文=鈴木健一郎 写真=鈴木栄一、野口岳彦
5月7日、今週末から始まるBリーグの優勝決定戦であるチャンピオンシップの記者会見が行われた。負ければ終わりの短期決戦、タイトルを懸けた戦いを前に、出場チームを代表して登場した選手にインタビューを実施。また「ウチはここだけは負けない」のは何であるかを各選手に書いてもらった。アルバルク東京の田中大貴が選んだのは『ハードワーク』というワード。日本代表を率いた指揮官のルカ・パヴィチェヴィッチの下、どのチームよりたくさん練習してきたと自負する田中。ルカコーチが求める世界基準の『ハードワーク』を武器に栄光をつかみ取る。

ルカコーチの厳しい指導は「勝つために必要なこと」

アルバルク東京は日本代表選手を多数抱えることから『タレント集団』と称される。その中心にいる田中大貴はチームの強みを聞かれ、迷わず『ハードワーク』という言葉を挙げた。『タレント集団』というイメージとはかけ離れた言葉かもしれないが、今シーズンからA東京の指揮を執るルカ・パヴィチェヴィッチの譲れない一点こそが『ハードワーク』なのだ。

「ルカはヨーロッパの強いチームを指導してきた経歴の持ち主で、選手にハードワークをすごく求めるヘッドコーチです。世界の国はもっとハードワークしている、その上での指導だったので、自分たちもそれに応えたい思いが強く、勝つために必要なことだと信じて1年間やってきました」と田中はA東京の『ハードワーク』を説明する。

A東京の練習場での取材で「試合をしたほうが楽」という声を聞いたことがある。それほどルカの指導は厳しい。昨夏の準備期間の始動も早かったし、そこからハードワークは徹底していた。日々の練習で徹底的に追い込むだけに、試合を前に選手が過度に消耗する、あるいはケガしてしまうのではないかという不安もあった。だが、このタフな1年を乗り越えた今、彼らにとってハードワークは当たり前の日常と化している。

「正直、体力的にしんどい時もありました。その代わり、チームとしても個人としてもすごくタフになっている感じています。誰が出ても試合の中でハードに戦える状況ができたと思います。ヘッドコーチがハードワークを求める本当の意味が理解できたので、みんなこの準備を大事にやれています」

厳しい状況下でつかんだホーム開催

代表選手を抱えることは名誉であると同時に、選手を取られる不利もある。レギュラーシーズンの半分はワールドカップ予選の準備期間に重なり、試合と試合の間に選手が代表合宿に取られてしまう。ハードワークをモットーとするチームとして、その準備不足は痛い。

そんな状況でも44勝16敗という好成績を残し、ホームコートアドバンテージを勝ち取ったことを田中は誇る。「チーム全員で戦えるという状況が作れずに苦しいシーズンを戦ってきました。この強豪ひしめく東地区で、チャンピオンシップの1発目を自分たちのホームで戦える権利を獲得できたというのは良かったです」

「レギュラーシーズンの最終節の京都戦も今までで一番お客さんが入ってくれて、自分たちもプレーしていて高まることがありました。ファンの声援を受けて戦いやすいなという印象があったので、それをまた今週末に感じられると思うとうれしいです」と田中はファンの声援を力に変えると意気込んだ。

ファイナルの舞台に「何としてでも立ちたい」

強豪のイメージが強いA東京だが、2012年のJBL時代にオールジャパンとリーグ戦の2冠を達成して以来、タイトル獲得から遠のいている。『無冠の帝王』のイメージを払拭するためには、何が何でも優勝が求められる。

田中は言う。「シーズンが始まった時に天皇杯とBリーグのチャンピオンシップ2つを取ろうということでスタートしました。でも天皇杯は優勝できなかったので、このBリーグのチャンピオンシップに懸ける思いは強いです」

「昨シーズンのファイナルをテレビで見ていて、うらやましいな、自分もあの場所に立ちたいな、という思いがすごくありました。間違いなく楽しめると思うので、何としてでもその舞台に立ちたいんです」と田中はファイナルへの強い思いを語った。

昨シーズンは第3戦にもつれた川崎ブレイブサンダーズとの接戦を落として敗退した。だが田中もチームも、この1年で精神的にも肉体的にもタフに生まれ変わった。「流してきた汗が裏切らないと信じて、最後まで戦い抜きたい」と言う田中は、世界基準の『ハードワーク』を武器にタイトル獲得を狙う。

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