昨シーズン、琉球ゴールデンキングスは故障者に苦しめられながら西地区3連覇を達成した。この原動力となったのがセンターのジャック・クーリーだ。2018-19シーズンにイタリアのディナモ・サッサリでユーロカップ優勝に貢献したクーリーは、試合を重ねるにつれて調子を上げていき、1試合平均18.4得点、リーグトップの13.3リバウンドの大暴れ。早々に琉球との契約延長を発表した彼が、激動の1年を振り返った。
「困難を乗り越えられたことを誇りに思う」
──まずはご結婚おめでとうございます。沖縄で婚姻届を提出した理由を教えてください。
この夏にアメリカで盛大に結婚式を挙げるつもりだったんだけど、それが新型コロナウィルスの影響によって、式は来年に延期したんだ。それでも、この夏に結婚はしたかった。だから大好きな場所、沖縄の市役所に婚姻届を提出した。沖縄の人々はみんな親切で、ビーチなど美しい場所がたくさんある。本当に素晴らしいところだよ。
──オフシーズンに入って早い段階で、キングスとの再契約が発表されました。
キングスこそが僕のプレーしたいチームで、他のどこにも行きたくなかった。シーズンが途中で終わってしまったので、まだやるべきことが残っているしね。Bリーグの中止という判断は正しいと思うけど、同時にがっかりもした。チームの調子は良く、最後までシーズンが続いていれば僕たちは本当に良くなって、優勝のチャンスは大いにあったと思う。
今シーズンは故障者が多い中でよく戦えていた。最初、ジョシュ(スコット)が離脱して、途中からのタシ(田代直希)の欠場もとても痛かった。ここで若いマキ(牧隼利)がステップアップしてくれた。シーズン途中でのコーチ交代など、いろいろな困難を乗り越えられたことを誇りに思う。
──そもそもの話として、欧州で確固たる実績を残した選手が日本に来るのは珍しいです。最初、不安はなかったですか。
京都ハンナリーズのデイヴィッド・サイモンは親友で、日本でプレーするにあたって様々なことを教えてくれた。キングスでプレーすることを伝えたら「沖縄は素晴らしいところで、君にとって完璧な場所だ。」と言ってくれたんだ。だから、不安なく沖縄に来ることができた。彼からの情報はとても助けになったよ。
これまでヨーロッパでプレーしている選手たちは、日本についての知識がなくて、どれだけ良いところか分かっていない。でも今はどんどん学んでいる。僕が沖縄を選んだ時、ヨーロッパのビッグクラブからもオファーが来ていた。ただ、サイモンからBリーグ、日本という国が素晴らしいと聞いていたのは大きかった。沖縄で活躍できて、来シーズンも残ることになったのはうれしいよ。
「大好きな場所でプレーできるのは幸せなこと」
──クーリー選手にとってプロ選手となってから2年続けて同じチームに所属するのは初めてとなります。
その通り、毎年チームを代えていたけど、大好きな場所で次のシーズンもプレーできるのは幸せなことだ。新たな国を訪れて、そこの文化を新たに学ぶ必要もないしね。沖縄での暮らしは快適だし、僕以外にも多くの選手が残留していることは大きい。
──リバウンド王のタイトルも獲得した昨シーズンにおける自身のパフォーマンスについて、どんな評価ですか。
個人的にも良いシーズンだった。ただ、何よりもチームとして良い戦いができたことが、僕をハッピーな気分にさせている。そして、チームの勝利に貢献できたことに満足している。最初、Bリーグのスタイルに適応するのは大変だった。欧州で40分間近くプレーする選手はいない。しかし、日本では外国籍選手のルールが違うのでそういう状況になる。そこに慣れるのは少し時間がかかった。
──適応でいうと、日本人ガードとのコンビネーションについてはどうでしたか。また、藤田弘輝ヘッドコーチの印象についても教えてください。
ナリ(並里成)は僕がこれまで一緒にプレーした中でも最高のポイントガードの一人だ。とても自信を持っており、彼とプレーできるのはとても幸運だ。ナリとキシ(岸本隆一)のコンボは、連携も良くてとても強力だよ。彼らと馴染むまであまり時間は必要としなかった。
テオ(藤田)のことは大好きだ。彼はとてもスマートで、個々の悪いところに縛られず、それぞれの強みを生かすことに長けているね。これは彼が優れたコーチであることを示している。また、僕は毎試合、ゴール下で相手から激しいコンタクトを受け、時にはそれでファウルを取ってもらえないこともある。そういう時、彼は常に僕を支えてくれる。そういったコーチの下だと気分良くプレーできるものだ。
──Bリーグのレベルについて、そして新シーズンにおける外国籍選手のルール変更をどう感じていますか。
リーグのレベルは高いと思うよ。みんなハードに戦いゲームのテンポは早くて、プレーしていて楽しい。ただ、昨シーズンで言うと外国籍選手のベンチ登録は2人のみで、他の国と大きくスタイルが違った。ルールの変更によってプレータイムが減れば、外国籍選手の故障も減るだろうし、自分にとっても大きい。ウチではミツ(満原優樹)がインサイドで頑張ってくれたけど、そこにビッグマンがもう1人加わることは助けになる。
「沖縄のホームは熱狂的、新アリーナ完成が楽しみ」
──新シーズンについての意気込みを教えてください。メンバーの多くが残留したことをどう感じていますか。
来シーズン、僕たちは西地区の優勝候補だと思っているし、リーグ屈指の勝率を残しても不思議じゃない。新たに2地区制となって、どうなっていくのかとても興味深いね。そしてレギュラーシーズンで良い成績を残し、ホームコートアドバンテージを得てチャンピオンシップを迎えることが重要になる。沖縄のホームはリーグで最も熱狂的で、大きな歓声が送られる場所だからね。新アリーナができればさらに多くのファンが来てくれるわけだから、相手にとってはよりタフな場所になる。完成を楽しみにしているよ。
多くのメンバーが残留したのは良かった。例えばNBAでは毎年のようにメンバーが大きく入れ代わる。そうなるとオフのトレーニングキャンプ、プレシーズンを通して、互いのことをしっかり学んでいかないといけない。また、今はコロナウィルスによっていつシーズンをスタートできるのか、チームとして練習を行うことができるのか不透明だ。そこで選手の大半が同じなら、メンバーを入れ替えたチームに比べてすぐにまとまることができる。すでに互いについて理解していることは例年以上に助けとなるはずだ。
──新シーズンの優勝に向けて、改善しなければいけないのはどんな部分だと考えていますか。
チームとしては安定感をさらに増す必要がある。年明け、宇都宮ブレックスとの連戦の初戦で勝った試合のように、本来のプレーができれば、僕たちはどんな相手にも勝てる。ただ、翌日に同じがプレーできずに負けてしまった。常に自分たちの戦いができれば、優勝のチャンスは高まっていくものだよ。
僕に関して言うと、レフェリーの判定基準を理解して新シーズンの開幕を迎えられる。またレフェリーも僕がどんなプレーをするのが分かっている。それは今シーズンとの大きな違いで、開幕時点で自分にとってより良い状況になると思うよ。
──最後に、琉球のファンへ向けたメッセージをお願いします。
再び試合ができるようになったら、すごく気持ちが高まるだろうね。キングスファンは、僕にとって最高のファンだ。みんなのサポートには本当に感謝している。SNSなどのリアクションもありがたいし、再び会えることが待ちきれないよ。