アーロン・ゴードン

両チームによる一瞬の判断が生み出したキーポイント

ニコラ・ヨキッチが第4クォーターだけで17得点を挙げて猛追したこと、残り14秒で3点リードのサンダーが逆ファウルゲームを選択したこと、残り13秒のスローインでフリーでパスを受けたシェイ・ギルジャス・アレクサンダーが時間を使うのではなくダンクに行って3点差にしたこと、チェット・ホルムグレンがフリースローを2本とも落としたこと──。サンダーvsナゲッツの第1戦は、試合終盤に向けて様々なドラマが起きましたが、アーロン・ゴードンが3ポイントシュートを決めたラストプレーは、それだけで多くを語りたくなるほどのワンプレーでした。

ホルムグレンがフリースローを外し、そのリバウンドを取ったのはクリスチャン・ブラウンでした。ただ、ブラウンはフリースローのリバウンドには入っておらず、3ポイントラインの外から飛び込んできて抑えています。ナゲッツのリバウンド役はヨキッチとゴードンがリングに近いポジションに入り、ラッセル・ウェストブルックがシューター側のリバウンダーでした。

ボールはゴードンのサイドに落ちましたが、サンダーのアレックス・カルーソがゴードンに激しくコンタクトし、簡単にはリバウンドを取せない対応をしたことで、ボールは床にバウンドし、外から取りに来たブラウンが抑える形になりました。この瞬間、ウェストブルックはリバウンドポジションにブラウンしかいないことを確信し、前へ走り出しました。この一瞬の判断が1つ目のキーポイントになります。

サンダーからすると怖いのはジャマール・マレーとヨキッチの2人。そのためルーゲンツ・ドートが即座にマレーに張り付き、パスを受けることすらさせません。カルーソはヨキッチの進路を邪魔し、ともに素早い判断でナゲッツがやって来るであろうセオリーを潰しています。このサンダーの抜け目なさが2つ目のキーポイントでしたが、これを見たブラウンはマレーとヨキッチをあきらめ、前を走るウェストブルックへのパスを選びます。

ウェストブルックの前にはジェイレン・ウィリアムスと、フリースローを打った後にしっかりと戻ったホルムグレンが立ちはだかります。1点差のトランジションアタックであり、強引に突っ込めばファウルドローも期待できるシーンでしたが、ウェストブルックは2人の間となるセンターラインへ進路を変更し、ホルムグレンがバックステップでリング側に下がったのを見て、冷静に逆サイドのゴードンへのパスを選択しました。

48分目のラストも両チームが基本のハードワークを貫く

リバウンドでカルーソと競っていたはずのゴードンですが、そのカルーソがヨキッチへの対応を優先したことで誰にもマッチアップされていない状態となり、すぐに前へ走っていたことは3つ目のキーポイントです。サンダーの判断の良さは結果的にゴードンをフリーにすることに繋がりました。ウェストブルックとゴードンはサンダーからすると優先してマークすべき選手ではなく、判断が間違っていたわけではありません。

ウェストブルックからのパスを受けたゴードンは、迷うことなく3ポイントシュートを打ち切り、このプレーオフで2つ目となるゲームウィナーを沈めました。

この時、ナゲッツは後ろから走ってきたヨキッチとブラウンがオフェンスリバウンドに入り、それをカルーソとシェイがしっかりとボックスアウトしています。48分が経過したラストシーンでも基本のハードワークを両チームがこなしていたことが、試合のレベルの高さを物語っています。

クリッパーズとの『GAME7』から中1日のナゲッツは疲労からの凡ミスが目立ち、第1クォーターでサンダーが1点をリードすると、そこからゴードンのシュートが決まった第4クォーター残り3秒まで、常にサンダーがリードをキープしていました。残り6分半の時点でもサンダーのリードは13点ありましたが、ここから逆転するためには時間を使い過ぎるわけにいかないと判断したヨキッチとマレーはオフェンスのテンポを上げ、そして最後の最後に勝利へと繋げたタイムマネジメントも見事でした。

ゴードンのゲームウィナーは単なるワンプレーの成功ではなく、そこに繋がるまでの一連の流れ、そしてそのワンプレーに込められた両チームの瞬間瞬間の判断が詰まりに詰まったゲームウィナーであり、『これしかない』と言いたくなるナゲッツの勝ちパターンでした。