ディフェンスとリバウンドから栃木が強みを発揮する
チャンピオンシップの準々決勝は栃木ブレックス、シーホース三河ともに連勝による勝ち上がり。東地区1位の栃木は千葉ジェッツを、西地区1位の三河は琉球ゴールデンキングスを前週に下している。会場はブレックスアリーナ宇都宮。両チームともに外国籍選手のオン・ザ・コート数は「1-2-1-2」で、20日のセミファイナル初戦に臨んだ。
第1クォーターは栃木がオープンの選手がシュートを放つ形を作りつつも、決め切れない展開だ。ただ田臥勇太は冷静に流れを見ていた。彼はこう口にする。「序盤にシュートが入らないことも、僕自身は全く気にしていなかった。打つかどうかが大事なので、そこは変わらず打ち続けろという感じでした」
栃木のヘッドコーチ、トーマス・ウイスマンはこう振り返る。「試合の入りもいいシュートは打てていたが、ペースという面では三河だった。ただそこから走って速い展開にもっていけたことで、流れを作ることができた」
第1クォーターは栃木が16-17と微差で落とした。試合のペースもややスローで、三河にとって好ましい展開。しかし第2クォーターに入ると、タフなディフェンス、リバウンドから速攻に持ち込む栃木の強みが出始める。
栃木は第2クォーター残り9分35秒に渡邉裕規の3ポイントシュートでこの試合初のリードを奪うと、そこからジェフ・ギブスが10分間で9得点の大活躍。残り1分25秒、58秒には田臥勇太が連続スティールに成功し、三河に攻守でダメージを与える。栃木が逆転から一気にリードを広げて、41-29で前半を折り返した。
三河の鈴木貴美一ヘッドコーチはこう悔いる。「ディフェンスが非常に悪かった。ヘルプに行かなくていいところに行って、ボールをさばかれてノーマークになったケースが多かった。田臥がギャンブルしてボールを取りに来るところにやられた。栃木の良いところをすべて出された」
この試合の栃木は27のアシストを記録。対する三河は11に留まった。栃木はボールをシェアしつつ相手が人に食い付いて空けたスペースを的確に突き、ポイントにつなげていた。
リバウンドを制したギブスが試合を制す
また、リバウンド争いも栃木優勢の遠因になっていた。レギュラーシーズンのスタッツを見ると、トータルリバウンドは栃木が1位で三河は2位。リバウンドの主導権争いがこの試合の大きな争点だった。
栃木は第1クォーターの途中からコートに入ったギブスが、そこで大きな働きを見せる。ギブスが守備でマッチアップした相手はアイザック・バッツ。ギブスも188cm110kgの巨漢だが、バッツは208cm133kgというB1最大のビッグマンだ。バッツは特にオフェンスリバウンドに強みがあり、今季はB1最多の1試合平均「5.2個」を記録している。
しかしギブスはボディコンタクトでバッツをペイントエリアから押し出し、リバウンドでほとんど仕事をさせなかった。バッツはこの試合のオフェンスリバウンドが1本、トータルでも3本という『らしくない』結果に終わっている。
ギブスはこう説明する。「バッツ選手より自分の方が身長は低いけれど、逆に重心が低くなる。リバウンドでカギになるのは重心を下げることと、ペイントエリア内の深いところに入らせないこと。それをしっかりできた」三河はリバウンドのテコ入れを図って、桜木ジェイアールのプレータイムを減らした。特にオン・ザ・コート数が「2」だった第2クォーター、第4クォーターは桜木がほとんどコートに立っていない。優れたポストプレイヤーである彼の不在により、オフェンス面で比江島慎や金丸晃輔が生きなくなっていた。
桜木ジェイアールを筆頭にキーマンを抑える作戦が的中
第3クォーターは23-23のイーブンで、点差は変わらず。栃木はギブスに加えてライアン・ロシター、竹内公輔、遠藤祐亮の計4人が第3クォーターで2桁得点に到達。第2クォーターに引き続き、ボールをシェアしてオープンな選手を作る攻撃の狙いも実現できていた。
三河は桜木、比江島、金丸の強みを封じられていた中で、ギャビン・エドワーズに得点が集中する。この試合は26得点を挙げた彼がポイントリーダーだった。ただそんな現象を竹内はこう説明する。
「ギャビンが26点を取るというのは、三河のバスケットではないと思います。比江島とか金丸とジェイアールの3人が気持ち良くプレーしたら三河のペースになってしまうので、その3人を抑えるような練習をしてきた。先週の千葉戦もそうですけれど、向こうの得点源に気持ち良くプレーさせないというのが狙いだった」
栃木はキーマンを抑えることで、相手の得点をトータルではしっかり抑えていた。
三河は比江島が11得点、金丸が9得点と数字を残せなかった。比江島はこう口にする。「タイトに付いてくるので狂わされたことは事実。最近西地区のチームとしかやっていない。東地区チャンピオン(のようなレベルが高い相手)とできる環境にはなかった」
一方で今日の展開が『苦い薬』として効く部分もあるだろう。比江島は言う。「今日こういうタイトに付いてくるのを体感できたので、今日と一緒の展開になるとは思わない」
栃木は第4クォーターに入っても残り9分43秒にロシター、残り9分21秒に須田侑太郎と連続得点。68-52と大きく突き放す。終盤には生原秀将、前村雄大とレギュラーシーズンではプレータイムに恵まれなかった選手も投入。ベンチ入り12名を全員コートに立たせる、先を見据えた選手起用をする余裕があった。
栃木は残り1分12秒に生原が3ポイントシュートを決めて83-63。点差をこの日最大の「20」まで広げる。そこから三河が若干戻したものの、最終的には栃木が83-68と完勝した。
明日の第2戦は12時5分から。勝者が27日のファイナルで川崎ブレイブサンダースと対戦する。