アルペラン・シェングン

ポストアップからのフックシュートを完璧に抑え込む

ロケッツvsウォリアーズは第4戦もロースコアの展開になりましたが、終盤で勝負強さを発揮したウォリアーズが109-106と競り勝ち、シリーズ突破に王手をかけました。第7シードが第2シードを破るアップセットが起きそうな気配ですが、西カンファレンスは首位のサンダーを除けば勝率の差はほとんどありません。実力拮抗の戦いとなれば、勝敗を分けるのは戦略面の違いとなってきます。

シリーズを通してキーになっているのはアルペラン・シェングンの得点が伸びないこと。特に4クォーターは第1戦が4点、第2戦と第3戦は2点しか取れず、エースとして彼が勝負どころで得点を奪っていればロケッツがシリーズ突破に王手をかけていた可能性もあります。第4戦は第4クォーターに10得点を挙げ、試合を通しても両チーム最多の31点を記録しましたが、得点を取れる形と取れない形がはっきりしており、ウォリアーズのシェングン対策が見て取れました。

この試合の初得点はハイポストでボールを受けたシェングンが右へドリブルをしてから左へターンして放ったフェイダウェイ・ジャンプシュートでした。シューティングスランプに陥っているシェングンが試合開始直後に難しいシュートを決めたことで波に乗るかと思われましたが、ここから6本のシュートを外します。

前半はフィールドゴール11本中4本成功でしたが、そのうち2本は速攻での得点で、ハーフコートオフェンスではフィニッシュに苦しみました。それが第3クォーターになると7本中4本を成功させます。この好調の理由も明確で、ドレイモンド・グリーンがファウルトラブルでベンチに下がり、マッチアップする相手がトレイス・ジャクソン・デイビスになったこと、ゾーンでのピックアップミスが起きたことでした。

シェングンはポストアップから多彩なステップワークとフェイクで翻弄してフィニッシュに行きますが、ミスが目立ったのは右側へターンしてからのフックショットでした。グリーンだけでなく、クインテン・ポストやゲイリー・ペイトン二世、バディ・ヒールドも左ターンには身体を当てて防ぎ、右フックへと誘導していた雰囲気があります。そしてこの試合でシェングンが打った右フックは8本中成功1本のみと大いに苦しみました。

とはいえ他に有効な攻め手を見いだせないロケッツは、第4クォーターにシェングンに10本のフィールドゴールを託します。シェングンはそのうち4本を成功させて10得点を奪いますが、最後のポゼッションではグリーンをかわすことができず。決まれば逆転の場面でしたが、タフショットを打たされました。

スティーブン・アダムズも『ハック戦術』で無効化

逆にロケッツはシェングンとスティーブン・アダムスを並べるビッグラインナップを多用し、サイズのないウォリアーズの弱点を突こうとしました。アダムスのオンコート時は得失点差が+16点となっており、ゴール下のリムプロテクトとオフェンスリバウンドはロースコアの展開では大いに効いていました。

第4クォーター残り4分半、ビハインドとなったウォリアーズは、そのアダムスに対して『ハック戦術』を使います。アダムスはフリースローが苦手ですが、リードしている状況であり、なおかつ得点がなかなか決まらない展開でもあり、アダムスにフリースローを打たせる選択肢もあったはずですが、ロケッツはボーナススローになる前にアダムスを下げる判断をしました。

こうしてウォリアーズにとって最も厄介なディフェンダーがいなくなると、そこからジミー・バトラーがインサイドを攻め立ててウォリアーズが逆転に成功しました。

インサイドのロケッツとアウトサイドのウォリアーズ。それぞれの長所は明確に異なりますが、ウォリアーズがロケッツの強みを消す展開が続いています。戦略面で後手を踏んで1勝3敗と追い詰められたロケッツが逆転でシリーズ突破を果たすには、ここから思い切って戦い方を変える柔軟性が求められます。