「この年齢になると個人の目標は考えない。勝つだけ」

アンドレ・ドラモンドはキャリア14年目をセブンティシクサーズで過ごしている。決して器用ではないオールドスクールのセンターだが、ジョエル・エンビードが膝に爆弾を抱えて戦線離脱と復帰を繰り返し、出場できてもプレータイムに制限がある状況で、リムプロテクトとリバウンドで安定した力を発揮できるベテランの居場所ができ、そこで存在感を見せている。

若かりし頃のようにオールスターに選ばれたり、リバウンド王になることはない。しかし、エンビードが欠場すれば先発として、そうでなければベンチから出るセンターとして、ケガ人続出のチームを支えている。

デビューから8シーズンを過ごしたピストンズを離れたのは2020年のこと。そこからしばらくはジャーニーマンとして各地を転々としたが、2022年からのブルズ、2024年からのシクサーズで、役割は限定されても確実に仕事のできるベテランとして彼は重宝されている。

シクサーズに加入したのは昨シーズンで、エンビードが19試合にしか出場できない中でチャンスを得たが、つま先のケガに見舞われてシーズン終盤戦を戦えなかった。懸命のリハビリでコンディションを100%に戻して開幕を迎え、ここまで良いプレーを見せている。

今シーズンの始動にあたり、「この年齢になると個人の目標は考えない。ただ勝つことだけを目指したい」とドラモンドは言った。「コート上でどんな役割を任されるにせよ、それがベンチで若手をサポートする役回りでも、とにかくチームが勝てばいい。昨シーズンは失望と言うしかない結果に終わり、個人的にも責任を感じていた。あんなことを繰り返さないためにも、自分にできることは何でもやるつもりだ」

エンビードもポール・ジョージも開幕に間に合わず、シクサーズの先行きは不安視されたが、主力を欠く試合が多いにもかかわらず14勝10敗は悪くない成績だ。ドラモンドは24試合中22試合に出場し、そのうち10試合でチームトップのリバウンドを記録している。

ベテランと若手の融合に一役買っているのもドラモンドの貢献と言っていいだろう。いつも彼は若手たちの中心にいて、強い信頼関係がうかがえる。彼のキャリアに加え、オープンな性格もあるのだろうが、年齢や実績に関係なく友情を築けている理由を彼は「ゲームのおかげだ」と明かす。

「オンラインでゲームをやっているんだ。毎日のロッカールームで最初の話題になるのは、前の晩のゲームの話。コート外で築くケミストリーはコート上でも意味があるから、悪いことじゃないよ(笑)」

「若い連中には若い連中なりの話し方や付き合い方がある。彼らの輪の中にいるのは楽しいし、そのおかげで若者の気分でいられる。あいつらから見ると僕は大ベテランだろうけど、年寄り扱いはされたくない。でも、僕のキャリアについて質問したり、アドバイスを求められるのは光栄なことだ。以前の僕はベテランにいろんな話を聞くのが好きだった。特にラシード・ウォレスから言われた『リバウンドを真剣にやれば、お前は史上最高の選手になれるぞ』という言葉が、今の僕を作った。キャリア14年目で逆の立場になっていると思うと、なんか感慨深いものがあるよ」

現地12月12日、シクサーズはペイサーズに115-105で勝利した。同点で迎えた第4クォーター、ドラモンドは最初の5分で攻守にハッスルし、その後をエンビードに託した。エンビードはいまだプレータイムに制限があるが、この試合では39得点9リバウンドと久々に本来の支配力を発揮。ラスト7分を圧倒してシクサーズに勝利をもたらした。

ドラモンドは試合の主役にはならないが、堅実に繋ぐことで勝利に貢献している。前の試合から4日空き、ペイサーズ戦の2日後にはホークス戦があるが、その後はまた4日空く。NBAカップのおかげで13日間で3試合という、ケガ人の多いシクサーズには一息つけるスケジュールとなっているが、ドラモンドは「あまり好きじゃないよ」と不平を言う。

「オールスター休暇が2回連続で来るみたいな感じで、今までこんなスケジュールは経験したことがない。小さなケガがあったから休めるのはありがたいけど、ルーティーンが崩れるのはやりづらいから、本当はカップ戦を勝ち上がって試合を続けていたかったよ」

それで言えば、エンビードの膝の状態次第で先発と控えで役割が入れ替わる今は大変だろうが、ドラモンドはそこに不満はない。「これはメンタリティの問題だ。多くの選手は役割が頻繁に変わることに慣れていないだろうけど、僕はその難題を乗りこなすのを楽しんでいる。先発でも控えでも、僕にとってはチャンスなんだ。どの試合でもチャンスを最大限に活用する、というのが僕の考え方なのさ」