ジャレッド・マケイン

ベンチから24得点を挙げ、0-15からの逆転劇の主役に

1勝1敗でホームに戻ってのカンファレンスファイナル第3戦、スパーズは開始3分で15-0と最高のスタートを切った。足首のケガから復帰したディアロン・フォックスが最初の得点を奪い、前の試合でゴール下から押し出されて苦戦したビクター・ウェンバニャマが3ポイントシュートを決めると、デビン・バッセルも2本の3ポイントシュートで続いた。

しかし、それがスパーズのピークだった。サンダーはシェイ・ギルジャス・アレクサンダーだけを残し、アレックス・カルーソ、ジャレッド・マケイン、ケイソン・ウォレス、ジェイリン・ウィリアムズを次々と送り出す。その後、シェイに代えてチェット・ホルムグレンを戻す選手起用で、第1クォーターのうちに26-31まで押し返した。

サンダーのベンチメンバーが最悪の流れを引きずらずプレーしたのに対し、スパーズのベンチメンバーは受け身に回ってしまった。スパーズはサンダーの起用に歩調を揃えるように自分たちの先発も下げたが、結果的にこれが良い流れを自ら手放す結果となった。

ホルムグレンもアイザイア・ハーテンシュタインもスパーズの速い展開に振り回される中、ジェイリン・ウィリアムズはペイントエリアの守備を落ち着かせ、攻めに転じると3ポイントシュートを2本決めて、立ち上がりの失敗を挽回するきっかけを作った。カルーソとマケインは、前から当たるプレッシャーディフェンスだけでなく、素早く戻って相手の速攻を出させず、個人ではなくチームで連携して守る意識を取り戻させた。

そしてウォレスは目立たないながらも相手のプレーメーカーをマークして、攻めのスピードを上げさせない仕事を全うした。フォックスは立ち上がりに電光石火のドライブからレイアップを決めるなどチームに勢いをもたらしたが、まだ万全の状態ではない上にウォレスの執拗な守備にハマり、第1クォーターに9得点を挙げた後は6得点と失速した。

サンダーは第2クォーターを32-20として逆転に成功。後半は安定した試合運びで一度も追い付かれることなく、123-108で勝利した。

エースのシェイはウェンバニャマと並んでゲームハイの26得点を記録。そのシェイに続く24得点を挙げたのがマケインだった。激しく足を動かすディフェンスで第1クォーターのチームを救うと、その後はオフェンスで結果を出す。前半の8得点から第3クォーターに7得点、第4クォーターは9得点と尻上がりに調子を上げていった。

「タイムアウトの時点で15点差、そういう時こそ冷静さを保ち、お互いに自信とエネルギーを分かち合い、『次は僕たちがやり返す番だ』というメンタリティでプレーしなければいけない」とマケインは語る。

放ったシュートは21本で、シェイの17本より多い。ベンチから出て攻守に勢いをもたらすのがマケインの仕事で、効率を意識して慎重になるよりもアグレッシブに攻め続ける姿勢が必要だった。

「カンファレンスファイナルなんて初めての経験だけど、高校でも大学でもビッグマッチは経験済みだから、思い切ってプレーしようと思った。NBAにいて、この舞台でプレーできている自分は幸運だと思う。だからこそ、チャンスを与えられるたびにベストを尽くしたい。僕はこの状況を心から楽しんでいるから、恐れずに挑戦できるんだ」

彼の攻め気を象徴するプレーが、第3クォーターにウェンバニャマ相手に決めたシュートだった。チーム全員が絡むパスワークで広げたインサイドにマケインがドライブで仕掛ける。ウェンバニャマがブロックに来れば、シュートに行かずに組み立て直すのが『定石』だが、マケインは寄せて来るウェンバニャマを自分からのコンタクトで弾き飛ばして得点を決めた。シュートを決めると右腕で力こぶを作り、自分の力強さをアピールした。

「230cmの選手を相手に逃げるのは簡単だけど、強い足腰を支点にしてぶつかれば勝てる。そう思ってショルダーバンプからシュートを打ったんだ。外れても自分でリバウンドを拾って押し込むつもりで、それはつまり決まるかどうか確信はなかったんだけど(笑)、ああいうシュートを決めて仲間と喜べたのは最高だった」

サンダーを率いるマーク・ダグノートは、マケインの活躍に「驚いてはいないが感動している」と語り、そのアグレッシブな姿勢をこう称えた。「このチームに来た時から一度たりとも弱気になっていない。プレーオフでも通用する自信を持っている。ここで言う自信とは、ただ良いプレーができるだけでなく、相手に一発喰らっても打ち返す精神力の強さのことだ。私は選手に完璧なプレーは求めない。ただ自分らしく、そしてチームの一員としてプレーしてほしい。ジャレッドはまさにそれを体現しているよ」

ベンチメンバーによる得点はスパーズの23に対してサンダーは76と53点もの差があった。サンダーは選手層の厚みが武器で、プレーオフを通じて日替わりでヒーローが誕生しているが、この第3戦は『ベンチメンバーがもたらした勝利』と言っていいだろう。