写真=Getty Images

引退した選手の健康を守るため、選手協会が尽力

NBA選手協会(NBPA)は、引退した選手を対象とする健康保険制度導入のための基金の設立を発表した。NBAで最低3年プレーした選手が対象となる。

引退した選手を対象とする健康保険プログラムの導入は、北米プロスポーツでは初めてとなる。NBPA会長のクリス・ポール(クリッパーズ)は、「リーグの人気は過去最高の状態にある。それは自分たちがプレーする以前に尽くしてくれた選手たちのおかげだと、現在NBAでプレーしているすべての選手が認識しているよ」と語った。

「NBAファミリー全体に配慮することはすごく大事だ。元選手の健康を保証するという、前例のない一歩を踏み出せることを誇らしく思うよ」

昨年にはバスケットボール殿堂入り選手のモーゼス・マローン、パワーダンクの生みの親として知られるダリル・ダウキンズが心疾患で急逝している。マローンは60歳、ダウキンズは58歳の若さでこの世を去った。これを「重要なサイン」と受け止めたNBPAは、心臓病予防プログラムなど、現役を退いたOBたちに必要なサポートを提供する準備を進めてきた。

日々の健康管理に困るOBは少なからず存在する

現役時代から実業家の顔を持っており、引退後はバスケットボール選手としてのそれより大きな成功を収めているマジック・ジョンソン。解説者の枠を超えて日々バスケファンと接しているシャキール・オニール。そしてバスケの「現場」に残り、指導者として大きな成功を勝ち取ったスティーブ・カー。彼らのような存在はある意味「例外」だ。

NBAで活躍したスター選手が引退後の人生設計を誤り、道を踏み外すケースは決して少なくない。NBA選手の約半数が、現役引退から5年以内に経済的困窮に見舞われるというデータもある。NBAのトップスターだったアレン・アイバーソンは浪費の末に借金で首が回らなくなった。昨秋にはラマー・オドムが売春宿で意識不明の状態で発見され、生死の境をさまよったことで話題となった。

ニュースになるような窮状ではなくとも、日々の健康管理に回す経済的余裕のないOB選手は少なからず存在するのだろう。彼らはクリス・ポールの発表を聞いて安堵しているはずだ。もっとも、基金を設立するだけでは意味がない。この手の保障制度は5年、10年と続いて初めて意味が出てくるもの。それでもNBPAが踏み出した一歩は、大きい。

人種問題について言及したり、LGBT問題によってオールスターゲームの開催地を変更するなど、NBAは社会的問題に積極的に取り組み続ける。