
MIPにオールディフェンシブファーストチームを受賞
ホークスはレギュラーシーズンを40勝42敗の東カンファレンス9位で終え、プレーインでマジックとヒートに連敗してプレーオフ進出という目標を果たせなかった。2020-21シーズンにカンファレンスファイナル進出を果たしたチームは、若く多くの伸びしろがあると思われたが、その後の2年はファーストラウンド敗退、そして2年連続でプレーオフ進出を逃している。
それでも、この1年はポジティブなものだった。エースのトレイ・ヤングは26歳で、24歳のオニエカ・オコング、23歳のジェイレン・ジョンソン、22歳のダイソン・ダニエルズ、20歳のザカリー・リザシェイと若い。サラリーキャップにはまだ余裕があり、これは今オフに余裕のない強豪チームのトレードに『第3のチーム』として加わることで、決して小さくないメリットをもたらすことになりそうだ。
急成長中のチームを代表するのがダイソン・ダニエルズだ。2022年のNBAドラフト1巡目8位指名でペリカンズに加わった彼は、キャリア最初の2シーズンでも非凡なディフェンス能力を発揮していたが、昨年オフにデジャンテ・マレーとのトレードでホークスに移籍したことが大きな飛躍のきっかけとなった。ペリカンズでは攻撃面ではほとんど何もしておらずに控えだったが、ホークスでは先発に定着。ボールを預けられる機会が増えるとオフェンスでも堅実なプレーを見せ、得点が5.8から14.1へと大幅に伸びた。
持ち味の守備でも、ペリカンズよりハードワークのできるチームメートに恵まれたことで、存在感を増した。プレータイムが22.3分から33.8分へと伸びる中で、リバウンドは3.9から5.9に、アシストは2.7から4.4へ、ブロックは0.4から0.7へ、そしてスティールは1.4から3.0とリーグトップの数字を記録。この結果、MIPを受賞し、オールディフェンシブファーストチームに選ばれた。
シーズン最後の会見でダニエルズは「僕たちにとって多くの学びがあった」とこのシーズンを振り返る。まだ個人賞の発表前だったが、彼はやりきった充実感を得ていた。
「オフェンスで自分に何ができるか、その片鱗を見せられたのは良かった。でも、自分の中にはまだまだポテンシャルが眠っていて、努力次第でもっと引き出せるはずだ。ミッドレンジからシュートを打ったり、ステップバックしたり、今の自分にはないスキルを身に着けた時にどんなプレーができるかと想像すると本当に楽しみだ」
そして『本職』のディフェンスでは、ただ守るだけでなくチーム全体に良い効果をもたらすことが自分の強みだと感じている。「僕のディフェンスがチームメートの刺激になって、チームで助け合うような守備ができたのは大きな進歩だ。でも、もっと良くするために、みんなオフの努力を惜しまないだろう。フットワークや横方向への移動、ミスマッチでも完全に崩れないようにフィジカルを鍛えること。ディフェンスには多くの要素があるけど、そのすべてをマスターして初めて良いチームディフェンスができるんだ」
「自分らしくプレーしろと背中を押してくれた」
どの選手もそれぞれポテンシャルは秘めているが、今シーズンのダニエルズが飛躍できた秘訣は何だったのか。彼は指揮官クイン・スナイダーとの出会いが大きいと言う。「最初の日に彼から『本当の意味での一歩を踏み出せ』と気合いを入れられた。彼は僕に自信を植え付けてくれた。最初の2年間は自分の可能性を感じながらも自信を持てず、スター選手たちの活躍を眺めながら脇役に甘んじていた。でもここではコーチ陣が僕を信じ、自分らしくプレーしろと背中を押してくれた」
そういう意味では、彼にとって一番の変化はスタメンとして76試合に出場したことだ。「プレータイムが大幅に増えて、最初の2年間より大変だったのは間違いないけど、毎日練習で準備を整えて、試合で泥臭いプレーをしてベストを尽くす。それが僕たちの生きる道だ。平均33.8分プレーして、身体のあちこちに痛みを抱えていても、シーズンを通して戦い続けられたことを誇りに思うよ」
ホークスのこの1年を振り返ると、前半戦は健闘していたが1月の8連敗で失速。この時にジェイレン・ジョンソンが左肩のケガでシーズン終了となったのが痛かったとダニエルズは振り返る。「どのチームもケガの問題は抱えているから言い訳にはならないけど、チームの調子はかなり良かったのに、ジェイレンの離脱で2人の選手が役割を変えることになり、そこから上手くいかなくなった。ジェイレンが復帰する来シーズン、そこで僕たちの本当の力があらためて見せられると思う」
「プレーオフ進出を逃したのに『良いシーズンだった』と言っていいのか分からないけど、1年や2年で優勝するチームは作れない。今シーズンは正しい一歩を踏み出せた。このコアメンバーが今後どう成長していくかの軌跡が見えている。オフにはそれぞれがスキルを磨き、チームワークを高め、交流を深める。一緒にプレーする経験を重ねれば重ねるほと、もっと良いチームになっていくはずだ。きっと良い結果を出せる、僕はそう思っているよ」