Bリーグはレギュラーシーズンの3分の2を消化したところで中止となった。これからポストシーズンに向けて緊張感が高まる状況で急に試合がなくなったことで、選手たちはモチベーションを向ける先を失い、気落ちしているに違いない。特に、今シーズンに調子を上げていた選手はなおさらだ。ここではプレータイムを指標として、今シーズンに大きなステップアップを見せていた選手のパフォーマンスを振り返る。
役割が明確になったことで自信を取り戻す
今シーズンを迎えるにあたり、横浜ビー・コルセアーズはこれまでに主力を務めたベテランを一挙に放出して若返りを図った。そこでチャンスをつかんだのが橋本尚明だ。
富山グラウジーズから移籍してきた昨シーズンは51試合に出場したが起用法が定まらず、平均プレータイム11.5分で2.7得点、0.7リバウンド、0.8アシストと苦しんだ。橋本自身も「2、3分しか出られない試合が多く、ほとんど結果も残せず、チームとも噛み合わない状況でした」と昨シーズン終了後に語っていた。
今シーズンの横浜は『チーム全員で守る、走る』というテーマを掲げ、ディフェンスに重きを置いた。橋本自身もディフェンスには自信を持っていて「相手のポイントガードには自分が付きたい」と直訴したほどだ。
橋本はゲーム序盤からプレッシャーディフェンスを仕掛け、相手にオフェンスのリズムを作らせなかった。そんな橋本のプレーはディフェンスを重視するチームに噛み合い、平均プレータイムは20.3分とほぼ倍増した。それに伴い、6.1得点、1.6リバウンド、1.3アシストとスタッツも軒並み倍増している。
橋本自身も「昨シーズンは本当に苦しかったんですけど、今は役割がしっかりしています。ディフェンスからチームに流れを持ってきたり、アグレッシブなプレーをしてチームにエナジーを与えることが仕事」と、自分の仕事が明確になったことで迷いも吹っ切れた。そしてどんな状況でもリバウンドやルーズボールなどのハッスルプレーでチームに勢いを与え、何度も試合の悪い流れを断ち切ってきた。
オフェンス面でも生原秀将とともに走るバスケット、そして流動的なチームオフェンスを組み立てる起点として存在感を発揮した。昨シーズンは59試合で合計39アシストだったが、今シーズンは30試合の出場で40アシストとすでに昨シーズンを上回った。
横浜はこれまで指揮を務めたトーマス・ウィスマンを解任し、2月からは福田将吾をヘッドコーチに据えた。福田ヘッドコーチが指揮を執ってからも負け越してはいるが、地区上位チームから勝ち星を奪うなど、タイムシェアとディフェンスが噛み合った時には軽視できない存在となった。
チームとしてもこれからという時にシーズン終了を迎えたことは心残りだろう。それでも役割が明確になり自信を取り戻した橋本は、来シーズンも彼らしいエナジー溢れるプレーで仲間を鼓舞し、チームに欠かせない存在になるはずだ。