チームメートへの前半の苛立ちが、後半には信頼へ
感情を表に出さず「笑わない男」とすら呼ばれるカワイ・レナード。感情表現が豊かなウォリアーズに対しても淡々と、そして確実に得点を奪い、GAME4も36点の大活躍でチームに勝利をもたらしました。
しかし、そのプレー内容は時に感情的な一面も見せています。特に第1クォーターでチームメートが13本のシュートを打ちながら1本しか決められないのをみると、1人で次々とシュートを決めていき、ラプターズの17点のうち14点を奪ってチームを牽引しました。
第2クォーターになってもシュートが決まらないラプターズ。前半、レナード以外の選手が打った12本の3ポイントシュートはすべて決まらず、次第に打つことすら躊躇し、ボールを回しすぎてミスになるシーンが増えていきます。業を煮やしたかのようにレナードも3人に囲まれてもパスを出さず、リングに背を向けて放り投げるようなシュートを打つシーンも出てきました。
普段は追い込まれても身体の強さを生かしてバランスをとり、しっかりとしたフォームでのジャンプシュートを打つレナードですが、第2クォーターはゴール下で囲まれてオフバランスになり、崩れながら放つシュートが増えてしまい、1点も奪えませんでした。レナードらしくないシュートは、シュートが決まらないチームメートへの不満を示すかのような、感情的なプレーにも映りました。
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Bucket. pic.twitter.com/ODnnVm2Sjx— Toronto Raptors (@Raptors) 2019年6月8日
後半が始まると、今度はインサイドで囲まれすぎた前半の自分への鬱憤をはらすかのように3ポイントシュートを連発し逆転すると、チームメートも落ち着きを取り戻し、しっかりとしたパス回しから強気に打っていき、5本の3ポイントシュートを成功させ、バランスの取れたオフェンスに変化しました。チームメートが決めたことにより、パスを回すようになったレナード。2桁ビハインドになったウォリアーズがダブルチームを仕掛けてくると、簡単にパスを出して自身はマークを引き付ける役割に徹するようになります。
第4クォーターは3ポイントシュートを2本しか打たず、前半とは違いチームメートを信じるプレーを続けました。表情から感情を読み取りづらいレナードですが、前半と後半で見せたプレーの違いは、チームメートへの苛立ちと信頼を感じさせるものでした。
また、ラプターズはチームとしても感情面をコントロールする事を意識させる一面がありました。GAME2ではクレイ・トンプソンが次々と3ポイントシュートを決めたことでマッチアップをレナードに変更しましたが、ヘルプディフェンスを担当していたレナードがシューターのトンプソンを「何としてでも止めよう」と、追い掛け回したことで、チームとしてのディフェンスが崩れ、逆にイージーシュートを増やすことに繋がってしまいました。
GAME4でも6本の3ポイントシュートをトンプソンに決められますが、マッチアップは変えずチームとしてのディフェンスバランスを重視し、それがこのシリーズ最少失点の、92点に抑えたことに繋がっています。感情的には「あまりにも決めてくるトンプソン」を優先したかったでしょうが、GAME2の失敗もあってゲームプランを崩しませんでした。
笑わない男が見せた一瞬の感情的なプレー。それだけ苦しかった前半と、冷静なチームプレーでリードを奪っていった後半。お互いにシュートが決まらず重い雰囲気になったGAME4を制したラプターズが、初優勝まであと1勝に迫りました。