「今回の負けが経験不足のせいだとは思いたくない」
2勝3敗で迎えた第6戦、ピストンズはホームでニックスに113-116で敗れた。2桁のビハインドから2度追い付き、残り2分半で7点をリードしたのだが、最後は1-11のランを浴びての逆転負けだった。
このラスト2分半、ニックスのジェイレン・ブランソンは8得点を挙げ、唯一外したシュートはミカル・ブリッジズがタップで押し込んだ。一方でケイド・カニングハムはドライブからのレイアップを2本落とし、インバウンズのパスを相手に奪われ、3点ビハインドでの最後の攻めでは残り2秒でシュートを選択せずにマリーク・ビーズリーにパスを出したがターンオーバーとなり、シーズンが終わることとなった。
ラストショットを放つこともできない結末に、デトロイトのファンは頭を抱えたが、彼らは6年ぶりにプレーオフへと進出し、2008年以来となるプレーオフでの1勝を挙げたチームの健闘を称えた。
それでも、ピストンズの選手たちは本気で勝ちに行っていたし、手応えを感じていただけにショックが大きかった。カニングハムは「試合が終わった直後で失望を感じている。自信があったから、勝てなくて悔しい」と語る。
プレーオフの経験がないチームがあっさりと敗退していく中で、ピストンズは2勝を挙げ、6試合すべてが接戦続きだった。「僕らはこのスタイルのバスケをずっとやってきて、新しいことをやったわけじゃないから、経験がないとは思わない。だけど、小さなミスが積み重なり、やるべき細かいプレーが遂行できなくなった。そういう意味では若いチームだったし、今回のことは素晴らしい経験になったと思う。ただ、今回の負けが経験不足のせいだとは思いたくない」
「プレーオフの経験はプレーオフでしか積めない」
敗れたばかりで、その悔しさが先に立つものの、ピストンズとカニングハムにとって飛躍のシーズンだったことは間違いない。個人としての成長を「チームを引っ張ること。最も重要な部分で成長できたと感じる」とカニングハムは言う。
「チームメートの成功を助けることに喜びを見いだす。その点ではNBAに来て最高の仕事ができたと思うし、そこでの成長を誇りに思う。それに、まだまだ上達できると感じている。やるべきことはまだたくさんあるからね。プレーオフでは多くの学びがあり、どれも軽視したくないから1つ2つに絞ることはできないけど、『やり直したい』と思うプレーがたくさんある」
そして、チームの健闘ぶりをこんな言葉で称えた。「ピストンズとの試合が激しい戦いになり、48分間気を抜けないと他のチームは理解したと思う。僕らはどんな試合展開であれ勝つために食らい付く。まだ気付いていない人もいるかもしれないけど、対戦相手はみんな知っている。それが既定事実となった1年だった」
2021年のNBAドラフト全体1位指名でピストンズに加入し、4シーズンが経過した。ケガでほとんどプレーできなかった2年目を除いて常にチームを引っ張る活躍を見せてきたが、今シーズンは彼自身の進化にチームの成長が噛み合い、プレーオフ進出という成果に繋がった。指揮官J.B.ビッカースタッフは「プレーオフの経験はプレーオフでしか積めない」と語り、チームの成長が来シーズンも続くであろうことを強調した。
当然、そんなピストンズを来シーズンも引っ張るべきはカニングハムだ。今回のプレーオフから彼が何を学び、新たな成長にどう繋げるか。悔しい終わり方になったが、来シーズンが楽しみな終わり方でもあった。