文=丸山素行 写真=小永吉陽子

常田耕平はベンチで気づく「自分はキャプテンだった」

ウインターカップ初日、正智深谷vs県立福島南の対戦は、オフェンスリバウンドと速攻で上回った正智深谷が87-66で勝利した。両チームには、ともにU-18代表である常田耕平(正智深谷)と半澤凌太(県立福島南)がそれぞれエースでキャプテンを務めるという共通点がある。互いに相手を意識するのは当然。その部分が勝敗に大きく影響した。

「半澤はU-18でもエースというイメージで目立っていた選手です。途中まで接戦になってしまったのは、自分が半澤を意識しすぎて、自分のプレーを見失っていた部分があったからです」と常田は言う。

成田靖コーチも「常田は真面目な選手ので、半澤と戦おうとするんですよ。『半澤、半澤』と意識して点を取りに行こうとしていたので、そうではなく、チームのシチュエーションで点を取りに行けと言いました」とライバルへの過剰な意識を感じ取っていた。

この試合のターニングポイントとなったのは、常田が第1クォーターで2つのファウルを犯し、第2クォーターを全休したことだ。常田は言う。「ベンチに下げられて外から中のプレーヤーたちを見て、『自分はキャプテンだったな』と思い出しました」

「エースは点を取ったり、流れを変えたりするのが役目だと思います。でも僕はこのチームのキャプテンなので、プレー中に声を出すことだったり、仲間を盛り上げることだったり、自分が目立たなくても周りがいいプレーをしていれば、それはキャプテンの仕事なので、それを思い出しました」

コートに戻った常田はエースとして自分で得点を狙うのではなく、キャプテンとしてチームをまとめた。チームの力を最も引き出すためのプレーを選択し、潤滑油となった。その結果、後半で7得点2リバウンド3アシストを記録したスタッツ以上の存在感を放ち、チームを勝利に導いた。

正智深谷の次なる相手は前年度王者の福岡第一。「福岡第一は先を見て『大濠を倒す』と言っているので、そういう言葉を聞くと悔しいです。でも自分たちもメインコートを目指しているし、倒せる力があると一人ひとり自覚しています。今まで『正智深谷は良いゲームをしたね』と言われることばかりなので、良いゲームで終わらず、『正智が勝ったね』と言われるようなゲームをしたいです」と常田は意気込んだ。

キャプテンとしての『気づき』を得て、階段を一つ上った常田のパフォーマンスに期待したい。