「毎年同じことの繰り返しだよ。言わせておけばいい」
キャバリアーズは今夏に29歳となるドノバン・ミッチェルを筆頭に、27歳のジャレッド・アレン、25歳のダリアス・ガーランド、23歳のエバン・モーブリーの4人をコアとしてチームを作ってきた。彼らはみな若く、ミッチェルもこれからキャリアの全盛期を迎えるところで、個々の成長とチームとしてのケミストリーの向上、ここにサポートキャストが噛み合うことで、右肩上がりに強くなっていくはずだった。
64勝18敗は、セルティックスを抑えて東カンファレンス1位の成績。各ポジションにバランス良く戦力が揃い、みんな健康で、チームの一体感も強かった。しかし、迷走するヒートは一蹴したものの、ここでケガ人が出たことも影響し、ペイサーズの高速バスケには歯が立たず、1勝4敗で敗退となった。
ここで明らかになったのは、コアの4人にも格差があることだ。まずミッチェルは、レギュラーシーズンの24.0得点からプレーオフで29.6得点と、エースに期待される勝負強さを発揮した。他の選手がケガで欠場する中で、明らかに万全ではないのにチームを牽引し続ける精神的な強さも見せた。モーブリーは最優秀ディフェンス賞に輝き、4年目を終えた今がまさに伸び盛りの時期だ。
一方でガーランドとアレンは伸び悩んでいる。プレーオフでいかに勝つかが問われる段階となった今、レギュラーシーズンからパフォーマンスを落としてしまうことで評価を下げている。
さらに、キャブズのサラリーキャップには余裕がない。来シーズンからミッチェルとモーブリーの新契約が始まり、契約満了を迎えるタイ・ジェロームやサム・メリルが退団したとしてもサラリーはセカンドエプロンを超える。その解決策として最も簡単なのは、ガーランドとアレンのどちらか、あるいは両方をトレードしてサラリーを下げることだ。
そしてもう一つ、キャブズには継続路線を採りづらい理由がある。ミッチェルは2028年まで3年契約を残しているが、最終年はプレーヤーオプションで、来年夏には契約問題が浮上する。キャブズに来て3年、常に最高のパフォーマンスを見せているにもかかわらずチームは優勝争いに絡めず、セカンドエプロンの縛りで補強が制限される。その状況で契約延長を受け入れるだろうか?
「僕は次のレベルに到達したい。その準備に集中する」
アレンは3ポイントシュートはないが安定したリムプロテクト能力を持ち、全試合に出場したケガの少なさも魅力で、例えばレイカーズにとってはラスト・ピースとも言うべき補強となる。ガーランドはプレーオフでの勝負強さを欠くと言われるが、実際に移籍市場に出るとなれば多くのオファーが届くはずだ。
コービー・アルトマン球団社長は再建からここまでチームとともに成長してきたメンバーを尊重し、引き続きこのコアで戦いたい意向を示しているが、今は市場の動きを注意深く見つめているに違いない。レブロン・ジェームズが去って再建期に入ってから、アルトマンは時に非情な決断を下し、それがチームを強くしてきた。昨シーズンもコアメンバーこそ変えなかったが、再建を主導してきたJ.B.ビッカースタッフ解任を決断。ケニー・アトキンソンの招聘がチームを飛躍させたのは間違いないし、それで足りなければまた新たな手を考えるまでだ。64勝したチームを解体する決断は簡単ではないにせよ、その時が来ればアルトマンは球団社長として必要な手を打つことに躊躇はしないはずだ。
ガーランドはNBA6年目のシーズンを終えた。レブロン退団の1年後に1巡目5位指名でキャブズに加わり、チームとともに成長してきたが、常に「チームに必要な戦力なのか」というシビアな目線に晒されてきた。特にここ2年、キャブズがプレーオフには行けるがそこで勝てない状況で、「チームに必要な戦力なのか」という疑念は強まっている。
ミッチェルはシーズンが終わったタイミングで「今シーズンの僕らは多くの成功をつかんだけど、結局はこの結果で判断され、滅茶苦茶に批判される」と語った。だが、その批判のターゲットとなっているのはミッチェルではなくガーランドだ。ガーランドは「毎年同じことの繰り返しだよ。言わせておけばいい」とシーズン最後の会見で語った。
「多くの人たちがプレーオフの結果に基づいて僕たちを疑っている。彼らがどう考え、何を言おうとも僕らには何もできない。ただ練習に打ち込むだけだよ。できなかったことを克服するための努力の時間だ。僕は次のレベルに到達したい。その準備に集中するよ」