マイケル・ポーターJr.

写真=Getty Images

素晴らしいタレントだが手術した腰の状態が不透明

ミズーリ大学に1年だけ在籍し、NBAドラフトにエントリーしたマイケル・ポーターJr.は、誰もが認める才能を持った選手だ。アメリカとカナダの高校を卒業した選抜選手が出場するマクドナルド・オールアメリカンでは大会MVPを獲得。早い時期から今年のドラフトにエントリーするのは確実と言われ、全体1位指名もあり得るという評価を受けていた。

しかし、大学に進学して早々のアクシデントで戦線離脱を余儀なくされてしまう。206cm97kg、ウィングスパン216cmの大器は、高校2年の時に痛めた腰を悪くし、手術することに。シーズン終盤に復帰し、出場わずか3試合、合計53分で平均10.0得点、6.7リバウンドという成績を残した。

ポーターJr.はオールラウンドな力を持つ選手で、センター以外は『ポジションレス』と言われる現代のNBAにおいて重宝されるタイプの選手だ。ドライブからも点が取れ、ポストからのミッドレンジも上手く、ロングレンジからのシュートも打てる。ウィークポイントはシュートセレクションの悪さ、視野の狭さ、ペイント内で相手と接触した際のシュート成功率が低いこと。だが、まだ19歳という年齢を考えれば伸びしろは多い。その点は期待できるのだが、健康状態に関しては黄色信号が点灯したままだ。

ドラフトにエントリーする前のシーズン序盤にケガをして、ほぼシーズンを棒に振っても上位指名される選手の例は少なくない。近年ではセルティックスのカイリー・アービングとセブンティシクサーズのジョエル・エンビードも大学時代はケガに泣かされたが、アービングは2011年の全体1位、エンビードは2014年の全体3位指名を受けた。しかし、彼らのケースとポーターJr.のケースで最も異なるのは、ドラフト前の時点で手術を受けた腰の回復程度が不透明な点だ。

上位指名が有力な選手の場合、ドラフト前に各チームのワークアウトを受けるタイミングでチームのメディカルスタッフの診断を一緒に受けるのが通例だ。しかしポーターJr.の父親は、どのチームのワークアウトも受けないこと、それからNBAチームに息子の健康状態に関する情報を提示しないと言い切った。その代わり、エージェントがシカゴにある関係で、ブルズの施設を借りて、息子に関心を持つロッタリーチーム(1~14位指名権)関係者のみを招待して行うワークアウトの実施と、ブルズのスタッフが身体の状態を確認し、その情報を他チームと共有することを一方的に発表した。

実施されたワークアウトでの動きは、まだ身体の状態が50%程度ながらチーム関係者を納得させるものだったという報道もある。また、健康状態に関する診断書の内容も問題はなかったとのこと。それでも、上位指名権を使って今後のチームを背負って立つ選手を求めるチームであれば、自分たちのメディカルスタッフの診断を受けさせた上で、指名するかどうかの最終的な判断を下すのが当然と考えるはず。何も隠していないのであれば、ワークアウトを断る理由はない。どれだけ才能があっても、年間82試合という日程をこなすNBAでは身体の強さも必須条件になる。ポーターJr.は魅力的なタレントだが、大失敗に終わるリスクもある。

頭を悩ませているのは2位指名権を保持するキングスだ。彼らは2019年の1巡目指名権をトレードで譲渡してしまっているため、今年のドラフトに懸ける気持ちは他チームよりも強い。順当に行けば、アリゾナ大学出身のディアンドレ・エイトン、スロベニア出身のルカ・ドンチッチ、そしてポーターJr.の誰かを指名する可能性が高い。

だがエイトン以外は不確定要素を抱えている。ドンチッチは来シーズンからNBAでプレーするかが保留のままで、ポーターJr.は指名しても短命で終わる可能性がある。キングスだけでなく、ロッタリー(1~14位)チーム関係者は、ポーターJr.の評価に頭を抱えているに違いない。