文=鈴木健一郎 写真=鈴木栄一、B.LEAGUE、野口岳彦
5月7日、今週末から始まるBリーグの優勝決定戦であるチャンピオンシップの記者会見が行われた。負ければ終わりの短期決戦、タイトルを懸けた戦いを前に、出場チームを代表して登場した選手にインタビューを実施。また「ウチはここだけは負けない」のは何であるかを各選手に書いてもらった。名古屋ダイヤモンドドルフィンズの張本天傑は、大混戦の中地区2位争いを勝ち抜く決め手となった『気持ち』を迷わず選んでいる。

若いチームが経験不足を乗り越えられたのは『気持ち』

名古屋ダイヤモンドドルフィンズは中地区2位でチャンピオンシップに進出。開幕から1勝5敗とスタートダッシュに失敗し、その後も連勝と連敗を繰り返す不安定な戦いを続けたが、接戦を勝ち切る力を備えたラスト1カ月を7勝4敗で乗り切り、中地区2位の座を守り切った。張本天傑は「大事な時を気持ちで乗り越えた」と振り返る。

「ウチは他のチームより選手が若く、経験では相手を下回っていることが多くて、そこを気持ちでカバーしなきゃいけない部分がたくさんありました。そこで大事な時を気持ちで乗り越えたことがすごく多かったと思います」と張本は『気持ち』の大切さを語る。

ただ、『気持ち』は簡単なようで難しいもの。一歩間違えれば空回りするし、そこで腰が引けてしまっては戦えない。『気持ち』をうまくコントロールすることは、若いチームには簡単ではないし、1勝の価値が増す混戦のシーズン終盤戦となればなおさらだ。

その点について張本は、就任1年目の梶山信吾ヘッドコーチの存在が大きかったと説明する。「苦しい時、ヘッドコーチはいつも『やってきたことを信じよう』と言ってくれました。自分たちのバスケットを信じることが大事で、相手がどうであろうがスタイルがブレることなく、信じてやっていくだけなので」

「悔しさがあるからこそ、もっと頑張らなきゃ」

チャンピオンシップ進出はあくまで通過点だが、ライバルより優位に立ちながら終盤戦まで決められなかったことでプレッシャーもあった。「正直、今ここに立てていることにホッとしている部分があります」と張本は正直な気持ちを明かす。

レギュラーシーズン60試合を戦って31勝29敗。チャンピオンシップ進出チームの中では最も勝率が低く、クォーターファイナルで対戦する琉球ゴールデンキングス(42勝18敗)とは実に11ゲームの開きがある。それでも張本は臆していない。「昨シーズンはチャンピオンシップに出れなくて、今シーズンもギリギリで出場が決まって、中地区が弱いと言われることも結構ありました。でも『ここから先は結果こそすべて』なので、自分たちに力があることを証明したいです」

昨シーズンは33敗、今シーズンは29敗と名古屋Dはたくさん負けてきた。だが、それも気持ち次第で力に変えられる。「昨シーズンはチャンピオンシップに出れなくてファンの方に申し訳なかったし、今シーズンも本当は1位で出場したかったので、その分の悔しさがあります。だからこそもっと頑張らなきゃいけない」と、卑屈になるのではなく必勝を誓う。

「個性的なみんなをうまく噛み合わせる役割を」

チームを代表してこの記者会見に出席しているように、張本は名実ともに名古屋Dの看板選手なのだが、無用の気負いはない。「チームを引っ張るというより、ウチは個性が強い選手が多いので、自分はそこでしっかり軸になることを考えています。個性的なみんなをうまく噛み合わせるように、そんな役割を意識して今はやっています」

もっとも、チーム内で潤滑油の役割を自認してはいても、勝負になれば絶対に負けたくないという強い気持ちが顔をのぞかせる。「琉球はディフェンスが激しいので、そのプレッシャーに負けずに自分たちのバスケットをすることがまず一番です。どちらも3ポイントシュートが多いチームで、その分ディフェンスがカギになる。ウチもディフェンスができるチームなので、そこを見せ付けて、得意の速い展開のバスケットから3ポイントシュートをいかに確率良く決められるかですね」

独特の雰囲気となる沖縄でのゲームについては「どのチームとやるより気持ち的には嫌です」と正直すぎる言葉が漏れたが、そこから先は修羅場をくぐり抜けた者の強い言葉となった。「そのプレッシャーを自分たちの力に変えて、平常心でやります。僕たちは優勝というよりも目の前の一戦一戦を大事にして、勝って成長しながら優勝を勝ち取りたいです」

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