難航した買収劇の舞台裏とクラブ経営の新たなビジョン
MLBレジェンドの『A-Rod』ことアレックス・ロドリゲス、ウォルマートのeコマース戦略を主導した経営者であるマーク・ロア。この2人はティンバーウルブズとWNBAのミネソタ・リンクスの買収について、1994年からオーナーを務めるグレン・テイラーとの交渉を2021年にまとめた。
しかし、悪名高いテイラーは、すんなりと球団を手放さなかった。新型コロナウイルスのパンデミック下で合意した売却金額は15億ドル(約2300億円)だったが、その後にNBAを取り巻く経営環境は劇的に改善し、セルティックスは61億ドル(約9200億円)で、レイカーズは100億ドル(約1兆5000億円)で売却されるに至る。格安でウルブズを売る契約を反故にしようとするテイラーに対し、ロアとA-Rodは法廷で争った。
今年2月に裁定委員会はロアとA-Rodのウルブズ購入を認める裁定を下し、必要な諸々の手続きの最後にNBAのオーナー理事会でも承認を受け、ウルブズのオーナー交代劇は幕を閉じた。現地7月11日、サマーリーグが行われているラスベガスで、ロアとA-Rodはウルブズの新たなオーナーとして会見を開いた。
ロアは「こういう記者会見はこれまでテレビで見るものだったからドキドキする」と冗談めかして語り、「スポーツ界全体でリスペクトされ、コート内外で継続した成功を収められる文化を持つプロ球団を2つ(ウルブズとリンクス)作りたい」と話す。その一方でスポットライト慣れしたA-Rodは「これは遊びではなく、勝つためにやることだ。我々自身とファンのために新しい基準を作り出す。365日24時間、全力を尽くす」と力強く語った。
新本拠地に意欲「最高レベルで競争するための必需品」
彼らは新しいテクノロジーをウルブズに導入しようとしている。ロアがまず挙げたのは『JUMP』というチケット交換サービスだ。アリーナの席を再販売できる仕組みだが、面白いのは試合中にリアルタイムで座席を買えること。「良い席を買った客が第4クォーターに帰る時、その席を売りに出す。アリーナ上部の席で見ていた客がそれを買い、前に移動する。だからコートに近い席は常に満席になる。こういった工夫をたくさん導入するつもりだ」とロアは話す。
A-Rodもこのサービスに乗り気で「スマホの簡単操作で150ドルを払えば、第4クォーターを1000ドルの席で見ることができる」と言う。「僕が子供の頃、スタジアムに行く時は2ドルの一番安い席を買い、係員の目を盗んで前に移動しようとしたものだ。バックネット裏の一番良い場所が空席だらけなのを見るとイライラしたよ(笑)」
そしてロアは、ウルブズのチーム作りを問われると「文化を作ること、投資する意欲」の2つを約束した。「スタートアップ企業は立ち上げ当初は赤字でも、長期的な企業価値を作るために投資をする。それと同じだ。ラグジュアリータックスを払い、チームに投資する」
A-Rodは野球選手としての経験がバスケ球団のオーナーとしてどう生かせるかと問われて、こう答えた。「私は過去40年間、野球を学んできた。野球を愛しているし、今も学ぶのが大好きだ。その70%は他のスポーツには転用できないが、30%は使える。それは勝利の文化だ。選手たちと誠実に接し、できる限り質の高いものを提供する。ロッカールームの大切さを私より知るオーナーはいない。もちろん、他にも多くを学ばなければいけない。甘い評価をしても、まだ一塁を回ったところかな(笑)」
そしてA-Rodは、1990年完成で老朽化が目立つターゲット・センターに代わる新アリーナについても触れた。「現役時代の私はシアトルとニューヨークでスタジアム移転を経験した。当時はある種の見栄だったが、今は最高レベルで競争するための必需品になった。アリーナはコミュニティーの中心であり、ファンにとっては当然持つべきものだ」
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— Minnesota Timberwolves (@Timberwolves) July 12, 2025