大阪薫英女学院の3年生、森岡奈菜未と福田希望は、決勝進出を果たした昨年のウインターカップでも先発を務めていた。「自分たちの代で、今度こそ全国制覇を」との思いは強いが、それと同時に高校バスケの総決算となる大会に向けて、この3年間の出来事を噛み締めながら準備している。安藤香織監督が「精神的に弱く、モタモタする」と言いながらも、「チームメートや応援してくれる人のためにやれる子たち」と表現するチームは、ウインターカップでどんなパフォーマンスを見せてくれるのだろうか。
「チームの中で声を掛け合うことを意識しています」
──まずは2人の自己紹介をお願いします。
森岡 キャプテンの森岡奈菜未です。岡山の就実中の出身で、U-17の日本代表と、高1と高2で国体に選ばれました。得意なプレーはペイント内でのポストアップから得点を取ることです。
福田 京都の西ノ京中出身、副キャプテンの福田希望です。京都の選抜チームに3年生で入って、キャプテンをしていました。高校では2年生の時に国体メンバーに選ばれています。得意なプレーは3ポイントシュートで、この前のウインターカップ予選の決勝では7本決めて34点取りました。
森岡 すごかったんです。前半まで競っていて、ハーフタイムに一人ひとりの得点とファウル数の場内アナウンスを聞いていて、自分は6得点で「後半頑張らないと」と思っていたら、次に「福田希望、18点」って。前半も良いところで4本決めてて、後半も苦しかったところで決めてくれました。ここぞの時にやってくれます。準決勝は当たらなかったけど(笑)。
福田 準決勝は本当に自分のプレーができなくてすごく反省して……試合が終わった途端にみんなから「明日は入るから!」って、1年生や2年生にもすごく言われて、明日は自信を持つしかないなって思ったんです。それで吹っ切れたのが良かったです。
──それでは、お互いをどう見ているか、直してほしいところも教えてください。
福田 チームの中で一番気が利きます。でも、大雑把なところは直してほしいです(笑)。
森岡 確かに「だいたいこんな感じかな」とやってしまいます。希望は真面目で、すごくビデオを見て研究しているし勉強も頑張るんですけど、やりながら絶対寝る(笑)。私はバババっと終わらせてすぐ寝るんですが、時々遅くにミーティング室に降りていくと1人で爆睡してて。
福田 夜中に目が覚めて「ヤバい」みたいなことがよくあります。たまに朝になっていて、ビデオも開いたままで充電が切れていて……。
──キャプテンと副キャプテンは、どんな形でチームをまとめていますか?
森岡 私はあまり人を怒ることが得意じゃなく、怒るというよりかは話をするという感じです。もともと私はみんなとめっちゃ仲が良いわけではなくて、希望とずっと一緒にいるわけでもなくて。ウチには『The 大阪』みたいな個性的なメンバーが多くて、みんなが面白いことを言って盛り上がっても私は隅っこで見てる感じです。でもそれではダメなので、3年生になってからはその人の様子やプレーから感じたことでコミュニケーションを取れるようになってきました。
福田 このチームは一人ひとりの役割がはっきりしていて、シューターの自分が3ポイントシュートを打たなかったり、センターが外に出て一人でやろうとしたり、自分の仕事じゃないことをやるとリズムが狂います。一人ひとりが役割を理解すれば、全員が完璧でなくても共通理解の中でパス一つ、シュート、リバウンドもうまくいきます。そうやってチームの中で声を掛け合うことを今はすごく意識しています。
「構えることなくチャレンジャーとして戦いたい」
──ここまでの3年間でいろいろな経験をして選手として成長してきたと思います。これまでで一番悔しかった経験は何か、教えてください。
森岡 私は1年の頃から試合に出させてもらって、インターハイにも出たしウインターカップ予選で負けた時も出ています。「自分がもっとできたら勝てたのかな」と思うことが多くて、一番印象に残っているのは去年のウインターカップ決勝です。留学生相手に何もできませんでした。止めることもできないし、自分が得点を取り返すこともできなくて、その差で負けたと思っています。インターハイでも5試合中4試合は留学生がいたし、「自分が負けさせてしまった」という悔しさが3年間でたくさんあります。そのためにもこの1年間、留学生とどう戦うかをずっと意識してきました。
福田 私は全中にも出ていなくて、薫英に来ること自体が未知の世界、チャレンジでした。2年生になって試合に出るようになり、やっぱり記憶に残っているのがインターハイの四日市商業戦、最後に私がシュートを落として負けた試合です。
──悔しかった思い、キツい経験をしながら、3年間で選手としてどう成長しましたか?
森岡 私はもともとも高校でもバスケを続けようと思っていなかったぐらいで、中学生の時は留学生と当たったこともなかったし、相手は大きいし当たるのも嫌だったから、他の選手にマークしてほしいと思っていたんですけど、U18で意識が変わりました。何回も試合で使ってもらって、前より守れたらめっちゃうれしいし、もっと頑張らないといけないと思って。今は留学生とのマッチアップでも別に嫌だとは思わないです。逆に今は希望ぐらいの身長の選手に私がやられたら嫌だと思うプレーを、留学生相手にやればいいだけだって思っています。
福田 私は3ポイントシュートが得意なんですけど、最初はシューターになるイメージは全くなくて、ガードとして入って来ました。今は2センターでやっていて、そこに相手が寄った時に外から3ポイントシュートを決める場面が多くて、それを自分の武器にしようと磨き始めました。でも、それまでは先輩たちに作ってもらって最後に決めるプレーが多かったので、新チームになって先輩たちがいなくなると自分の武器が分からなくなってしまって、みんなにすごく迷惑をかけました。それでも2年生まではあまりやっていなかった外からのドライブで得点できるようになりました。大事なところでドライブで攻められるのはすごく大きいと思います。
森岡 希望がいてくれるおかげで、私はめっちゃプレーしやすいんです。私のインサイドにディフェンスが寄った時、少々悪いパスを出しても希望が決めてくれると思うと、気持ち的に楽。だからプレーする前に希望の位置だけは確認してます(笑)。
福田 確かにめっちゃ目ぇ合うわ(笑)。パスから「打って」という気持ちが伝わる(笑)。
──いよいよウインターカップですが、昨年は準優勝でプレッシャーは感じないですか?
福田 特に感じません。決して能力があるとか身長が高いわけじゃないので、自分たちが構えるのではなくチャレンジャーとして戦っていきたいです。ここまでは大事なところで2年生が頑張ってきて、3年生としては情けないところばかり見せているので、このウインターでは3年生が覚悟を持ってやりたいです。
森岡 2年生にはめっちゃ助けられてます。インターハイでも初戦で私たちが固かった時に2年生が思い切ってプレーして、私たちは最後になってちょっとずつ調子を上げられたし。自分たちがダメでも飲まれることなく、「自分らは自分ら」と頑張ってくれます。2年生は後輩だけど、尊敬できるし信頼しています。
「恩返しするためにも、すべてを出し切りたい」
──個人的に負けたくない相手、対戦したい相手を挙げるとすれば?
森岡 小さいカップ戦とかを除けば岐阜女子にはずっと負けていて、惜しいところまで行くけど最後にやられちゃうので。同じポジションではエスタ(イベ・エスタ・チカンソ)には負けたくないです。
福田 私も岐阜女子で、林真帆さん。インターハイではフェイスガードしたんですけど、それでもスクリーンを使って攻めて行くところは勉強させてもらいました。同じポジションでもあるし、ウインターカップでは絶対に負けたくないと思います。桜花学園にも全関西で負けているし、ジャパンの選手に負けたくないという気持ちもあります。
──最後の大会の前ではありますが、2人とも県外から薫英に来て良かったですか?
森岡 はい。練習以外のところでもすごくお世話になっています。実家に帰れるオフの日も、私みたいな遠方から来ている人は簡単には帰れないんですが、その時にアシスタントコーチの長渡さんとか安藤先生がタコパしようとかご飯行こうとか誘ってくれて、練習でしんどいこともあるけど、楽しいこともたくさんあります。人間的にもここでだいぶ成長できたと思っています。
福田 薫英は大学生と寮や練習場が同じなので、先輩たちからすごく刺激をもらってきました。長渡さんは大学のコーチでもあるんですけど、寮の晩御飯とかまでサポートしてくださって、ずっとお世話になっているので。
森岡 先輩たちはみんなすごく意識が高いし、お手本になる人ばかりです。私は薫英に来てなかったらバスケをやってなかったかもしれないぐらいなので、バスケの面はもちろん、人間性の部分でもすごくお世話になりました。ここに来た時はバスケがめっちゃ好きなわけではなかったんですが、結局は切っても切れないものになりました。
──それでは最後に、ウインターカップへの抱負をお願いします。
福田 試合に出ているメンバーはもちろん全力でやるし、ベンチにいる選手もメンバー外でスタンドから応援する人も、何一つ文句を言わず全力でやってくれています。そういう全員の頑張りは見えないかもしれないですけど、それだけ試合に出る5人が責任を果たそうとコートに立ちます。責任を持っている分、固くなることもあるかもしれないけど、昨年もウインターカップもそうだったし、試合の中で自分たちが成長してきたと感じているので、その積み重ねが最後に日本一に繋がると思っています。今回のウインターカップでも一つひとつ成長していきたいです。
森岡 私が1年生の時にウインターに行けなかった3年生の人たちのためにも、去年に決勝の舞台を踏ませてくれた1つ上の先輩に恩返しするためにも、ラストのウインターでは自分たちのバスケをすべて出し切って、最後は自分がチームを勝たせて、最高の結果で終わりたいとめっちゃ思っています。