迷いを吹っ切る13得点「ようやく自分らしさを出せた」
10月21日、川崎ブレイブサンダースはサンロッカーズ渋谷とのアウェーゲームに95-87で競り勝ち、6連勝を達成した。最後までもつれ、スコア以上の激闘を制する立役者となったのが藤井祐眞だ。
この試合の藤井は第3クォーターまで無得点だったが、第4クォーターに入るとエンジン全開。持ち味である縦への鋭いドライブで相手ディフェンスを切り崩すと、2点を追う残り3分から川崎が挙げた15得点のうち13得点を挙げる活躍で、試合終盤を支配した。中でも残り18秒、川崎のリードを6点に広げる決勝弾は、ステップバックで体勢が崩れながらも決め切ったもので、SR渋谷の伊佐勉ヘッドコーチも「あれを決められるのはこのリーグで彼しかいない」と脱帽する一撃だった。
「出だしのところで相手の起点となるベンドラメ(礼生)選手に対して、長谷川(技)選手がプレッシャーをかけ続け、ターンオーバーを奪いました。相手の得点源に気持ち良くプレーさせなかったことがこの試合では一番で、それがジャブのように効いて最後に勝ちきれたと思います」
このように勝因を語る藤井は、自身のパフォーマンスについては「個人的には開幕戦以降、ずっと調子が上がらなかったです。ここでようやく自分らしさ、コートでエナジーを出すことができました」と、喜ぶよりも安堵といった表情を見せる。
開幕戦のアルバルク東京戦で21得点を挙げた藤井だが、それ以降はここまで1桁得点に終わっていった。先週末の広島ドラゴンフライズ戦は2試合続けて6アシストと記録しているが、佐藤賢次ヘッドコーチが「彼の特徴は縦にアタックして、ペイントの中に入っていろいろなプレーができるところ。それが、ここ数試合は思い切りの良さが見られていなかった」と語るように、本来の積極性があまり見られなかった。
本人も「シュートが入らず、ドライブしてもターンオーバーになったりして迷っていた部分は少なからずありました」と振り返るように、ここ数試合の彼はモヤモヤを抱えながらプレーしていた側面はある。
川崎の根幹であるハイインテンシティの動力源
SR渋谷は、前から激しく当たっていくリーグ屈指のディフェンスが特徴であり、受け身になってしまうと一気に流れを持っていかれる。ただ、前から来るからこそ、そこで縦に突破できればオフェンスにチャンスが生まれる。
ある意味でこのシンプルな状況は、藤井にとっては迷いを吹っ切るきっかけとなった。「SR渋谷さんのディフェンスはプレッシャーが強いので、そこに対して逃げずに戦えと言われていました。それでアタックして抜いていくことを意識したのが良い形に繋がりました。今日は絶対に決めてやるという気持ちを前面に出せました。最後のタフショットまマグレだったかもしれないですが、決める気持ちで打ちました」
この日の彼のプレーは佐藤ヘッドコーチも「ようやく本来のプレーを見せてくれた」と満足するもの。彼自身も「僕は気持ちでプレーする部分が大きいので、そこを表現できたのは良かった」と手応えを得ている。
圧倒的な運動量と勇猛果敢なプレーでチームのギアを上げることができる藤井は、川崎の根幹であるハイインテンシティの動力源。その彼が復調のきっかけをつかんだことは、白星と同じくらい大きな価値を持つ。