「これからは動きのキレを戻していく段階」
1月4日、広島ドラゴンフライズはアウェーでのアルバルク東京戦に72-95で敗れ、87-79で勝利した前日に続く連勝を逃した。
試合は互角の立ち上がりとなったが、第2クォーターに入ると広島は6本中4本の長距離砲を射抜かれA東京にリードを許す。さらに後半に入ると、この日32得点を挙げたA東京のマーカス・フォスターに第3クォーターだけで3ポイントシュート4本成功の14得点を許すなど、勢いに乗る相手のオフェンスを食い止めることができない。広島はインサイドアタックに活路を見出し、フリースローを30本獲得したが、17本のみの成功に終わりA東京にプレッシャーを与えられない。こうして、オフェンスの遂行力で大きな差をつけられ大敗を喫した。
後味の悪い形で、これから3週間のバイウィークに入ることになった広島だが、明るい話題は年末に復帰した寺嶋良の存在だ。この試合でも14分24秒の出場と、ローテーションの一員としてコートに立った。
2021-22シーズンに京都ハンナリーズから広島へ加入した寺嶋は、京都時代の同僚であるジュリアン・マブンガが『フラッシュ』と名付ける抜群のスピードを武器にディフェンスを切り崩して得点とアシストを量産。平均2桁得点を挙げるリーグ屈指のポイントガードとして広島をけん引していた。しかし、2024年3月に右膝の負傷で戦線を離脱。当初は全治8週間から10週間と見られていたが、経過が思わしくなく5月に再手術を実施し、チームのBリーグ制覇をベンチで見守った。その後、長いリハビリを経て2025年1月に復帰を果たすが、昨シーズン終了後に再び右膝の手術を行っていた。
12月24日の滋賀レイクス戦が今シーズン初の試合となった寺嶋は、現在の状況をこう語る。「プレーしていて痛みはほぼないです。手術前は痛みがあった状態でバスケをしていたので、これからは動きのキレを戻していく段階だと思います。スピードを出した時に止まりきれずに身体が流れてしまう部分があります。それは無意識に膝をかばってしまっているかもしれないです。ただ、これも少しずつ減ってきている感覚はあります」
このように手応えを感じる寺嶋は、「ケガに対する恐怖心はないです」とメンタル面の不安もないという。しかし、怖さがなくなかったことを逆に警戒している。「前回ケガをした時は恐怖がなくなってきた時、膝が強度に耐えられないスピードを出してしまって、痛くなったことがありました。だからこそ、膝の感覚についてはしっかりと向き合っていかないといけないです」

「日本人選手から始まる新しいオフェンスを作っていきたい」
当然、今の寺嶋は本来のプレーを取り戻している最中だ。完全復活まで時間がかかる中、自身の役割について「ポイントガードとして試合をコントロールする中、個人的にもディフェンス面で『もっと頑張れよ』という部分はあると感じています。そして、今までやってきた得点を取ることも表現していきたいです」と語る。
今シーズンの広島はドウェイン・エバンス、クリストファー・スミス、コフィ・コーバーンに、帰化枠のメイヨ ニックの強力カルテットが生み出す爆発力がチームの最大の武器となっている。だが、これから勝ち星を増やしていくには、日本人選手がオフェンスでもっと存在感を発揮することも欠かせない。寺嶋は言う。「外国人選手が止められてしまった時、日本人選手が新しい切り口を作って少しでもチームに勢いをつけることも必要です。停滞した時、日本人選手から始まる新しいオフェンスを作っていきたい。それが僕の役割だと思います」
朝山正悟ヘッドコーチも、クリエイターとしての寺嶋に大きな期待を寄せている。「これだけブランクが長いと、復帰してすぐに本来のプレーとは当然行かない。長い目でやっていかないといけないです。彼はケガをする前、コートで圧倒的な存在感を示していました。上位チームには相手ディフェンスの注意をひきつける吸引力のある日本人選手がいます。寺嶋はそれを出せるリーグ全体でも数少ない選手だと思っています。まだまだ時間はかかると思いますが、ここから一歩ずつステップアップしてほしいです」
指揮官が言うように、完全復活まで少なからず時間は必要だろう。それでも、寺嶋は復帰できたことへの純粋な喜びを強調する。「3回目の手術をした時、『もうコートに戻れないんじゃないか』と思っていた時期はありました。今、こうやってコートに立てることが奇跡的だと思っていますし、本当に幸せな気持ちでバスケをしています」
簡単なことではなく外野が軽々しく言うべきではないが、寺嶋が本来の動きを取り戻し、閃光のような圧倒的なスピードでコートを暴れ回れる姿が再び見られることを願ってやまない。
