田臥勇太

「やり返すチャンスをつかみ取れたことが大きい」

5月4日、宇都宮ブレックスはレギュラーシーズン最終戦で越谷アルファーズと対戦。第2クォーターに持ち前の強度の高いディフェンスで21-7のビッグクォーターを作って一気に主導権を握ると、そのまま盤石の試合運びで83-69と快勝した

主力の出場時間を制限する中でも、攻守に隙のないプレーとベンチメンバーを含めた総合力の高さが光った宇都宮は48勝12敗と、2年連続のレギュラーシーズン最高勝率でチャンピオンシップに臨むことが決まった。

宇都宮の象徴であり、キャプテンを務める田臥勇太は「まず60試合、チーム全員で走りきれたことは良かったと思います。いろいろなことがありましたが、チーム一丸となってやってこられています。試合後のロッカールームでも、みんないよいよチャンピオンシップという感じになってきました」と総括する。

昨シーズンのチャンピオンシップ、宇都宮は今年と同じく第1シードで臨みながら初戦となるクォーターファイナルで千葉ジェッツに屈し、まさかの早期敗退となった。田臥は「あの悔しさを誰も忘れていないですし、自分たちでやり返すチャンスをしっかり掴みとれたことが大きいです。ただ、今年こそと自分たちに変にプレッシャーをかける必要はないです。」と語る。

宇都宮は2月24日、ケビン・ブラスウェルヘッドコーチが46歳の若さで亡くなる衝撃に見舞われた。バスケットボールに集中することが困難な時を経て勝ち取ったレギュラーシーズン1位の価値を田臥はこう語る。「途中、ケビンのことがあって、バスケットどころではない時期もありました。それをチーム一丸となることだけをみんなで考えて乗り越えてきました。下を向く選手はいなかったですし、全体1位は簡単なことではないので、達成したことを大きな自信にしていいです」

一方、チャンピオンシップで勝ってこそ、最高勝率の勲章が輝きを放つことを誰よりも理解している。「ただ、ここで負けると本当に意味がなくなってしまいます。積み重ねを大事に、来週からの戦いでは何がなんでも勝つ。ケビンとともに戦っているので、一緒に悔しさを晴らしたいです」

宇都宮ブレックス

「皆さんにも一緒に出し切ってもらうことが必要です」

Bリーグ誕生前から宇都宮の柱として田臥は、ポストシーズンの修羅場を何度も経験し、酸いも甘いも嚙み分けてきた。この経験を経て、百戦錬磨の大ベテランが大切にするのは、目の前の試合に全身全霊を捧げることだ。田臥は語る。

「先のことは考えすぎない。1試合ずつ勝っていくしかないです。自分の経験上、次の試合に勝つために、とにかくできるだけのことを全部やる。チーム、個人としてもそのことだけを考えないといけないです。出し惜しみをせず、悔いが残らないために毎日を準備して、1試合毎にすべてを懸けないと勝てないと思っています」

当然のように、チャンピオンシップはタフで厳しい戦いとなる。心身とも大きく消耗する激闘が続く中、宇都宮にとって大きなアドバンテージはファイナルまでリーグ随一の熱狂的なファンで埋め尽くされるホームで戦えることだ。

この試合、チャンピオンシップの会場でもある日環アリーナ栃木は今節から増設した効果もあり、同会場では最多の6207名が集った。田臥も「今日も試合をやりながら、やっぱりホームのパワーはすごいと思っていました。こんなに心強いことはないです」と感謝する。

その上で、田臥は、ファンのことを信頼しているからこそ次のように呼びかけている。「自分たちがいかに状況を作り出せるかが大切ですが、ファンの皆さんに、もうちょっと声を出してもらえるんじゃないかと(笑)。僕たちは毎試合、全てを出し切ります。そしてファンの皆さんにも一緒に出し切ってもらうことがチャンピオンシップでは本当に必要ですのでお願いします」

ブレックスネイションは、選手とファンが同じ立場で一緒に作り上げてきた。だからこそ田臥は、「本当に皆さんのためにも勝ちたい、一緒に勝ちたいです」と語り、ファンの更なる声のサポートを期待する。これまでにない熱狂のホーム会場で、ブラスウェルとともに宇都宮はチャンピオンシップに臨む。