
22得点の活躍も、20分以下のプレータイムに留まる
バスケットボール男子日本代表は8月8日、『FIBA アジアカップ 2025』のグループフェーズ2試合目でイランと対戦。終盤までもつれる一進一退の展開となる中、勝負どころでの遂行力で劣り70-78と敗れた。
試合の立ち上がり、日本はオープンシュートを決め切れない。さらに大黒柱のジョシュ・ホーキンソンが第1クォーターだけで4ターンオーバーと、まさかのミス連発でオフェンスが停滞する。しかし、ディフェンスで我慢強くくらいついていくと、富永啓生が3ポイントシュートを爆発させ前半だけで17得点を挙げる活躍を見せて盛り返し、同点でハーフタイムを迎える。
後半に入っても試合は一進一退の攻防が続く。日本は、イランの持ち味であるゴール下への力強いドライブに対し、当たり負けすることなく身体を寄せ続けることでシュートミスを誘発するなど粘りのディフェンスで耐える。しかし、オフェンスでは、イランの激しいプレッシャーに逆に苦戦してしまう。3ポイントシュートの当たりがこなくなると、オフェンスのリズムをつかめなくなり、2ポイントシュートにも影響が出始め、24本中9本の成功に留まるなど精彩を欠いた。
試合はともにオフェンスが停滞し、ロースコアの展開で終盤に突入。だが、ここ一番の局面でオフバランスからのレイアップや、コーナースリーなどを決め切る勝負強さを見せたイランに対して、日本は残り2分19秒、個で打開していた頼みの綱の富永が痛恨のファウルアウトに。これで攻め手を失った日本は終盤にミスを繰り返し、グループリーグの大一番を落とした。
富永はこの試合、チームハイの22得点と活躍。たが、後半に限ればファウルトラブルによって出場機会が制限され5得点のみ。シュートタッチは絶好調だったが、最終的に19分56秒と試合の半分もコートに立てなかった。
今回のイラン戦で、富永は次のような強い思いを持って臨んでいた。「この試合の重要さはチーム、個人としてもすごく分かっていました。特に前回のアジアカップでイランに負けており、個人としてもリベンジを果たしたい思いがすごく強かったです」
だからこそ、ファウルアウトという結末に「最後、勝利できなかったことにプラスして、コートに立ち続けられなかった。チームにすごく迷惑をかけたと思いますし、ファウルマネジメントにはもっと気をつけないといけないです」と自分を責める。

「自分たちのやりたいバスケを貫いていきたい」
今大会の日本において、富永はエースシューターとしてトム・ホーバスヘッドコーチから全幅の信頼を寄せられている。初戦となったシリア戦の終了後、指揮官は「富永にシュートを打つなとは絶対に言わないです。打ちたいタイミングでシュートを打つために、彼は試合に出ています」と語っていた。
この期待に応え、イラン戦では序盤から積極的にシュートを打ち続けてチームを引っ張った。富永の活躍がなければ接戦に持ち込めなかったのは間違いない。しかし、最後に富永がコートにいなかったことは、勝敗を分ける大きな要因となった。
ファウルアウトでベンチに下がった後、富永はタオルを叩きつけ感情を露わにしていた。その時の心境をこう振り返る。「最後までコートに立てない、勝利に導かないといけないのにできなかった。そのことにムズムズした気持ちがありました」
また、今回のイランは世代交代の過渡期で前評判は決して高くなかった。だが、20歳のモハメド・アミニに24得点8リバウンド3スティール、24歳のシナ・バヘディには22得点と、相手の期待の若手を止められなかった。「イランが若返りをしていることで特に負けたくなかった。自分より若い選手がたくさんいるのに負けたことは悔しいです」と、富永の悔しさを増幅させる要因となった。
この敗戦で日本はグループフェーズ1位突破がほぼ不可能となったが、まだ大会は終わっておらず巻き返すチャンスは残っている。富永は今後に向け、こう意気込む。「今日の反省点として、相手の強みであるレイアップを止めなければいけないとわかっていた中で、たくさんやられてしまいました。次の試合は、相手のやりたいことを抑えて自分たちのやりたいバスケを貫いていきたいです」
日本のやりたいスタイルを貫くためには、富永が最後まで積極的にシュートを打ち続けることが欠かせない。この敗戦をさらなる飛躍への大きな糧としグループフェーズ最終戦、そして決勝トーナメントとより大暴れをしてもらいたい。