グレッグ・ポポビッチ

ミッチ・ジョンソンに指揮を託し、球団社長に就任

グレッグ・ポポビッチは1988年にラリー・ブラウンのアシスタントコーチとしてNBAにやって来て、1994年にスパーズのGMに就任し、その3年目から自らチームの指揮を執るようになった。1996年の就任からスパーズで5度のNBA優勝(1999年、2003年、2005年、2007年、2014年)を勝ち取ったが、彼が誇るのは勝利ではなく、多くの優秀な人材を育てたことだ。

その彼は昨年11月に脳卒中で倒れ、一時的にチームを離れた。リハビリ中も暫定ヘッドコーチのミッチ・ジョンソンとは常に連絡を取り合い、2月にはチームの練習場を訪れて選手たちを激励している。だが、先日には食事をしていたレストランで倒れて救急搬送されたと報じられた。

そして現地5月2日、スパーズはポポビッチの退任を発表した。ジョンソンが正式なヘッドコーチに昇格し、ポポビッチは球団社長としてスパーズに残る。

「バスケットボールへの愛と情熱は変わらないが、ヘッドコーチを退く時が来た」とポポビッチはリリースの中でコメントしている。「スパーズのヘッドコーチとして働く機会を与えてくれた素晴らしい選手たち、コーチ、スタッフ、ファンには永遠に感謝し続ける。私にとって特別な意味を持つ組織で働くことができて幸せだった」

ポポビッチはバスケへの豊かな知識と勝負への強いこだわりでNBAを戦ったが、そのベースにあるのは他者への敬意と尊重であり、正直さであり、責任感だった。コミュニケーションを最も重視し、才能と同じだけ人間性を愛した。ティム・ダンカンを筆頭に多くの名選手を育てたが、そのアプローチは「最高の選手になれ」ではなく「最高の人間であれ」だった。選手の人間性を愛すとともに、厳しい態度で才能を引き出そうとした。

情熱は衰えていないが76歳であり、NBAのコーチという激務に戻ることはかなわなかった。それでも彼は球団社長として、今後もスパーズの舵取りを担っていく。