文=鈴木健一郎 写真=FIBA.com

ラマスコーチの指示を受けてよみがえった日本

アジアカップの『ベスト8決定戦』、グループDを2位で通過した日本はグループCで3位の韓国と対戦。68-81で敗れて大会を去ることになった。

日本の先発は篠山竜青、田中大貴、古川孝敏、アイラ・ブラウン、太田敦也。立ち上がりは日本のペース。先制こそ許したものの、スクリーンプレーであっさりとフリーになったアイラが3ポイントシュートを2本決める。韓国が強引なアリウープを狙って失敗する一方で田中が強引なミドルジャンパーを沈め、さらには太田のスクリーンを受けてフリーになった古川もジャンプシュートを確実に決めて11-4、まずは日本が先手を取った。

ところがこの試合の韓国は強烈な粘りを発揮する。すぐにディフェンスを立て直し、簡単にフリーにさせる穴をなくすと、アイラがベンチに下がったタイミングでゾーンディフェンスで日本の勢いを止め、3連続3ポイントシュートを含む11-0のランで逆転して見せた。

また、古川が足を痛めてしまい第2クォーター以降はプレーできなかったのも痛手に。第2クォーターになって張本天傑が相手のフィジカルなディフェンスに真っ向勝負を挑み、強引に仕掛けてファウルを取ってつなぐが、韓国の攻めを止められず苦しい時間帯が続く。

残り2分45秒で31-37と突き放されかかったところで日本は2回目のタイムアウト。ここでヘッドコーチのフリオ・ラマスが外を回すだけの消極的な攻めに喝を入れると、日本の『タッチ・ザ・ペイント』の攻めが復活。ペイント内までしっかりアタックして相手ディフェンスを振り回してフリーの状態を作り出してのジャンプシュートを田中が、比江島慎が、富樫勇樹が次々に決めて10-0のランで逆転に成功する。

優位に立ちながら突き放せない日本、屈しない韓国

41-39とリードして前半を折り返した日本だが、アイラや田中を中心に個人技主体の見栄えするバスケットを展開していたものの、韓国は対照的に実利優先のバスケに徹していた。太田とアイラが守る日本のゴール下を攻略できないと見るや、一瞬のフリーを見逃さず外角シュートを打ち続けた。前半を終えて2点シュートは日本が21本中10本、韓国が20本中11本とほぼ同じだが、3ポイントシュートとなると成功数は同じ5本でも、試投数は日本の6に対し韓国が16と、とにかく打ち続ける姿勢でシュートタッチが悪い中でも踏みとどまった。

迎えた後半、積極性を取り戻した日本は果敢に攻め、韓国はファウルで止めるしかない展開になり、攻守に効いていた200cmのオ・セグンが個人ファウル4つでベンチに下がる羽目に。49-49で迎えた残り3分48秒、ドライブで切り込んだ富樫が驚異の360°レイアップを沈める。直後にディフェンスリバウンドを拾った富樫からアイラへの豪快アリウープが決まる。たまらず韓国がタイムアウトを取るも、その直後に田中のアシストを受けた張本がフリーの3ポイントシュートを沈めて56-49と突き放した。

この間、前半にやられた外角シュートは足を使ってプレッシャーをかけて打つ機会を与えず、インサイドはアイラがフィジカルな守備でタフショットを強い、韓国の得点を止めていた。だが、ここで屈しないのが今日の韓国であり、そのまま突き放せないのが今日の日本だった。第3クォーター最後の2分間、オ・セグンに代わり起点となったイ・ジョンヒョンを止められず、2連続バスケット・カウントを含む0-8のランを浴び、56-57と逆転されて第3クォーターを終える。

足が止まった終盤、無理なパスでターンオーバーを連発

そして勝負の最終クォーターを迎えたところで、日本はまさかのブラックアウト。特定の選手にプレータイムが集中し、韓国の選手のフィジカルなプレーに対応していたため疲労が来るのが早かったこともある。また試合の中でアジャストする能力で韓国に上回られ、勝負どころで常に後手に回っていた。韓国は試合を通じ、攻めも守りも『あの手この手』を駆使して日本に流れが傾きそうな場面を何とか乗り切ってきた。そして第4クォーターの勝負どころで、その力をフルに発揮した。

1点差で始まったはずが、5分半で1-15のランを浴びる。ラマスコーチはこの間に3度のタイムアウトを取り、何とか流れを取り戻そうとするも、打つ手はことごとく韓国に読まれ、逆手に取られた。ゾーンとマンツーマンを駆使する韓国ディフェンスを突破できず、無理なパスをディナイに引っ掛けては速攻を許す。相手のピック&ロールへの対応が遅く、ワイドオープンを簡単に許してしまう。富樫と篠山竜青のツーガードという秘策も効果を発揮せず。特にアイラの足が止まってしまうと、攻守ともに打つ手なしの状況に陥ってしまった。

結局、第3クォーターまでの奮闘が嘘のような終盤の末、68-81で敗戦。アジアのベスト8進出は果たせず、大会を去ることになった。アイラや富樫、比江島が卓越した個人技を見せた日本とは対照的に、韓国は派手さを欠くものの劣勢にもしぶとく耐え、あの手この手で日本を揺さぶってきた。日本の出来は決して悪くなかったが、良い時間帯にも細かなミスが多く、そこで韓国に付け入る隙を与えてしまった。国際大会を戦う上での経験の差、精神力の差が勝敗を分けた一戦だった。

悔やむアイラ「18本のターンオーバーが最大の敗因」

ヘッドコーチのフリオ・ラマスが着任したのが大会の数週間前。言い訳にはならないが、チームとしての成熟度の差は否めなかった。ラマスコーチは「最初の28分は良い試合運びができていました」と認めつつも、終盤をミスでの自滅と見る。「残りの12分間はミスが増えたとともに、それが連続で起こってしまいました。ターンオーバーやシュートミスからカウンターで得点を取られるケースが多くなり、その時点で韓国の方に試合の主導権を渡してしまいました」

しかし、11月から始まるワールドカップ予選に向けて、見るべき内容があったのもまた確か。ラマスは言う。「今大会中までは選手のことを知り尽くし、私のことを知ってもらうためにも重要な期間でした。11月のアジア予選で勝つためにもまた練習をして、しっかり対策を練って準備をしていきたいです」

アイラ・ブラウンは序盤の好調を「これまでは緊張してしまっていましたが、この試合は楽しもうと思って入ったこと」と説明する。もっとも、それを40分間続けることはできなかった。「18本のターンオーバーをしてしまったのが最大の敗因です。18 本もしてしまうと、やっぱり勝つことはできません。それ以外のプレイが良かっただけに悔しいです」とミスを悔やんだ。

キャプテンを務めた富樫にとっては、相手の高さに苦しんだ試合でもあり、スピードとスキルでそれを上回ることもできると証明した試合となった。大会を通じて目立ったパフォーマンスを見せたが、それでもここで大会を去るのは不本意だろう。「新しくラマスヘッドコーチになったばかりであり、これからワールドカップ出場を目指し、アジア予選が続きます。そのための準備の大会であったのも間違いないですし、この4試合をしっかりと経験につなげて、ワールドカップ予選に向かいたいです」と語る。

この4試合を糧としてチームの成熟度をどこまで高められるか。アジアカップは終わったが、2020に向けた戦いは続いていく。