですが、今年になって周りが見えてきた感じがあります。竹内を見ていても、めっちゃ笑顔でバスケを楽しんでいるじゃないですか。今はその影響からか試合を楽しんでやれている部分が大きくなってきたと思います。簡単な試合はないし、流れが悪い時は絶対に来ますが、そんな時でもチーム全員で笑顔で楽しくやって乗り切りたい。ウインターカップではそういう気持ちを大事にして戦いたいです。
ドラマチックすぎる幕切れ‼
残り2.3秒ラストプレーで #山田桜来(#5)のロングスリー炸裂👀
最後の最後で #桜花学園 が逆転勝利🎉▶視聴はコチラhttps://t.co/TLvyhgIPmP#バスケットLIVE ライブ/見逃し配信中📡#高校バスケ#ブロック大会@U18_JBA pic.twitter.com/siS3YSwjIc
— バスケットLIVE (@BASKETLIVE_JP) June 22, 2025