「チャンピオンシップに間に合わないとは思わなかった」
5月3日、千葉ジェッツはホームで仙台89ERSと対戦。序盤から本日22得点を挙げたクリストファー・スミスを中心にトランジションが出た千葉Jは、試合を通して粘り強いディフェンスを続けることで仙台オフェンスを封じ込める。終始、リードを奪う危なげない展開で80-67と勝利した。
これで連勝を8に伸ばした千葉Jにとって、試合のハイライトは富樫勇樹の復帰だ。4月5日のアルバルク東京戦で左足関節捻挫を負って欠場を続けていた絶対的エースが、1週間後のチャンピオンシップを前にコートに戻ってこられたことは何よりの朗報となった。
第2クォーター開始からコートに入った富樫は、計11分49秒出場で3ポイントシュート2本成功の6得点をマーク。約1カ月ぶりの実戦をそつなくこなし、順調な回復ぶりを見せた。
富樫はチャンピオンシップにぶっつけ本番でなく、このタイミングで復帰できたことの意味をこう語る。「ケガをした後、チャンピオンシップに間に合わないとは思わなかったです。ただ、この試合に出られるのか正直わからなかったところから、この数日で一気によくなりました。レギュラーシーズン最後の2試合、万全な状態でなくても試合勘も取り戻すことを含めて出たかったです。感覚としては悪くなかったです」
この負傷で、長らく続いていた連続出場記録が392で途切れてしまったことは大きな話題となった。だが、本人は「記録はずっと続くとは思っていなかったです。また、相手の足に乗ってのケガは避けようがないと思っているので、落ち込むことも全くなかったです」と冷静に受け止めている。
そして「結局、記録が続いていてもいなくても、これからも出られる試合は出ますし、出られない試合は出られないです。ただ、故障を繰り返さないで、できるだけコートに立ち続けることはプロの選手として大事なことで、出場を続けていきたいです」と、コートに立ち続けることへの拘りに全く変化はないと続ける。
「チャンピオンシップに出ないといけないチーム」
千葉Jはチャンピオンシップのクォーターファイナル、アウェーでのA東京戦が決定している。年々、リーグ全体のレベルが上がる中、Bリーグ初年度から毎年ポストシーズンに駒を進めているのは偉業だ。特に今シーズンは、ディー・ジェイ・ホグにジョン・ムーニーとビッグマンの中心コンビが同時に離脱するなど例年以上に故障者続出の満身創痍で、ベストメンバーで戦えたことは皆無という苦境を乗り越えた。
「年々、簡単に勝てる相手は少なくなっているイメージは本当にあります。その中で、Bリーグが始まってチャンピオンシップにずっと出場しているのは琉球と千葉だけだと思います」と富樫も勝ち続けることの難しさは実感している。ただ、同時にリーグ屈指の常勝軍団、千葉Jを率いる大黒柱としてのプライドがある。
「当たり前ではないですけど、このチームでやっている限りはどう考えても当たり前に出ないといけない。どういう状況であれ、これだけケガ人が出ていても、ジェッツはチャンピオンシップに出ないといけないチームです」
また、ケガの功名ではないが、自身が欠場している中、代わりに先発を務めてきた高卒ルーキーの瀬川琉久など、連勝を伸ばしてきたチームの底上げに手応えを感じている。「琉久はチャンスをしっかりものにして成長に繋げました。僕がいない間、渡邉雄太もかなり欠場している中、チームとしてかなりの成長がありました。チャンピオンシップに向けてプラスの面があったと思います」
そしてクォーターファイナルへの意気込みをこう語る。「今シーズンは天皇杯を含め3戦全て接戦で負けています。Bリーグが始まってからファイナルで2度負けたりと常に自分たちに立ちはだかる相手にアウェーでの戦いとなります。厳しい戦いになると思いますが、チャレンジャーとしてぶつかるのみです」
ポストシーズン前に復帰できたことは大きな前進だが、当然のように富樫のコンディションは万全ではない。だが、「戻ってこられたことが全てです。」と本人が語るように、富樫が出場できることだけでチームはチャンピオンシップに向け大きな追い風を得ることになる。