野溝利一

昨シーズン、終盤の追い上げでプレーオフまであと一歩と迫った神戸ストークス。その躍進の一因となったのが、昨年末に特別指定選手としてチームに加わった野溝利一だった。ライジングゼファー福岡戦で9本の3ポイントシュートを含む32得点を記録。『GLION ARENA KOBE』のこけら落とし試合では、起死回生のクラッチシュートを決めるなどチームの勝利に貢献した。このオフ、同ポジションに実力者がチームに加わったが、リーグ最小兵160cmの野溝はチャレンジャーの姿勢を崩さない。昨シーズンの振り返りと、ルーキーシーズンの展望を聞いた。

「やり返せるのはプロの舞台しかない」

──昨シーズンは年明けから30試合に出場しました。Bリーグを初めて経験しての感触を教えてください。

最初の数試合は、自分の強みを生かすことができませんでした。それはスキルや身長の問題ではなく、緊張などメンタルの影響でした。試合に出ていくうちに「やれる」という感触が生まれ、3ポイントやクラッチシュートなど決めることができ、「Bリーグでも通用する」と思えたシーズンでした。

──メンタルが変わっていったきっかけはありますか?

プレドラッグ・クルニッチ元ヘッドコーチからは「もっと自信を持ってやって良い」と言われていました。2月から東頭俊典さんがヘッドコーチを務めるようになってからも、シュートを打ち続けることやディフェンスのハッスルなどを評価してもらっていましたし、結果としてシュートが入ったので自信に繋がっていきました。

──加入時、チームは連敗が続いていましたが、そこから連勝で終盤の追い上げを見せました。アップダウンの激しいシーズンだったと思いますが、どのようにチームを見ていましたか?

正直、最初は成績が厳しかったので、チームの雰囲気はあまり良くなかったですが、ヘッドコーチが交代しアイク(アイザック・バッツ)が入ってきて、環境面での変化があったことで状況が変わりました。東頭さんも「ここからでもプレーオフに出られる。B1に上がれる」とずっと言い続けてくれていたので、チームとして失いかけていた自信を取り戻して後半戦に臨めました。

──野溝選手は3月26日のライジングゼファー福岡戦で地区首位を相手に32点とり、勝利に貢献しました。あの試合はチームとしても個人としても自信に繋がりましたよね。

負けたらプレーオフ進出が厳しくなる状況だったので、絶対に勝たないといけない試合でした。相手にアジャストできたのも良かったですが、それ以上に気持ちで福岡に負けなかったのが大きかったです。福岡には前の対戦でボコボコにされましたが、悪いイメージを断ち切って臨めたので、チームとしての自信になりました。自分自身は、シュートが入り出したら止まらないのが強みだと思っていて、あの試合も最初にタッチが良いことがわかったので、打ち続けました。

──山梨学院大では2部に降格するなど悔しい思いをしましたし、その悔しさをバネにしてプレーしているのかなと想像していました。

自分はキャプテンだったのですが、チームの状況がなかなか難しくて責任をすごく感じていました。恩返しではないですけど、大学の仲間や応援してくれた人のために、自分がやり返せるのはプロの舞台しかなかったので、イチから戦うことを考えていましたね。

野溝利一

「オフボールの動きでも試合にからめる」

──プロの舞台を経験して、もっと伸ばしていく必要があると感じたことはありますか?

ポイントガードとしてのゲーム勘やコントロール力は自分の課題だと思います。経験がある寺園脩斗さんと笹倉怜寿さんが入ってきたので、しっかり教わり、盗めるものは盗みたいです。

──逆に手応えを感じたことは何でしょうか?

ディープスリーも含めて、3ポイントシュートは自分の強みなので、どこからでもどのタイミングでも決め切る力を発揮していきたいです。ディフェンスでは、高さがない分、平面で勝負していけるかなと。Bリーグはガードの大型化が進んでいるので、自分みたいな選手に足元でやられたら相手は嫌だと思うので、そこを強みにしていきたいですね。

──身長に関しては、ネガティブなものではなく強みに変えていると感じていましたが、自身ではどのように捉えていますか?

リングは高いところにあるので、 不利なこともありますが、小さい選手がコートを支配してるのが一番面白いです。NBAでもBリーグでもそういう選手はいるので、オフェンスでもディフェンスでも小さいからこそ相手の嫌がることができるかなと思います。

──新加入の日本人選手はB1でバリバリやっていた実力者ばかりで、チーム力が上がった印象です。楽しみですね。

練習から雰囲気がすごく良いし、新加入の選手を見ていると参考になり、良い刺激を受けています。同じポイントガードの脩斗さんと怜寿さんからはゲームコントロールやポイントガードとしての立ち振る舞い、どう表現して伝えているか色々と学ばせてもらっています。ただ学ぶだけじゃなくて、しっかりプレータイムを勝ち取りたいので、3ポイントシュートという武器を生かして2人と戦い、切磋琢磨していければいいなと思っています。

──3ポイントシュートで彼らとの違いを作っていく感じですね。

自分はオンボールだけでなく、オフボールの動きでも試合にからめると思います。大学時代はシューターみたいな動きをしてたこともあるので、オンボールにこだわらずに、オフボールでもチームの役割を遂行できるようにしていきたいです。

──今シーズンより川辺泰三ヘッドコーチが指揮をとりますが、どのような印象でしょうか?

まだまだ全部を理解してるわけじゃないですが、個人的にはワクワクするバスケットかなと思います。川辺さんが理想とするバスケットの中で、自分がどのような働きができるか楽しみです。すごく話しやすいので、分からない部分があればすぐにコミュニケーションをとっています。

──具体的にどのようなことを求められるでしょうか?

まずディフェンスではプレッシャー、フルコートで前から激しく当たることが自分に求められるので、体現していきたいです。オフェンスはまだ分からない部分もありますが、今は1番と2番どちらの動きもやっているので、シューターとしても役割があれば遂行できればと考えています。

野溝利一

「優勝から無縁なのでチャレンジしたい」

──少し毛色の違う質問になりますが、プレーシーズンマッチで9月23日に千葉ジェッツと対戦がありますよね。富樫勇樹選手とのマッチアップは楽しみにしているのかなと勝手に想像していました。

そうですね。ずっと映像で観てきた選手なので、マッチアップしたいです。さっき話したコートを支配できるスモールガードは、日本では河村勇輝選手と富樫選手だと思うので、その1人とマッチアップして自分がどれだけできるか楽しみですね。

──長野県出身ということで、2月の信州ブレイブウォリアーズとのアウェーゲームも心待ちにしているかと。昨シーズンは加入前に対戦が終わっていたので、プロとして地元でプレーできることも楽しみにしていますか?

自分は信州のユースチームに所属していて、ホワイトリング(信州のホームアリーナ)で練習もしていましたし、思い出がある場所なので長野県にも恩返ししたいです。長野県のバスケットを盛り上げることも自分の中の大きな目標なので、すごく楽しみにしています。

──B2優勝は当然の目標だと思いますが、チーム内で具体的に話している展望はありますか?

今シーズンは『B2優勝』『日々成長』『ウィニングカルチャー』の3つの目標があります。B2優勝やウィニングカルチャーは大事なことですが、個人としては日々成長することが一番大事だと思っています。どんどんチャレンジして、いろんなことを学んで吸収してやっていければなと。強いチームは常にハッスルするので、普段の練習からどれだけ競い合ってできるかが重要になってきます。 あと自分はずっと優勝からは無縁なので、今シーズンはチャレンジしたいですね。

──昨シーズン末に新ホームアリーナの『GLION ARENA KOBE』が開業し、今シーズンから本格稼働となります。どのようなバスケを見せていきたいですか?

今シーズンは、新しく観に来てくださる方もたくさんいると思うので、初めて来た人にもバスケットの面白さやストークスのバスケの良さを知ってもらえるように頑張ります。地域に根付いたクラブになり、神戸市はもちろん兵庫県全体をバスケットで盛り上げられるアリーナにしていきたいですね。

──最後に、応援してくださっている方に向けてメッセージをお願いします。

いつも神戸ストークスを応援していただき、ありがとうございます。これから60試合と長い戦いになりますが、その先の優勝に向けて全力でプレーするので、 是非GLION ARENA KOBEで応援してください。よろしくお願いします。