チームバスケットが機能した三河が2連勝を飾る
シーホース三河と栃木ブレックスの第2戦。3日の初戦では金丸晃輔が32得点の大暴れで三河勝利の原動力となっていた。栃木は先発をジェフ・ギブスからセドリック・ボーズマンへと変更。ボーズマンのフェイスガードで三河で最も爆発力のある金丸を消しに来た。
だが、三河はこれを逆手に取って主導権を握る。第1クォーターで7本中6本の3ポイントシュートを決める攻勢で28得点。18得点が3ポイントシュート、ペイントエリアでの得点わずか4と、外からの攻めが効果的に決まった。
この第1クォーター、金丸は1本も3ポイントシュートを打っていない。普段はコントロールに注力する橋本竜馬が3本、ビッグマンのダニエル・オルトンが2本と桜木ジェイアールが1本。鈴木貴美一ヘッドコーチが試合後に「作戦を立てていたわけではなく、空いている味方を見つけてパスを回した結果。いつものウチのバスケです」と説明した臨機応変のオフェンスだった。
そしてディフェンスでは前からプレッシャーをかけて栃木に自由なボール回しを許さない。栃木も一つのピック&ロールでの打開にこだわり、人とボールの連動が生まれずにオフェンスが停滞。第1クォーターで28-15と三河が大量リードを奪った。
ディフェンスとリバウンドで立て直した栃木
第2クォーターからは栃木がディフェンスとリバウンドで立て直し、そしてジワジワと押し返すバスケットを展開する。最初の4分間は2得点のみだったが、攻撃で形を作ることができなくても我慢し、ディフェンスの強度を上げることで対抗する。そうするうちにチャンスが舞い込んだ。残り5分20秒でオルトンがファウルトラブルになりベンチへ下がるとインサイドの守りが薄くなり、ここをギブスが強引に突いて連続得点。ここから10得点を挙げたギブスがオフェンスを牽引し、34-41と点差を縮めて前半を折り返す。
ハーフタイムが明けると、栃木のディフェンスのギアはさらに1段上がっていた。身体をぶつけ、腕を伸ばして指先でボールをひっかけ、三河にリズムを作らせない。開始から4分、三河に得点を与えずに追い上げ、残り6分55秒でライアン・ロシターが3ポイントシュートを沈めて41-41と同点に追い付く。
この時、ロシターへ寄せていなかったオルトンのイライラが爆発。審判に向かってボールを突きとばしてテクニカルファウルをコールされる。これで個人ファウル4つ目。オルトンはこの後、コートに戻って来なかった。
これで得たフリースローを遠藤祐亮が落ち着いて決めて栃木が逆転。遠藤は続くポゼッションでロシターのシュートが落ちたのを拾って押し込み、さらには鵤誠司がスティールから一気にペイントエリアまで走ってパスアウト、フリーで受けた遠藤が3ポイントシュートをきっちり沈めて47-41と突き放しにかかる。
41歳の桜木ジェイアールが見せた『老獪さ』
受け身になって苦戦する三河を目覚めさせたのは2人のベテランだった。劣勢に動じることなく竹内公輔との1on1を制してゴール下を決めた桜木ジェイアール、そして直後の栃木の攻めで鵤のボールを引っ掛け、ルーズボールにダイブしてマイボールにした橋本。その後も栃木の得点は止まらず、43-54とこの試合最大のビハインドを背負うが、点差はともかく三河はベテランが戦う意思を見せて自分たちのバスケットを取り戻した。
55-60で迎えた最終クォーター。老獪な桜木がミスマッチから勝機を見いだす。ほとんど休みなしでインサイドを支えてきた竹内がベンチに下がり、自分のマークがボーズマンになると、桜木はポストプレーからの1on1で確実に勝てると確信し、チームも彼にボールを集める。これで桜木は点差を詰めるとともに栃木のファウルを連続で誘発。
桜木の6連続得点で肉薄すると、比江島慎が栃木守備網を正面からドライブでブチ破り逆転。栃木がすぐに逆転するも、ここで我慢に我慢を重ねてきた金丸が桜木とのコンビネーションから作り出した一瞬のチャンスを逃さず3ポイントシュートを沈めてまた逆転。さらに栃木に逆転されるも、今度はアイザック・バッツとのインサイドの連携で桜木がゴール下を決めて逆転。リードチェンジを繰り返す終盤、三河には多彩な攻め手があり、栃木は早々にチームファウルが5つに達していたことが足枷となった。
大接戦を制する決め手になったフリースロー
残り2分半、アタックするロシターから比江島がスティールすると素早い攻めを展開。守備陣形の整っていない栃木はゴール下のバッツをファウルでしか止められなかった。決して器用ではないバッツが、このフリースロー2本を確実に決めて76-73とリードを広げる。
派手な点の奪い合いとなった試合、三河に勝利をもたらしたのは地味なフリースローだった。最終クォーター、三河は実に16本のフリースローを獲得し、15本を成功させている。28得点を奪った第1クォーターの3ポイントシュート連発にも劣らず、勝負どころでのフリースローがモノを言った。
大きなリードではないが、極限まで集中の高まった三河にとってはセーフティに近いものだった。田臥勇太に速攻を許し1点差に迫られるも動じることなく、最終局面のファウルゲームも乗り切って81-78で勝利。12月16日と17日の新潟アルビレックスBB戦以来となる同一カード連勝を飾っている。
三河の鈴木ヘッドコーチは「ブレックスは最後の最後まであきらめない素晴らしいチームで、こういう対戦がチームを成長させてくれる。良い試合だった」と熱戦を振り返る。
前からの激しいディフェンスで栃木を鼓舞した田臥勇太は「良い部分もたくさんあったし、もっと良くしていける部分もあったので、チーム全員でしっかり成長していけるように、この2戦を糧に先につなげていかないといけない」と先を見据える。
いつものホームアリーナよりも大きいスカイホール豊田は土日とも5000人を超える観客で埋まった。シーズン半ばだが、チャンピオンシップのような熱気を帯びたこの2試合、勝った三河はもちろん、栃木も得たものは大きかったはずだ。